第27話 本当の狙い
カウボーイ事務所側の不正は暴けていないが、自由民新党の不正は特捜部の調査で実は暴いている。安西派は企業などから集めたパーティー券収入を派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとして、政治資金規正法違反の疑惑がかかっている。
「あれを突き付けたらどんな顔するでしょうね」
「そこだけだったら自由民新党の不始末で終わってしまう。問題はその金がカウボーイ事務所から回ってきたことを突き止めんと、自殺した彼女たちが浮かばれん」
二人が最寄りのパーキングに車を止めた時、雨は本降りになっていた。
「傘、お持ちですか?」
和田は小坂部に訊ねた。
「すぐそこだろ? 走るぞ」
本降りの中、小坂部は傘も差さずに事務所があるビルに駆け出した。和田は持っていたビニール傘を車に放り投げて小坂部を追った。
事務所の玄関口には多くの報道陣が入り口を塞いでいた。小坂部と和田はひとまず庇のある軒下まで濡れた体を滑り込ませた。ハンカチで顔を拭い和田が言う。
「もう嗅ぎつけたんですね」
そのうちの一人の男を見つけて和田はさらに呟いた。
「悪名高い暴露誌までお出ましか・・・」
男のスーツの襟にはAとNの2つの文字が黄色いフラワーの花びらに象られて光っていた。アジアンニュースJPエンタメ部の曽我である。安西派の政治資金規正法違反について調べに来たのだろう。
小坂部は片手で頭髪の水気を払い飛ばし、左耳の補聴器のズレを直した。メディアを押し除けて玄関を掻い潜る。背後から曽我がこんなことを言った。
「本当の狙いご存知ですか、検事?」
小坂部は振り返り曽我の緩んだネクタイの結び目を見つめた。
「本当の狙い?」
「連中はカネより党利党略です」
「だから、それを調べに来たんだ」
「政治資金なんて上辺ですよ」
政党の利益を第一として悪政を働くならそれを暴いて正さなければならない。それが小坂部たちの使命だ。著名人のスキャンダルを餌にして購読者を増やすだけならまったく楽でいい。そう小坂部は心の内で嘲弄した。
「悪いが君と無駄なお喋りしている時間はないんだ」
「夢藤と飛柳が次の参院選の推薦候補に挙がっていることご存知ですか?」
(なにい!)
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




