第35話 二人のための枠
小坂部と和田は再びカウボーイ事務所を訪れた。前回の訪問の際は夢藤雅樹と飛柳拓海の出演料横流しを疑い、その金が自由民新党パーティー券購入を通じて、二人のアイドルの宣伝に使われたものだと嫌疑を掛けていた。しかし、その確たる証拠までは掴んでおらず、カウボーイを追い込むにまでは至らなかった。だが、今回は違う。小坂部と和田には証拠があった。前回同様、カウボーイ事務所側は副社長の喜多村メイコと顧問弁護士の仲道節雄が立ち会った。
小坂部は単刀直入に言った。
「夢藤氏、飛柳氏、両名とタレント契約を解除したそうですね。理由は何ですか?」
メイコが無表情で呟く。
「お答えできません」
「では代わりに申し上げましょうか?」
仲道が鋭い眼光で睨みつけてくる。
「両名はいまフリーになっています。これならいつでも選挙に出られるからです。違いますか?」
「所属タレントでない者のことについてはコメントいたしかねます」
小坂部は構わず言った。
「しかし、ラッキーでしたよね。タネをまいたのは自由民新党だが、政治資金規正法に先に引っかかったのが比較第二党の野党議員とは。そこが野党は脇が甘い。議員が直接キックバックを受け取っていたなんて。これでは特捜部も起訴せざるを得ない。ああ、いや誤解せんでくださいよ、自由民新党の緒沢議員も具に調べあげたのですが金銭授受の関わりがどうしても立証できない。結局自由民新党の思う壺だ。辞職した二人の野党議員の選挙区では繰り上げ当選者もおらず、来月補欠選挙が行われるようですよ。二人といえば、ちょうど合いますね」
弁護士の仲道が問う。
「何がおっしゃりたいのでしょう?」
「これは二人のための枠ですよね?」
「以前も申し上げたが、検事さんのお話はひとつも根拠がない。ましてや事務所に所属していない者がなにをどうしようと関係ない」
小坂部は補聴器を入れ直し険しい顔で言った。
「では、何故夢藤氏と飛柳氏は自由民新党の推薦を受けるのですか? カウボーイ事務所からどこぞに裏金が回っていたからではありませんか?」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




