表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女は"ざまぁ"されるほどの罪を犯したのか ~傷ついた彼女を救いたくて~  作者: myano


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/33

第17話 ノエルの後悔

「落ち着いた?」

「うん。ありがと」


 さっきまで泣いていたからか、ノエルの声はまだ弱々しい。

 ひとまず泣き止んだので、彼女の背中から手を離した。


「あっ……」


 ノエルが寂しげに声を漏らす。

 彼女のイメージとはかけ離れた声に、思わずドキッとしてしまった。


「き、今日は遅いしもう休むか?」


 変な気持ちになりそうなのを抑えながら、そう提案する。


「もうちょっとだけ。ウチの話もしたいし……」


 上目遣いにそう言われては断れない。

 それに、話の内容もすごく気になる。このまま解散すると、悶々として眠れなさそうだ。


「良いよ。ノエルの話を聴かせて?」



 再びノエルと向かい合って座る。

 彼女はすっかり冷めてしまった紅茶を一口飲む。


「紅茶、淹れなおそうか?」

「ええよ。せっかくクライム様が淹れてくれた紅茶やもん。捨てるなんてもったいない」


 ノエルはそう言うと、愛おしげな目で紅茶のカップを見た。


「それで、ノエルは何で倉庫の中なんかに居たんだ?」

「……かくれんぼ」


 ノエルが頬を染めて目を逸らし、小さな声で答える。

 予想外の答えに、思わず聞き返してしまった。


「かくれんぼ?」

「友達とかくれんぼしてたんや。屋敷の門と倉庫の扉が開いてたから倉庫の中に隠れたんやけど、外から鍵を閉められて出れなくなったんや……」


 ノエルは恥ずかしそうに話す。

 あの事件の発端が、かくれんぼだったとは夢にも思わなかった。


「医者に運ばれたウチが回復したのは三日後のことやった。その日、ウチはクライム様にお礼を言おうとマーシー家を訪ねたんやけど……」

「ああ……。謹慎中だから会えなかったんだな」

「結局、ウチがクライム様に会えたのは2年後やった」

「謹慎が解かれたのが2年後だったからなぁ……。あれ? 確か謹慎が解けた日に訪ねて来てくれたよな?」


 謹慎が解けた日に面識の無い女の子が訪ねて来たので、とても驚いたことを覚えている。


「毎日通っとったから当然や。いざ本人に会ったら、頭が真っ白になって何も言えなかったんやけど……」

「毎日来てくれてたの!? 2年も!?」

「どうしても命の恩人に直接お礼を言いたかったんや。……まあ、結局今の今まで言いそびれてたんやから、笑えるやろ?」


 そう言ってノエルは自嘲的に笑う。

 きっと、最初のタイミングを逃したことで言い出し辛くなったんだろう。俺にも経験があるから、その気持ちは痛いほどよく分かった。


 ノエルはいきなり頭を下げた。


「クライム様、ごめんなさい。あなたはウチのせいで謹慎まですることになったのに、ウチは何もできんかった」


 それはまるで自らの罪を懺悔するかのようだった。

 その姿を見て、ノエルはこの苦しみをずっと抱えて生きてきたのだと知る。


 俺は謹慎していた2年間と、その後の人生を思い返す。

 確かにあの事件以降、辛い日々が続いた。だが、それは自分の行動が引き起こした結果であり、ノエルを責める気持ちは全く浮かんでこなかった。

 俺は彼女の謝罪を受け入れることを決める。これで、本当の意味でノエルと対等な関係になれる気がした。


「ノエル、頭を上げて。怒ったり恨んだりする気持ちは無いから、気にしなくて良いよ。それに今は俺の領地の発展を手伝ってくれているじゃないか」


 この街で働く職人たちを集めてくれたのはノエルだ。

 それに、彼女が資金を援助してくれるおかげで、効果的に施設を建築できている。


「それは……クライム様の恩に報いようと思ったんやけど、これしか手段が思い浮かばなかったんや」

「十分過ぎるぐらいだよ。これだけの大金、お小遣いだけじゃないよね?」


 以前、ノエルは『コツコツ貯めたお小遣い』を出資していると言っていた。

 最初は俺もその言葉を信じていたが、最近になって金額が多すぎると感じるようになっていた。


「うん。回復した日から、お小遣いを投資して増やしたんや。いつかクライム様が領地を持つことになったら、少しでも助けになればと思って……」


 そんな時期から貯めていたのか。しかも、5歳の頃から投資で増やしていたというから恐ろしい。彼女は百年に一人の商才の持ち主なのではないか。


「なあ、クライム様。ウチ、これからもクライム様の傍に居てもええやろか?」

「もちろん。大歓迎だよ」


 ノエルの言葉に即答する。

 彼女はかけがえのない存在で、もはや彼女のいない人生なんて想像もつかなかった。



 翌朝。政務室で仕事をしていると、フィーナとノエルの会話が聞こえてきた。


「昨夜はお楽しみでしたね」

「それ、使い方間違ってるで。……よく入ってくるのを我慢できたなあ」

「わたくしだって空気ぐらい読めますよ!」

「そっか。ありがと」

「……ノエルに借りができましたね」

「借り? 貸しやなくて?」

「わたくしが知りたかった話を引き出してくれましたから」

「敵わんなぁ。……ええよ、昨夜のはウチの借りにしとく。これを貸しやと言い張る女は、フィーナには勝てん」

「ふふっ。さすが、わたくしの親友(ライバル)ですね」


 フィーナがそう言うと、二人は不敵に笑いあう。

 ……彼女たちは何の話をしているんだろう?

 俺は一人、首を傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