【五階層十四区画】吹上浜ダンジョン その5
【五階層十四区画】吹上浜ダンジョン その5
十五階層ボス部屋で、待ち換えていたエリモス・ケルベロスは体を起こし身構え、既に戦闘態勢に入っていた。それを見て、即座に攻撃に移ったのは美穂であった。
「<ウォーター・スラッシュ>…」
水の刃を飛ばし攻撃を仕掛けるも
「「「グォォォォォォォォ」」」
エリモス・ケルベロスが雄たけびをあげると、それに反応するかのように、砂がまるでカーテンのように体を包み、水の刃は体に触れることになく霧散する。
「あれは…」
「しってるの? ぼたんちゃん」
「地系統の防御魔法<サンド・カーテン>だと思う」
遠距離攻撃を防ぐ防御魔法で、防御系でも広域も防げるので、地系統の防御でも利便性などでも重宝される魔法である。
「《ホワイトブック》…やっぱり、間違いありません。敵の名前はエリモス・ケルベロス、地系統・風系統の魔法を使い《並列思考》Lv2までありますね…それ以上の情報は、すみません。解析がまだ追いついてないです」
《ホワイトブック》、迷宮白書と呼ばれるアイテムを召喚するスキルであり、ダンジョンに関することが随時更新される莫大なデータベースである。ただし、過去に遭遇したことないことや、詳細な情報の解析には時間がかかるという欠点はあるが、情報系スキルの最上位スキルといっていいスキルが《ホワイトブック》というスキルである。
「《並列思考》ですか、確か同時に複数の行動がとれる一級スキルですね」
「ハハハ、魔法系という括りはないから、魔法と同時に他の行動がとれるからかなりの強スキルだよね」
「それで、ぼたんさん、作戦は?」
「<サンド・カーテン>は効果範囲から動くと効果がなくなるから…なんとか水をそれも大量にかけるしかないですね【サモン・ドッペル・サーバント】ウォーター・ウィザード、ウォーターナイト」
青い外套と杖をもった魔術師と青い鎧の騎士が姿を現す。
「ウィザードは<ウォーター・バレット>でけん制、ウォーター・ナイトは<ウォーターブレイド>で攻撃」
<ウォーター・バレット>は高速で広範囲に水の弾丸をばら撒く魔法で集弾率は低く威力も低いが足止めとして使うのに便利な魔法。そして、サーバントの利点は術者の魔力があれば、何度でも再生させることができので、少し強引な攻撃が可能であり、本来射程の短い<ウォーターブレイド>のような近接攻撃を可能にしていた。
「わたくしも、加勢するとしましょう。<メイルシュトローム>」
佐江の放った<メイルシュトローム>は水系統の魔法でも中位魔法と呼ばれ、莫大な水量をぶつける魔法である。
「「「ガァァァ」」」
二枚目の<サンド・カーテン>を張り、<メイルシュトローム>を凌ぎ、水流は霧散し水煙が立ち上る。
「《魔力撃》」
だが、その水煙の陰から岬が飛び出し手にした双剣に魔力を込めて斬りつける。双剣は水に濡れており砂の体のエリモス・ケルベロスにも十分にダメージを与える。だが、それで怯むようなモンスターではないエリモス・ケルベロスは
「「「ガァァオ」」」
と、吠え。三つある頭の真ん中から、砂の槍を岬に向けて発射する。だが
「<ディスペル・マジック>」
その砂の槍に対して充希が解呪の魔法をかけ砂の槍を霧散させた。
「これはプレゼントだよ。【スラッシュカード】」
手から放たれたカードがエリモス・ケルベロスに突き刺さる。
「【リリース】」
充希のその言葉と共に突き刺さったカードが爆ぜる。アーツ【リリース】は《魔力撃》の応用技で魔力を任意のタイミングで解放し衝撃波をぶつけるアーツである。
細かい攻撃の連携を続ける岬たち、それに対して堅実な攻撃を仕掛けるエリモス・ケルベロス。一進一退の攻防となっていたが
「みんな~美穂ッちの準備終わったよ」
そんな声が戦場に響くと後方に控えていた美穂は棍を構えると詠唱を始める
『我、求、大海の力…たゆたう放流…広大なりしその力をもって、我が敵を飲み込むことを希う』
魔法は、詠唱を必要せず魔法名だけでも発動はする。だが、詠唱をすることでより上位魔法を使用することが可能となる。そして美穂が使用しようとしている魔法は…
「<タイダルウェーブ>」
その力ある言葉と共に、砂漠で起きるはずのことのない現象。津波が発生し、エリモス・ケルベロスを飲み込もうと海流の顎はその口を大きくあけ襲い掛かる。
「「「が、ガオッ」」」
二重の<サンド・カーテン>で、身を守ろうとするが…
「やらせないよ<ディスペル・マジック>」
「それは否定させていただきます。≪ネガティブ≫」
佐江と充希が打ち消し、水の激流にエリモス・ケルベロスは呑まれていく。
「やったね。美穂ッち!」
一芽が思わず口にした言葉に
「あっ」
「あっ」
「あっ」
「あっ」
「あっ」
思わず全員の口から同じ言葉が漏れ、同時に嫌な予感がよぎり。そして、それは直ぐに現実となって現れる。
「えっ、アレてなにかなぼたんちゃん」
「一芽さんが、フラグを建てた結果ですね」
海流が消え、そこから離れた位置に、広く間をとった大型バスサイズの一つ頭の犬が三頭、戦闘態勢をとっているのであった。
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