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王女は"ざまぁ"されるほどの罪を犯したのか ~傷ついた彼女を救いたくて~  作者: myano


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第15話 真実を混ぜると効果的

「クライム様。わたくしたちがこの街に来た日から、ちょうど半年ですね」

「もう半年も経つんだな……」


 そんなに時間がたっていることに驚く。

 毎日全力で駆け抜けていたから、あっという間の半年間だった。


「住民たちはどうだ? 不満や要望は無さそうか?」


 自分で見た限りでは不満を抱いている住民は居なさそうに見えるが、フィーナはどう感じているかを聞いてみたかった。


「みなさん満足していると思いますよ。不満の声も上がってきていません」

「それは良かった」


 ほっと胸を撫でおろす。

 昨今、国のあちこちで住民と領主が対立しているとの噂を聞く。そうならないよう、民の声に耳を傾けないと!


「この街は交易品のおかげで活気があり、税収的にも成功している部類です。変な貴族に目を付けられるかもしれませんので、ご注意ください」

「目を付けられる……か」


 良くも悪くも、出る杭は叩かれるということだろうか。

 俺は彼女の言葉を胸に刻み込んだ。



 フィーナと政務を行っていると、一人の男性が入ってきた。

 彼は最近雇った職員で、事務仕事や政庁の受付を担当している。


「クライム様、お客様がお見えです」

「ありがとう。すぐ行くよ」


 俺とフィーナは立ち上がり、応接室に向かって移動する。


「クライム様、どうかお気を付けください」

「えっ?」


 すれ違いざまに、職員がそう言ったのが気にかかった。



 応接室に着くと、一人の男がソファに座っていた。


「お待たせしました」


 そう言って、俺たちは向かいのソファに着く。

 目の前の男は50歳ぐらいだろうか。服装は公爵にも見えるが、もの凄い小物感が漂っている。さっきもフィーナを見て鼻の下を伸ばしていたし……。

 今は大きく足を開いて腕を組み、気難しい顔をしている。

 男の態度を見て、職員が『気を付けろ』と言っていた理由が分かった。


「お初にお目にかかります。領主のクライム・マーシーと申します。以後、お見知りおきを」


 彼を刺激しないように丁寧な対応を心掛ける。


「メディオ・センドールだ」


 メディオは腕を組んだまま名前だけを告げてきた。メディオ・センドールといえば、ウエストマークのすぐ東に領地を持つ男爵だった気がする。

 彼の横柄な態度にイラっとするが、顔に出さないように注意する。


「本日はどのようなご用件ですか?」

「ふん。特に用などない。近くを通りかかったから領主の顔を見に寄っただけだ。ほんの少し評判が良いからどんな領主かと思えば、こんな若造だったとはな」

「まだまだ未熟者ですので、部下と民の声を聴きながら、精一杯務めております」


 胸を張り、まっすぐメディオを見つめて答える。

 彼はしばらく俺を見たあと、「つまらん」と呟いた。隣でフィーナが殺気立っているのを感じる。


「まあいい。そういえば、この街は旅人や商人がよく訪れているな。大層儲かっているのだろう?」

「とんでもございません。まだまだ修繕すべき施設も多く、財政は常に火の車ですよ」


 嫌な予感がしたので、お金が無いことを強調する。

 領地を発展させるためのお金が不足しているのは事実だから、嘘は吐いていない。


「金など、どこからでも搾り取れるではないか。徴発すればすぐに出てくるし、税を重くすれば恒久的に増え続ける」


 俺は愛想笑いを浮かべる。どうもメディオとは話が合わなさそうだ。

 そんな政治をしているからお金が無いのではないか?


 その後もそれとなく支援を求められたが、何とかやり過ごした。



 数日後、街ではいくつかの噂が流れていた。

 内容は『領主はケチ』『領主は税を増やそうとしている』『領主は女たらし』などだ。


「うーん、どれも事実無根の噂だけど、意外と信じている人も居るなあ……」

「最後の噂だけは事実ですからね。真実を織り交ぜることで、信憑性(しんぴょうせい)が出るのでしょうね」


 フィーナが納得したようにうなずいているが、異議を唱えたい。


「俺は女たらしじゃないぞ!」

「そう思ってるところが女たらしと呼ばれる所以や」

「ノエルまで!?」


 見ると、ノエルはジトっとした目を俺に向けていた。


「それより、この街だけやなくて周囲の街でも噂が広まってたで。何者かがクライム様の悪評を流したと考えるべきやな」

「自然発生にしては拡散が速すぎますね。何者かがいくつかの街で同時に噂を流したのでしょう」


 犯人は想像がつくが、目的が分からない。

 支援を断られた腹いせというのは考えられるが、あまりにも短絡的だ。


「証拠が無い以上、あまり騒ぎ立てるべきではない。今は一つ一つ否定して、沈静化を図ろう」

「せやな。事実無根の噂は否定せなあかんな!」

「ですね。違うものは違うと、はっきり言いましょう!」


 何故だろう、二人の言葉に含みを感じる。


「えっと……ちゃんと全部否定するんだよね?」


 俺は心配になって二人に確認するが、彼女たちは不敵に笑っただけだった。


 数日後、俺が女たらしであるという噂()()は、綺麗さっぱり無くなった。

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