Soda5(S-side) 俺たちの新たな悩み(1)
俺と瑠花が付き合いだしてから、すでに2ヶ月が過ぎていた。
夏休みを直前にした週末、瑠花が初めて気持ちを言葉で表現してくれた。その日のうちにふたりは結ばれ、今に至っている。
夏休みの間も俺は相変わらずバイト三昧だったが、家に帰れば瑠花がいて、会いたいときにいつでも手の届く範囲に彼女は居てくれる。朝一番に合わす顔も、夜最後に合わす顔も、両方が瑠花であることがたまらなく嬉しい。こんなにも俺自身、恋というものに溺れてしまうこと想像がつかない程、あいつは俺を夢中にさせていく。
それでも表向きの俺はクールなもて男で通っている。それは今も変わらず健在で、いまだに俺と付き合いたいと告白してくる女の子も後を絶たない。そのたび「つきあってる子がいるから、ごめん」そう断りを入れるのに、なかなか浸透してくれやしない。
バイト先でも変わらず女の子が足繁く通ってきてくれて、知らない間にファンクラブ的なものまで発足されているようだ。その子たちにとっては、俺に彼女が居ようが居まいがそんなことはもうどうでもいいようである。
俺は芸能人でもなけりゃアイドルでもない。ただのごくありふれたいち高校生に過ぎないんだ。
まったく女の子たちの思考回路には、ついていけないところがある。
こんな俺にはもうひとつ悩みの種があった。
俺に彼女ができたことは、晴哉には打ち明けてある。けどその相手が瑠花だということはまだ明かしてはいない。なんとなく言いだしにくくて、先延ばしにしてきたのだが、いつまでも打ち明けないわけにもいかないだろう。
あいつは3年になった今でもたまに瑠花のことを思いだすことがあるようで、それは決まって彼女とさよならした後の病気みたいなもんで。「瑠花ちゃんどうしてるかな、久々に会いてえなー」とか「彼氏できたんかな?」など。わざわざ俺に言ってきたりするもんだから、そうそう知らん顔もできないっつーか、その言葉を聞くたびに俺は良心の呵責に悩まされちまうんだ。晴哉を瑠花に引き合わせておきながら、俺が瑠花とこうなっちゃってんだから、弁解のしようがない。
そのことを瑠花に話すと、あいつもこう言うんだ。「あたしだって同じだよ。友達の元彼と付き合ってるんだもん。別れた原因だってあたしなんだからさ」そう言いながら、切なそうに溜め息を零すんだ。
最近の俺と瑠花は、夜になるとどちらともなく相手の部屋を訪れて、こんな会話をしていることが多い。溜め息をつきながら傷を舐めあうようにして、お互いを慰め合っている。そのうち最後は、いちゃいちゃに転化して、寝室にいる親に気づかれないようそっとドアを開け、抜き足で自分の部屋へと戻る。
今夜は瑠花が俺の部屋に来ている。そして今はキスの真っ最中だ。
瑠花の唇はすごく柔らかくて気持ちいい感触で、ずっとその感触を確かめていたくなるほどの弾力がある。気持ちに火が付き高揚し、盛り上がってきたその時に、瑠花は突然素面に戻った。キスを中断すると、目を丸くしながら話し始めた。
「ねえ祥大、有未香はさ、新しい彼氏とラブラブでいい感じだからまあいいとして。晴哉くんって今フリーなんだよね? だったらさ、あたしの友達で彼氏いない子とかいるし、引き合わせてみたらどうかな?」
何も今そのことを伝えなくてもいいんじゃないか?
おまえさ、キスの最中に集中せずに、他の男のこと考えてんじゃねえよ。晴哉の為に一生懸命知恵絞って考えたことはわかるけどさ。今じゃなくてもいいだろ。
おまえってさ、だいたいが早とちりなんだよ。肝心なところ抜けてるというか。
まあ、そんなところが可愛くもあり、俺は結局そんな瑠花をぎゅっとしたくなるわけなんだが。
「おまえな、俺とキスしてる間くらい別のこと考えないでくれるか。他の男のこと頭に浮かべたりすんなよ。俺の気持ち掻き乱したらどうなるか分かってやってんのか? おまえのこと壊しちゃうぞ。それでもいいの?」




