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転神転生  作者: 拓人雨
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鏡院の不協和音

 ちょっと波乱の鏡院のスタートとなりましたが、グリマーニア王さまの協力で120名の鏡院の『本部ほんぶ』と『鏡院分社』の人員が確保することができました。その人員を率いて来てくださったジサイさまより、人員の詳しい経歴や得意分野などの詳細をお預かりしたので、かがみさまと私で夜にじっくり読み込みました。

 竜宮たつみやちゃんは、『偏屈なじじいの相手は凄く疲れる!』と言って、ミミちゃんと早々に寝てしまいました。ふふふ、お疲れ様です。


かさね殿、神官職の方々は、どうしても元々違う宗派といいますか、違う神々を信奉していた方ばかりですね」

「はい、これは仕方ないと思います。元はお医者さまだった方も数名いらしゃいますね」


 今までは信仰している神様ごとに宗派があり、それぞれ寺院も建てられていました。宗派・寺院は国などは一切関与しておらず、それぞれ独立しているそうです。これはハクリュウの国に限らずコクロウでも同じようだったそうです。シマ組では信仰の概念はあっても寺社などはありませんでした。


(鏡院って警察と消防と寺社仏閣が一緒になっちゃった感じよね・・・あ、一部は学校もね)


 そもそも警察や消防署なんかの概念はここにはありません。今までは火事は戦闘と同じ扱いで守備兵が担っていました。犯罪者の捜査や魔物の討伐も同じく守備兵が主力で、複雑な捜査は国の調査官が携わる事もあるとか。怪我や病気は寺院や町医者や薬草屋に行きます。

 さすがに学校機能は今までの王国にあった教育機関が主に担いますが、将来的には鏡院を中心に学校、医療、治安、消防、寺院が建つ計画です。子は国の宝ですからね。


 さあ、明日も早いのでそろそろ寝ようと思い、経歴詳細が入っていた皮の封筒を手に取ると、何かもう一通の手紙が入っていました。どうもグリマーニア王さまからの自筆メッセージカードのようです。


『カガミツクモ様、カサネ殿、も選定に立ち会った鏡院の職員の面々はどうであったかな。

三賢者がこの役に自薦をしてきたのにはも大いに驚いたが、三賢者は在野の者でが最も信頼しておる者たちである。

口が悪く癖が強すぎる故に、の近くで仕えてもらえなかったが、民想いの出来人できびとである。扱いにくいやもしれぬが、存分に使ってほしい。どうぞハクリュウの国民を頼み申す グリマーニア』


「・・・三賢者さまの癖の強さはグリマーニア王さまのお墨付きなのですね」

「・・・それでもグリマーニア王自ら信を寄せる方々であるのであれば、もそのつもりで接しましょう」

「ふふふ、私にはまだヘソ曲げたおじいちゃん達にしか見えませんけれどもね」


 グリマーニア王さまの信が厚い方々なら、それほど心配しなくても大丈夫でしょう。

 かがみさまと私は苦笑いしながら明日に備えて今日はもう休む事にしました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌朝、あらためて昨日決められなかった選抜と、『鏡院分社』を巡りながら配属をしてまわる巡察の人員を発表しました。まずは三賢者の皆さんには近隣の都市までのご同行をお願いしたところからいきなり異議が上がりました。


わしはここの本部長のはず。同行はお断りいたす」

わしもお断りじゃ。この歳での長旅は地獄じゃてのう」

われも行くつもりはないぞ。なーんでわれら老骨をそこまで酷使しようとするのじゃ?」


 三賢者と呼ばれるブラハム翁、カルド翁、マルク翁は旅の同行をキッパリ拒否されました。かがみさまは即答拒否に驚きながらも、続けて説得してみます。


「三賢者とほまれ高い皆さんにご同行いただくことで、ハクリュウの地方都市で民心を安んじてほしかったのです。旧コクロウ首都トリトネを含む周辺の5大都市だけでもご同行いただけないでしょうか?」


そのやりとりを見ていたお若い神官職の方が前に進み出てきました。確か以前は夜神よるのかみの神官だったラルトという方です。


「カガミ殿。私、ラルトより具申ぐしん失礼します。そもそも、本部長殿がいきなり本部を長く空けるのは良くないでしょう。私は三賢者の皆さまにおいては、首都リュウズに残られるのが良いと思われます」

「・・・左様。そもそもわしらは首都以外にほとんど出てはおらぬ故に行ったところで誰もわしらと解るまいよ」

「うむ、そうじゃ。老けた顔した適当な者に三賢者を名乗らせても地方では解るまいて。かっかっか!」

われ等がおもむくより、カガミツクモ様が呼びかければすぐに済む話じゃ」


 あらあら、皆さん全力で同行拒否ですね。確かにご老体に鞭打つような申し出ではありますから、お気持ちもわかります。


「ともかく、地方任官は確か100名であったな?ここリュウズに残る治安10名、神官10名の人選は昨晩のうちにわしがしておいた。あとは好きに決めるがよかろう」

「おお、さすが本部長ブラハム翁じゃ。では首都の本部組は今日は本部長室で打ち合わせじゃのう。ひゃっひゃっひゃ」

「ちょ、ちょっとお待ちを・・・」


 首都残留組はブラハム翁、カルド翁、マルク翁、ラルト殿以外はまだ若い神官6名。治安に至っては、若く見目みめの良い10名の女性ばかりが選ばれていました。一部の翁の目がいやらしく見えます。ちょっとこの偏りは・・・。


