【七階層六区画】疾風! ダンジョン甲子園! 前編
ネタ、やらずにはいられませんでした。
【七階層六区画】疾風! ダンジョン甲子園! 前編
日本の夏。今年は冷夏ではあるが、それでも暑い季節である。
そんな、ダンジョンが誕生してから大きく変わったのが、夏の甲子園である。
甲子園のダンジョン化。それはカーニバル・ダンジョンと呼ばれ一日だけ開催されるダンジョンで、特殊ルールのダンジョンとして、世界中で、その国の祭りをモチーフにしたダンジョンとなったのである。
「嵐吹き荒れるスタジアムに今年も、若者たちが集いましたね。解説の坂東さん」
「そうですね。同じ思いを抱きしめながら、信じてきた仲間たちと、ここまで来ましたからね。山崎さん」
「敵は黒城オーガスター。今年の夏の覇者、銀城高校野球部には、勝ってもらいたいと思います」
「えぇ、負ければ、モンスターの凱旋パレードというか、モンスターパレードが起きますからね」
本当に命がけの試合となっている。
「我々も、武装は用意していますが」
「ロートルですからね。まぁ、若人が逃げる時間稼ぎはできるでしょうが…勝って欲しいですね」
「まずは、先攻は、黒城オーガースターですが、全員3m超えてますね」
「ピッチャーの万条君ですが、彼はどうですかね?」
「ストレートも得意ですが、持ち味の高速シュートのキレに期待です」
『プレイボール』
その声に、観客席の応援団から声援が上がる。
「グヘヘヘ。さぁ、きな」
バッターボックスに立った、一番バッタ――鬼瓦――というらしいが、手に持っているのは、棘付の金棒を軽く握り構えはしっかりとしている。
「いくぞ」
ピッチャーは、振りかぶり真っすぐストレートを投げる、そしてバッターも振りかぶり、ピッチャーに金棒を投げた!
『おっと、ベースボールオーガの鬼瓦。いきなりのラフプレイだ!』
『これがあるから、このダンジョン野球は怖いんですよね』
ボールはストライ、ど真ん中に突き刺さりワンストライクであるが…
「グヘヘヘ、これでワンアウトだな」
鬼瓦はニヤリと笑い直撃は免れないと思ったが、サッカーのシュートのような構えをとると
「人間なんめんなよ!」
飛んできた金棒を避けることなく蹴り返し、その金棒は鬼瓦の顔面にぶつかり、ゴキュッと鈍い音がし鬼瓦の鼻が潰れはいるが、怯むことなくニヤリと笑う。
「ゲヘヘヘ、活きがいいじゃねえか楽しくなってきたゼ。気に入ったぜ。今度はちゃんと打ってやるからよ」
「いいだろう。打てるものなら打ってみるがいい」
万条は投球フォームに入り。右腕に力を込める
「【ライトニング・ノヴァ】」
光の矢のような剛速球がキャッチャーミットへと収まりバン! という音が遅れて響いた。
『これは凄い!』
『音が遅れたということは音速を越えたんですね』
解説席もざわめく、だが、バッターボックスにたつ鬼瓦は非常に楽しそうな笑みを浮かべる。
「すげぇじゃねぇか。打ち甲斐があるってもんだ」
「ならば、もう一度受けてみろ! 【ライトニング・ノヴァ】」
再び放たれ光の矢に対して、その大きなガタイとは裏腹に、細かい鋭いスイングで投球を捉える。
「ぐっ、これは…」
球威に押されバットを振り抜けず、ボールはキャッチャーミットへと再び収まった。
『バッターアウト!』
その声と共にバッターボックスを離れる鬼瓦は、ベンチに戻る。
「御大将、申し訳ありません。無様な姿をさらしました」
「是非もなし、しかし、鬼瓦よ。その方笑っているではないか」
「はい、此度の相手は、我らの全力に値する武士であると思い、嬉しく、笑みを隠せません」
「であるか…是非もなし」
そう話してしばらくすると
「大将もうしわけありません。打ち取られました」
「ほう、鬼若も打ち取るか。しかし、次の鬼蛇はそうはいくまい」
「はっ、アヤツの秘打『鬼龍炎打破』に打ち返せぬ玉などありますまい」
三番バッターの鬼蛇は他のオーガと違い全身が細く、身長も他のオーガよりも頭二つは高いが腕は、細長い、そしてバットも細長い。
ちなみにダンジョン野球では、バットの規制としては、単一の素材でできたものであれば、大きさの規定はない。長さ太さの規則がないので、振れさえすれば何でもよいというルールである(ボールは通常のサイズである)。
「一つ、教えてやる、このバットはヘビートレントという木でできててぇなぁ。頑丈さと重さに定評があるんだ。そして、こいつで打てなかった球をはねぇ」
「なら打ってみろ【ライトニング・ノヴァ】」
迸る閃光に対して
「秘打『鬼龍炎打破』」
球を捉えるバットは、シナリながらも球ほ捉える。
「ぐっ、こいつは思ったよりも…だが、どりゃぁぁぁぁ」
打球はレフト方向に飛んでいきワンバウンドでキャッチすると、一塁へと送球する。
「『伏蛇疾走』」
一塁手を吹っ飛ばすかのような鋭いスライディングで迫る。
「取らせるか! 【ガーディアン】」
銀城高校ファースト、秋山は体を張って止めた結果は…
『アウトー! スリーアウトチェンジ』
何とか、攻撃を防ぎきった。
後攻である銀城高校ではあるがベースボールオーガのピッチャーは鬼王の投球は
「【斬風裂破】」
鋭い風の刃を纏ったボールは銀城高校の選手たちのバットを破壊していく。
こうして、試合は一進一退の投手戦となっていくのだった。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。
今回のエピソードを書くにあたって、参考資料として『楽しい甲子園(大和田和樹先生著)』『アイアンリーガー』『アストロ球団』『魁!男塾』を参考にしました。
100話まであと5話




