↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ね娘  作者: Satch
PR
2/3

第2話:飼い猫のタマ

下駄箱で一旦離れ上履きを履いて合流すると、美亜はまたすぐに手を繋いできた。

手を繋ぐのはいいけど、すぐそこの階段で俺は2階に行くんだけど…。


美亜は相変わらず大きな目をきゅっと閉じている。


「じゃあ、俺は2階だからここで…」


「ふにゃ!?」


いやそこまで驚かれるのが驚きなんだが。


「み、見捨てるですか?」


涙目で見上げられても、困るんだけど、ドキっとはするけど。


「見捨てるわけじゃないけど、ここからは自分でなんとかしないとね」


と言って美亜の肩を持って、くるっと教室のほうに身体を向けてから、背中を押す。


「にゃ! ふ、ふしゃー!!」


なにそれ威嚇? しょうがないので、教室までそのまま背中を押していく。

その間もずっときしゃーとかふしゃーとか言ってるし。


1組のとこまでくると、美亜も最後の力を振り絞って踏ん張る。

っていうか周りの1年生が何事かと集まり始めてるし!


「おい! もう諦めて教室に入れ!」


このちっさい身体のどこにこんなパワーがあるんだ?


「ふしゃー! 先輩こそ諦めるです!」


「何を!?」


「人生…とか?」


「人生諦めたら終わっちゃうよね!」


何とか教室に押し込むと美亜の叫び声が聞こえた。


「にゃぁああああああ!」


俺は何事も無かったように、自分の教室に向かったのは言うまでもない。



…



自分の席に座り周りを見渡す、この学校は3年間クラス替えがないので、

新学期でも新鮮味は欠片もない。その分、新たなネットワークを築く必要もない。


なんでもネットワークを広げるよりも、絆や友情をより深める事に重きを置いた結果らしい。


「なぁなぁ! 新入生に可愛い娘いたか?」


突然話しかけてきたコイツは、中学からの腐れ縁で、高校に入ってからアホさに磨きがかかった友人だ。

紹介は……まあいいや。


「よくないよ! 紹介してくれよ!」


友人のアホです。


「それ悪口だよ!」


友人のKです。


「もう少し頑張って!」


友人の梶谷……です。


「梶山です! 梶山敬です!」


イニシャルもK.Kだし、名前も敬だからKでよかったじゃん!


「よくねえよ!」


「可愛い娘? そりゃ何人かはいるんじゃね?」


「紹介は終わりですか!? ってそうじゃなく可愛い娘見たかって聞いてんの!」


可愛い娘か……美亜は可愛いけどコイツに美亜のこと話したくないなってことで。


「見てないよ」


「なんだよ使えないなー! あ、なぁなぁ!」


敬はおんなじことを聞きまくっているようだ、よし、こんど話しかけてきたら殴ろう。


担任も代わらないから味気ないHRだった。『転校してきた賀理 勉です』とか来ないかなー。

担任が出て行くと敬が話しかけてきたので、頭をゴツっと殴っといた。


「なぜ殴る!? それよかさ、転校生とか来ないかな『転校してきた賀理 勉です』とか…なぜまた殴る!?」


「…いや何となく?」


「はぁ!? 意味分かんない」


敬は1限目の先生が来たので席に戻っていった。



…



1限目の授業が終わると、教室の戸が勢い良く開いて女の子が飛び込んできた。


「せんぱい!」


「ちょ! 美亜! ってわぁ!」


美亜が目に涙を溜めていきなり抱きついて来て、俺の胸に顔をぐりぐり押し付けてくる。


「美亜、噛んじゃったです…」


「はい?」


状況を把握するのには情報量が少な過ぎない?

美亜はおもむろに顔を上げて、俺を見つめる。その差数センチでちょっと頭を動かせばチュッと…。


「美亜、自己紹介で名前を噛んだです…」


「あぁ、そんなこと」


「そんなこと!?」


一瞬唇が触れたような気がするけど、美亜の剣幕はそれどころではない。

自己紹介で噛んだくらいで、そんなこの世の終わりみたいな顔されてもね…。


「そんなことってどういうことですか! せんぱいは美亜に対する愛が足りないです!」


「愛!?」


「じじじ慈愛です!」


「…あのさ美亜?」


「? はいです」


俺が真剣な口調になると、美亜は少し身体を離してから涙を拭って居住まいを正す。


「自己紹介で噛んだってさ、その時笑う人は居ても、それに対して文句を言う人はいなかったでしょ?」


「…です」


「逆にその程度のドジっ娘は可愛がられるから大丈夫だよ」


「ドジっ娘?」


「ドジな女の子のことだよ」


「誰がドジか!」


美亜にぽかぽかと頭を叩かれていると、敬が割り込んできた。


「おい健! その娘は誰かなー?」


笑顔で額に青筋がたってるのが怖い。


「お前、可愛い娘は見なかったって言ったよな?」


「ああ、見てない」


「あ? じゃあその可愛い娘はなんだよ!」


「この娘?……この娘は…え、えーと…飼い猫のタマだ!」


『嘘つけー!』


クラス全員にツッこまれた…。


「にゃー……」


教室には、美亜の鳴き声が虚しく響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。