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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
CRANBERRY SODA
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Soda4(R-side)  解けない誤解と友達の予感

「遅かったじゃない。仕事たいへんだったの?」

「ああ、そうなんだ。テストの採点に少してこずってしまってさ。悪かったな、待たしてしまって」

 あたしの否定する声に気づかれなかった原因は、突然現れたこの人物にあった。幾美ちゃんが親しげに口を利いている目の前の人は、20代半ばくらいの大人の男性だ。

「瑠花に紹介するね。さっき話してたあたしの彼で『中村 頼人(よりと)』っていうの」

「彼氏って、あれ? だったら魁人くんは? 彼氏じゃなかったの?」

「違うよ。頼人の弟なんだ」

 あたしったら勝手に誤解してたんだ。そうか、だから魁人くんと仲がよかったんだ。

 納得した後で、改めてあたしは幾美ちゃんの彼氏に向き直って挨拶をした。

「はじめまして。田中瑠花っていいます」

「はじめまして? それはずいぶんだね。俺は君のこと、ちゃんと覚えてるのになあ」

「え?」

 それどういうこと? どこかで会ったっことある? 記憶にないけど。

「ふふ、忘れてるんだね。頼人くん微妙に凹んじゃうね」

「微妙どころかかなり凹むんだけどさあ」

「えーえー、ちょっと待って。いま記憶たどってみるから」

 うーん、うーん。焦りながら、必死に記憶さかのぼってみるけど、ぜんぜん思い出せないや。

「瑠花さあ、あたしらが1年の時にきた教育実習生のこと覚えてないかな? 歴史担当の中村先生のこと」

「…………!! あっ」

「やっと思いだしてくれたの? 俺は忘れてなんかなかったのに。あの当時からかわいかったし、結構タイプだと思ってみてたからさ。田中さん、また一段とかわいくなってるね」

「ばか、調子のりすぎ。まったく頼人ったら女好きなんだから。生憎だけど瑠花には頼人なんかよりもっともっとかっこいい彼氏が居るんだからね。相手にもしてもらえないわよ」

 幾美ちゃんの横に立ったままの中村先生に、平手打ちをあびせながら口を尖らせている。幾美ちゃんが中村先生に対してやきもち妬いているなんて。

 さっきまでクールで大人っぽい幾美ちゃんだったはずが、中村先生の前ではこんな風になっちゃうんだね。

 女の子のかわいい嫉妬する姿。幾美ちゃんも好きな人の前ではこうなるんだ。あたしと一緒だよ。ちょっとだけ安心した。

 幾美ちゃんとは合コンに誘われるまで、一度も話をしたことがなくって距離があった。女子はたいてい数人の仲良しグループでまとまって、何をするにも一緒に行動する習性があるもの。けど幾美ちゃんにおいては、それはまったくのイレギュラーで、彼女は単独で行動していることが多い。いわゆる自立しているタイプなの。だからって、仲間はずれだったり、孤立しているわけでもなくて、誰とでも気さくに親しく話すことができるオールマイティな女の子なんだ。

 あたしは幾美ちゃんのことは正直あまりよくは知らなかったんだけど、今日こうやって一緒にお茶をして過ごして、幾美ちゃんてすごく惹かれる部分があって、これからもいい友達関係を築いていけたらいいなって、改めてそう思ったの。

 さりげなくって素敵なんだよね、幾美ちゃんって子は。




 喫茶店をでると、3人があたしの乗るバスの停留所までお見送りをしてくれた。

 バス停までいくさなか、魁人くんは祥大のことが気にかかるのか、気にさわるのか、あれこれあたしに言ってきた。「そんなの全部誤解だよ」って魁人くんに言いたくて、口がむずむずしていたけど、途中からあることないこと言われ続けている祥大のことが、なんだか可笑しくって、そう思うと腹も立たなくなってきちゃった。

「俺の通ってるN高と瑠花ちゃんの彼氏の学校って近いだろ。だからあいつが別の女といちゃいちゃしてるとこ目撃したら、即行で幾美ちゃんにメールで報告すっからさ、安心しなよな」

「あ、うん、ありがと」

 魁人くんは、どうしても祥大を女たらしに仕立てたいようだ。

 ねえ、どうする祥大、これからしっかりと見張られちゃうよ。まじめに悪いことできなくなるね。

 あたしはそんなことしないって祥大のこと信じているんだけどね。

 そうだよね? 祥大。




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