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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.03 宗教団体《幸福の導き》
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act14 人の痛みをexpose

act14 人の痛みをexpose(えぐる)


「何をしている。何故目的を果たしていない。」


「申し訳ございません。思いのほか村人どもの反撃が激しく・・・」


「そんなことはどうでもいい。さっさと片付けるのだ。ここを我ら教団の総本山とし、

余計なものをすべて封鎖し、改めて布教を始める一歩とするために」


「は、御心のままに」


千早赤坂村に向かっている二十台ほどのマイクロバスの中で

司祭長と司教はこんな話をしている。

一般的な常識はもはや通じない。

彼らは自分たちの勝手な望みを押し付けるだけである。


相手のことなど考えない、ただ自分たちが正義で正論であると考えて。


「カボンに任せればよいのだ。やつならば」

と一人ごちる。


司祭長は自分の幻想にふける。






「さて、ここにいるのだな。ナズナ。貴様とあの娘を手に入れ、この村を手に入れればすべてが済む。

 いや、始まる。我らの望む世界がな。」


カボンは口元を歪め、村営図書館を見上げる。

だが、最後の障害が立ちはだかる。建物のセキリティだ、これを突破できずにいた。

ここには彼らの切り札となりえるナズナという少女とこの村のデータバンクとなるメインサーバがある。

これを手中に収めればすべての問題は解決するのだとそう信じて。


建物の中では、学生たちが騒ぎ出す。

一階は図書館と資料室、二階は会議室やイベントを行える部屋があり

その一室でオンライン教室が開かれていた。

村の学生は近くの市立の学校に通っているのだが,

なにぶん、遠いので週の半分はオンライン教室をしている。運動は村の農業の手伝いで済む。

まあ、大変なのだが。

学生たちの努力もあって学力は右肩上がりだ。


そんな学生たちも突然の異常事態に困惑する。

村が襲われているというのだ。

連絡が職員から言われ、学生たちは慌てる。


ここにいれば大丈夫だから、と女性職員に言われても安心できない。

それに家族の心配もある。


学生たちは嘆くもの、心配するもの、返り討ちにしてやると息まくものと反応は様々だ。

そんな中、ナズナは窓から外を見ていた。


「ナズナちゃん。だ、大丈夫。なんか怖い顔して」

おとなしい感じの女の子、立山ミサキがナズナに声をかける。


「ん、大丈夫。それよりもミサキちゃんこそ大丈夫。お母さんのこと心配でしょう。」


「大丈夫だよ、きっと。それよりも私たちのほうがまずいんじゃない?」


「そうかな」


「そうだよ」


「大丈夫だ。どんな奴が来てもオレが何とかする」

と不安がる学生たちの中で一人元気な男子学生がいた。


目には自信が満ち溢れ、強気な気持ちがあふれ出ていた。

彼の名は田上コウイチロウ、血気盛んな学生である。


そうこうしているうちに事態は急変する。

下で騒ぎが起きたようだ。


その後、慌ただしい足音が響き、彼らのいる教室の扉が慌ただしく開く。

そこには、怪しさ全開の白装束の一団がなだれ込んできた。

先ほど学生たちに連絡をしてくれた女性職員もいた。

彼女は拘束され顔も腫れていた。おそらく抵抗したのだろう。


その一団の中で風格のある男が前に出て

「さて、君たちに反論する権利はない。我々は偉大なる神の使徒。

我々の行動や言葉は神にささげるためのもの。

君たちは素直に従うことをお勧めする。」

と言い切った。


「ハン、何を寝言みたいなこと言ってんだよ。アンタ。」

田上コウイチロウは、学生たちの前に出て反論する。


「貴様、司祭様の行ったことを聞いていなかったのか」


司祭と呼ばれた男の後ろから一人の男が前に出ようとすると


司祭は、片手を広げ、その男をいさめる。


慌てて男はお辞儀をしながら後ろに下がる。


「勇敢な人だ。だが次はない。

君のような将来有望な子の未来を奪い去るような真似はしたくない。

おとなしくしておらえるかな」

司祭は改めて静かな口調で話す。


「何を言っている。こんなことしておいて」

田上コウイチロウは食い下がる。


当たり前だろう。女性職員への暴行、それに家宅侵入、脅迫罪etsこれだけやれば

すでに犯罪者だ。


いくら言葉に出しても次ぐらえる代物ではない。


「わからない子だな。まあ見せしめが必要か」

というと司祭は、田上コウイチロウの目を見る。


その様子にナズナは慌てる。あの男の能力はたしか・・・

と考えていたことがあだとなり、行動が遅れたのだ。

「やめ・・・」

と言葉を放つ前に、田上コウイチロウはその場に膝をつく。

そして、前かがみになりながら両手で頭を抱え、

悲鳴のような叫びをあげる。


「さて、君たちも彼のようになりたくなければ

おとなしくしてもらえるといいのだが・・・さすがに何をしたかわからないか。

なら説明しておきましょう。

私はカボン司祭です。私の能力はトラウマアッパーで人の心の傷を大きくすることができます。

彼のようにね。人によると心が壊れるほどになりますね。

ですから、あなたたちも抵抗すれば同じ目にあってもらうしかありませんので注意してくださいね」

と笑顔でカボンは言う。


これは完全な脅迫である。

だが、現実を見せられた学生たちは、どうしようもなかった。

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