【五階層十一区画】吹上浜ダンジョン その2
【五階層十一区画】吹上浜ダンジョン その2
砂漠系のダンジョンでの最大の障害は、暑さといっていい。それに対応しては、クーラーポーションを飲むことで暑さは緩和される。ただし、砂ぼこりなどに悩む探索者は多い。
「ウォーターシェルて便利ですね」
「そうだね。こういう使い方もあるんだね」
「ぶい…」
岬たちイレギュラーズの女性陣は、ウォーターシェルで全身を包むことで砂ぼこりを防いで歩いていた。
五階層ボスまでの道中に出てくるのは、サンド・ワームという大型犬サイズのミミズである。ドロップには、砂袋と牙であり、砂袋の中にある砂は高品質の研磨剤やガラスの材料に使われたり牙は武器の材料などに使用される。
その、サンド・ワームは、あっさりと切り伏せられていた。
レベル差というのもあるが、低階層のサンド・ワームの皮膚は、斬撃に弱く。刃物の耐久力は、最弱のモンスター、プヨン並みと言われている。それでも、地中から襲ってくるので、厄介とはいえるが、音と足元の振動に気を、付けていれば奇襲も難なく回避できるうえに、低階層なら精度も低い為に、足元から飛び出すということは、ほぼ皆無であり、そうなると攻撃は、少し離れた位置から飛び掛かってくるしかないために、それさえわかっていればレベル15くらいまでなら美味しいモンスターともいえなくないが、既に20を超えている面々にとっては単純作業でしかない。
砂漠系のダンジョンの特徴は、それぞれの区切りまでが、はっきりと分かれているケースが、大半で五階層にあたる部分にある大門までは、ただひたすらにモンスターの襲撃と日差しに注意して進む。という行程ということで、経験値的な旨味は、そこそこあるので、ちょっとした修行になるが、それ以外では、あまりいきたくないダンジョンとされている。
「単調だねぇ~」
「そうですね。攻撃速度はそこまでありませんし」
「こっちに気が付くと直ぐに襲ってくるし」
「みみずは…食べ物ドロップしない……解体術……ほしい……そしたら、食材に」
「み、美穂ッち、ミミズ食べるの?」
「……愛読書に書いてあった……コラーゲンの塊…」
二級ダンジョンとはいえ、レベル20越えのフルパーティー(6人編成のパーティーの呼称)にとっては5階層レベルのモンスターは脅威になることもなくあっさりと五階層のボスエリアに到着した。
「うわぁ、太くて大きいネ。大きさも馬並み?」
「なんか先っぽから、でてて気持ち悪い」
「ヌルヌルのテカテカ…」
ジャイアント・サンド・ワームを見た、充希、ぼたん、美穂はそれぞれに感想を述べる。
「じゃー、あーしがやるねぇ~【ワービースト・タイプ:ウルフ】」
一芽の新アーツ【ワーピスト】は、5つのタイプへと変身することができるアーツである。もともと《ビースト》は複数の動物の力を発揮するスキルであるが、真骨頂の【キメラスタイル】は、負担が大きい為にあまり使うことができない。だが、【ワーピスト】は負担は少ない。もっとも、身体能力の強化は【キメラスタイル】に劣ると一長一短のアーツである。
「いっくよ~!」
地面をけると砂が激しく吹き上がるも、一芽に気にすることなく一気に加速し、そのままスライディング・キックの要領で、鎌首を持ち上げていたジャイアント・サンド・ワームの腹部に一撃をいれる。だが、一芽は止まらず、地面を手で突きバク転し、その勢いのまま更に、一撃を見舞うと逆立ちの姿勢から全身のバネを利用して、連続で蹴り上げ、ジャイアント・サンド・ワームを徐々に宙に浮かせていく。
「じゃー僕もやるかな【スラッシュカード】」
充希の投げたカードの鋭さも以前と比べて、数段と鋭くなっている。サブクラスの暗殺者の《暗器》による補正が攻撃力をあげているのである。
「私も、いかせていただきます」
岬も高く跳躍し、落下しながらジャイアント・サンド・ワームを華麗に切り刻む。
男性陣の異様な攻撃能力に隠れがちな女性陣だが、一般的にいえば、このレベルの攻撃能力ならパーティーのエースアタッカーとなる。この戦闘能力の高さは、異常なのだが…残念なことにこの場にそのことを指摘できる人間はいない。
なにはともあれ、あっさりと五階層を突破するのであった。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。
某ゲームで、うっかりクーラードリンクを忘れは、よくやる事ですよね。




