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嘘と真実

 賢者セルスのいる場所まで来ると、セルスはいつものように現れた。ホログラムのような賢者セルスを見つめながら私はセルスへ質問した。


「賢者セルス、お伺いしても?」


「なぜわしの忠告を無視した? あの部屋は隠されたものだった」


「平和を望んだからです」


「違う。それは、わしの考える平和ではない」


「でも石を探さないと、また見えざるものが復活してしまうんですよ」


「……」


「賢者セルス?」


「そうであったな。理想と現実は違う。わしの思い描く平和が、必ずしも民達の平和に繋がるとは限らないのじゃ」


「そうだと思います。ですから、洞窟の奥にある本が何なのかを教えていただけませんか?」


「今の時代には不要なものかもしれん。知らない方がいいじゃろう」


「えっと?」


「賢者セルス、私達は石を探さなければならない。何か知っていることがあるのであれば教えてくれ」


「わしに教えられることは何もない」


 殿下の言葉に、大賢者セルスはかたくなな態度を取っていた。


「でも歴史書のことは知っているのだろう?」


「知っているも何も、あれは――あそこにないものが答えじゃ」


「あそこにないもの?」


「洞窟には何がある?」


「歴史書?」


「何がない?」


「え?」


「なんの歴史書がない?」


「全時代の歴史書があったと思いますが……」


(確か、全時代の歴史書があったわよね。家系図とか、城の土木作業時の図面まであったし、なにがないって言ってるの?)


「……もしかして、海外に関する書物ですか?」


「さよう。洞窟にある書物は、全て国内についてのものじゃ。あれが()()()本来の歴史書じゃ」


「賢者セルス、どういうことだ?」


「正しい歴史書じゃ――外国なんてものは、初めから存在しない。もしかしたら、歴史の始まるずっと前にあったかもしれんが、それは誰にも分からないことじゃ」


「え? え……」


 殿下は完全に混乱していた。代わりにリトッシュがセルスへ質問する。


「それじゃあ、私達が知っている外国のことは全て嘘だったということですか?」


「そうじゃ。この国が完全に一つになった頃に、見えざるものがやってきてな。それと同時に内紛が何度も起きて大変だったんじゃ。それで、外国から敵がやって来たことにしたのじゃ」


「よくそんな嘘が通りましたね」


「考えてみてくれ。わしの魂は、この世界ではないところからやってきて、王様の身体へ入ったが、この国のことも分からなければ、倫理観や価値観も分からない。そんな状態で内紛を解決しなければないらないばかりか、見えざるものが常に襲ってくる日常じゃぞ? 以前にいた世界とたいして変わらないと思ったわ。だから、わしはわしのやり方で――必死に、王としての地位を築き上げたのじゃ」




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