「何かな?カサネ殿。リュウズには守備兵、近衛兵がおるんじゃ。鏡院の治安員は若い女子おなごで十分じゃ。神官もまだ他の寺社もあり機能しておる故に、わしら以外は経験不足の若手で十分じゃ・・・この人選に何か不満でもおありかな?」

(・・・エロじい?)

「ん?いま何か言うたか?」

「いえいえ、何でもありません!人選ありがとうございます」


 うっかり口から出そうになった言葉を飲み込みましたが、ブラハム翁の人選は確かに理にかなっていました。国はひとまず治りましたが、まだまだ地方都市は治安も衛生も大変だとも聞いています。経験豊かで働き盛りの30代40代が向かうのは頷けます。なんて考えているうちに首都の本部組を引き連れて別室に行ってしまいました。


「何だよあのエロじじい供は!?」

「見損ないましたぞ三賢者」


 この場に残った地方任官100名は口々に不平不満を話し始めざわついています。すごく空気が悪いです。あ、そういえば昨日頑張った竜宮たつみやちゃんが今日は静かです・・・。

!?なんと立ったまま寝てます。一応横に居るミミちゃんが心配そうに片手で支えてはくれています。

もうしばらくは偏屈爺へんくつじいとは話したくないって朝から憂鬱そうでしたからねぇ。


「これは・・・なかなかに難しい船出ですね」

「そのようですね、かがみさま。ともあれ、今日は改めて遠征組の編成をいたしましょう。皆さん!お集りください!竜宮たつみやさまも起きてください」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はっはっは!なんとまあ我儘わがまま放題よの三賢者の翁達おきなたちは」


 本部組と遠征組の組み分けが終了し、合同で鏡院の運営方針や活動内容の説明会がはじまり10日ほど経ちました。本日は私と竜宮たつみやちゃんで王宮の王の間にて一時報告に訪れています。この部屋はプライベート空間に近い王さまの執務室も兼ねた部屋で、グリマーニア王さまも同席している近衛兵長のガンスさんも正装ではなく私服でくつろいだ雰囲気があります。

 グリマーニア王さまは三賢者さまの様子を聞いて楽しそうに笑っています。私たちには全然楽しくないんですけど・・・。あれから10日間の説明中に、やれ以前の寺院より援助の要請が来たからと急に抜け出されたり、朝の散歩中に請われて人助けをしてたと夕刻まで帰って来なかったりと散々好き放題でした。いえ、悪い行いではないのですが、遠征組の皆さんからは勝手すぎると不満の声が大きくなってきています。


「いや、笑ってすまぬ。まあ、それがあの翁達おきなたちの素であるからに。いままでは癖が強くともそれなりの立場故に自重しておったようだからのう」

「はぁ・・・。遠征組の皆さんの準備は順調なのですが、このままでは本部組の皆さんとの連携が心配ではあります」

「拙者はあの偏屈爺へんくつじいはほんとに苦手でござるよ。最初以外はずーっと口で勝てぬでござる」


 竜宮たつみやちゃんは最初こそ圧倒しましたが、最近は海千山千の翁三人組には言いくるめられており、顔を見るのも嫌だと今日は私と同行してお城に来ています。


「ふむ、タツミヤ殿のやつれた様子を見るに心苦しいのう。まあ翁達おきなたちなりに何か考えもあるとは思うが、鏡院の士気が下がるのは良くない。も何か考えねばの」

「あら、では私が遠征に同行するのはいかがでしょうか?」


 王の間の扉が開き、聞こえて来た声の主はガブリル王女さまです。


「!?いや、ガブリルそれはならぬぞ!今やハクリュウは広大な国土を有する。巡るだけで一年はかかろう。何かあっても駆けつけられぬではないか!」

「今、王宮で手が空いているのは私だけです。連絡はカガミツクモ様・・・あ、カガミ殿の鏡でできましょう。それでも心配でしたら、武官も兼ねた専属の女官をつけてくださいまし」


 グリマーニア王さまは口をパクパクさせて驚いています。そりゃそうですよね。箱入り姫さまが危険を伴う遠征に1年以上出るなんて親としても心配でしょう。


「一応役職として私は鏡院の相談役にでもしていただければ表向きにも大丈夫でしょう。王家の者が民心を安ずるためにも統治している国内を巡ることも大事でしょう。それに私には守護神でもある付喪神つくもがみたまちゃんが居ます」


 ガブリル王女さまの決意はなかなかに固いようです。

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