十二
「っつ…」
腹がズキズキする。
肋骨は折れてなさそうだが、体中打撲傷だらけだろう。
「あの男、見たことない顔だったな」
わずかに差し込む月明かりに照らされた顔は、今まで見たことがない顔だった。
だけど…、どこか見覚えのある顔でもあった。
「誰かに似てた気がする…」
空を見上げると、うっすら赤く染まり始めていた。
気づけば、鬼の住む家が目の前にあった。
「まったく。親父さんは何考えてんだか。全部白状してもらわないとな」
そして、勢いよく戸口を開けた。
乾いた音ともに、土間に朝日が差し込む。
「生きて帰ったか」
白鬼が笑いながら待っていた。
「親父さんのせいで死にかけた」
「一体何の事だ?」
とぼける親父さんの前に、赤い紙切れの束を投げ出した。
あの男から、くすねた物だ。
「それを持ってる男に襲われた。親父さん、知ってたでしょ?」
親父さんは紙の束を手に取り眺めている。
私は、近くの椅子に腰掛けた。
「さすが、蓮鬽最強とうたわれただけあるな」
「本気を出す気は無かったけど、本当に危なかったんだ」
本当に、復帰早々死にかけるとは思ってもみなかった。
「あいつ何者なの?」
あの速さ、動き、的を外さない技術…。
どれを取っても上の方だ。
「あの男は、蓮鬽の血をひくものだ」
「やっぱり。あんな人間離れのスピード、普通の人なら出せない。例え訓練したとしても元の肉体はついてこれない」
「その通り。ただ、あのような男に心当たりがない。あいつが現れたのは一ヶ月くらい前だ」
親父さんは、ゆっくりと話し始めた。




