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ね娘  作者: Satch
1/3

第1話:猫と話す少女

全3話の予定です。

俺は今、学校へ向かう道を気だるく歩いている。

今日は高校2年生になって最初の授業なのでやる気も起きない。


「ん?」


ふと見ると、道端に同じ学校の制服を着た小柄な女の子が、屈んで何かやっている。

いや良く見るとその前に猫が座っていて、その猫と遊んでいるみたいだった。


「にゃにゃにゃ、にゃあ?」


その女の子は可愛らしい声で、にゃあにゃあ言ってるのが微笑ましい。


「今日の天気はどうかにゃー?」


…いや猫に聞いても分からないだろ。


「ニャン」


「え? 午後から雨がくるかも?」


え? 分かるの?


俺がすぐ傍まで近づくと、気配を感じたのか女の子がこちらに振り返った。

目尻が少し上がった大きな目をしていて、猫を連想させる可愛い娘だった。


何故か俺の顔をジーっと見る、その娘の前にいる猫も俺をジーっと見る。


「ニャン」


「うん」


その娘は猫のほうに向き直り、まるで会話をするように猫に語りかけている。

うん、関わらないほうが良さそうだ、うん、誰も居なかったし何も見なかった。


俺は何事も無かったかのように通り過ぎていくと、女の子が立ち上がった気配を感じた。

そのまましばらく歩いていくと、女の子は一定の間隔で俺の後をついてくる。


立ち止まると女の子も立ち止まり、歩き出すと女の子も歩き出す感じ?

またしばらく歩いて振り返ると、女の子も立ち止まり誰も居ない後ろを振り返っている。


小柄だとは思ったけど、小学生と言ってもおかしくないくらいちっさかった。

これが逆の構図だったらゼッタイ通報されてるね。なぜカタカナかは良く分からんけど。


その隙に走って最初の角を曲がり待っていると、女の子も走ってきて俺に勢い良くぶつかった。


「にゃふ!」


鼻を打ったらしく手で鼻を押さえ、目に涙をいっぱい溜めて言った。


「何するですか!」


「いや、それこっちのセリフだから…っていうか何か用?」


「よ、用なんかないもん!」


「でも俺の後をつけてたみたいだからさ?」


「と、ともかく用なんかないのです!」


そういうと女の子は俺の横を通り過ぎて行った。

まぁ、同じ学校みたいだから同じ道を使うだろうしな、と強引に納得して本来の道へ戻る。

ちなみに女の子が向かった方向は、学校には辿り着かない道だけどな!


すると遠くで「にゃっ!」って声が聞こえたと思ったら、

どどどどって感じで女の子が走ってきて俺の前に回りこむ。


「なぜ騙すですか!」


「はい?」


「新入生をいじめて楽しいですか?」


「えっと、言ってる意味が良く…」


「道に迷った新入生を…あ!」


やっぱり道に迷ってたのか…っていうかきのうの入学式に出てないのか?


「それなら素直にそう言えばいいのに」


「うぅ、だってタマさんがついていけって言うから」


「タマさん?」


「さっきの猫さんです」


「え? 猫の言葉が分かるの?」


「いえ…タマさんだけなんとなく分かるです」


なにそれ? タマさんて化け猫なんじゃ? って思ったけど口には出さなかった。


「まぁいいや、案内してあげようか?」


「え? いいんですか?」


「いやただ聞いてみただけだけど…?」


「また騙すです! もうプンスカです!」


面白いのでからかってみたけど、プンスカって言う人初めて見た…。


「うそうそ、本当に案内してあげるよ」


「……」


めっちゃ疑いの眼差しで見られてますよ。


「今度は本当だから!」


「……案内されてやるです!」


ちょっとからかい過ぎたか?

などと考えながら歩き出すと女の子は慌てて俺の隣に来て、手を繋いで来た。


「え!? な、なに?」


「こ、こうしてないと不安とかじゃないです!」


うーん、信頼度低いなぁ。


「今度は本当に案内してあげるから、手を繋がなくても大丈夫だよ?」


「…ぷぃ」


女の子はそっぽを向いてしまう。


「そ、そういえばまだ名前聞いてなかったね」


何か話してないと照れくさくてしょうがない。


「わ、わたしは水城美亜<ミズキ・ミア>というです、1年1組です」


手を繋いできた本人も耳まで真っ赤ってどういうこと?


「み、美亜か、いい名前だね」


「ありがとです、せんぱいは?」


美亜は上目遣いで俺を見上げてくる。まぁ身長差があるから自然とそうなるんだけどね。


「俺は2年2組の須藤健一だ」


「…見た目と一緒で、ごくふつうですね」


「…」


可愛い顔して意外と毒吐くのね…。


「そういえばきのう入学式だったけど学校来てないの?」


「き、来たですよ…なんですか! 1回来たら迷っちゃいけないですか!」


「…そういう訳じゃないけどね」


さっき、からかい過ぎたせいか、だいぶ沸点が低いようだ。


でもそんな話をしているうちにだいぶ打ち解けてきて、手を繋いでいることも気にならなくなってきた。

学校が近づくにつれて登校する生徒も増えてきたので、羨望や嫉妬の視線のほうが気になる。


「あ、あのさ、もう学校も近いしさ、手を繋がなくても…」


「美亜と手を繋ぐの…嫌ですか?」


さっきまでの威勢の良さは無く、大きな目をきゅっと閉じる。


「嫌とかじゃないけど…」


なんだろう学校が近くなるにつれ、というか生徒が増えてくるにつれ、

繋いでいる手に力が入ってきているように思う。


「緊張しているのか?」


すると美亜は強がりを言うでもなく、目をつむったままコクンと小さく頷いただけだった。

こんなんで学校生活ちゃんと送れるのかな?

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