第4話 裏天皇「帝」
和樹は車に乗って移動し、皇菊会の本拠地に向かう。そこでボスである「帝」と対面する。
─車での移動中
「まず貴方は帝と会ってもらいます」
男は言った。
「ミカド?」
「はい、簡単にいうと我々のボスです」
男は笑みを浮かべる
「貴方を誘ったのも帝ですよ」
「何でまたそんな…」
「さぁ? 私には分かりません」
含みのある言い方だ。やっぱこいつは気持ち悪い…
─数時間後
「つきましたよ」
だいぶ長いドライブだった。せめて楽しく話せる奴と乗りたかった。あの男は気持ち悪いし、他のスーツはだんまりだし。
「ここが本拠地か?」
「はい、貴方はここで特サ軍に入隊してもらいます」
「特サ軍?」
なんだそれ。
「特殊サイバー軍の略です。私たちは陸、海、空に合わせてサイバー攻撃の軍隊も保有しています」
随分と現代的な戦力も持っているみたいだ。
「帝はこちらの階段から地下です」
─地下皇居
「帝は天皇家の血筋なのです」
随分と胡散臭いな。一気に信用を失う。
「我々は地下に皇居を構えています」
「フーン」
─地下皇居御所
明らかに空気が違った。不気味なくらい静かだった。皇居と言っても地下空間だから、周りが湖のようになっていて一本の道が中央の椅子に向かっている。
そして中央には随分立派な玉座に座り派手な格好をした人物がいた。朱色の服を着ていて手首には黒い石のような歪な数珠をつけている。派手なのにどこか落ち着きのある風格だった。おそらくあれが帝だろう。顔は隠れていて見えない。
男が帝に向かって一礼をする。さっきと雰囲気が違った。
「帝。お呼びのものを連れてまいりました。これより我らが皇菊会の同志になります。冬馬和樹です」
俺も話すのか。
「冬馬和樹です。突然ですけど貴方が天皇の家系なのって…
─ドゴッ!
「ッ!!」
とてつもない肘打ちが脇腹に飛んできた。
「貴様無礼だぞ! 口を慎め!」
帝が口を開く。声はボイスチェンジャーで変えられてるのだろう、機械的な音声だ。それなのに、なんだこの威圧感は…
「よいよい気にするな。それよりも冬馬和樹、先の復讐は見事だった。まさしく我々が求める人物だ」
この帝には逆らってはいけない。直感的にそう感じた。
「…父の仇です。ですが、貴方方の力なくしては、復讐は叶わなかった。私は、この力がこの国を変えるために必要だと信じています」
反射的に答えてしまった。
「結構。信念は力になる。それを忘れぬように」
「承知しています。私は皇菊会のためにこの身を捧げるつもりです」
帝の口角が上がる。
「よろしい。蓮から聞いていると思うが其方には特殊サイバー軍に入ってもらう。其方の技術、期待してるぞ」
蓮? 誰だそれ。もしかしてあの黒スーツ男か? それに何で帝は俺がハッキングできるのを知ってんだ?
「蓮、そいつを持ち場に連れて行ってやれ」
黒スーツ男が返事をする。やっぱりこいつが蓮だ。
帝が話しかける。
「共に頑張ろう同志よ」
彼にはとてつもないカリスマ性がある。10分も話してないのにもう彼に忠誠を誓える。
「もちろんです。帝」
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