【四階層八区画】金山蔵ダンジョン 四
今回は中ボス戦となります。
【四階層八区画】金山蔵ダンジョン 四
トラブルはあったが、それ以外は苦戦らしい苦戦もなく錬治たちは十階層までたどり着いていた。
雑魚モンスターとの戦いは特に、源治とは相性が良かった。源治の攻撃には貫通力に優れたスキル
《カスタマイズ》【ドリル】【チェーンハンマー】【ハンマー】【パイルバンカー】が存在し、これらはゴーレム系に対して特効だったのである。また、錬治のサブクラスの処刑人によりスライム系の魔物とは相性がよかった。コアに攻撃をうけると、ダメージ増加するスライムに《弱点特効》の効果が合わさり錬治にはいつの間に《スライムキラー》というスキルが生えていた。
そして、一番の理不尽だったのは光太郎。光太郎がほぼ一撃で倒していった。ゴーレムもスライムも関係なくほぼ一撃のもとに倒していた。
特化クラスの攻撃力トップ3。その攻撃力は未だに成長中である。
「ところで、あれで、よかったのかな?」
「ケケケ、いいんだよ。どうせ、いつかは広がるんだし、まぁ顔は隠すから問題ないだろ」
「……先生に胃薬を用意が必要だな」
途中のトラブルのことを思い出しつつも、それはもう解決として十階層のボス部屋へと入った。
「ここのボスて」
「ロックトロルだな」
トロル。もしくはトロール。3mの緑色の肥満体の巨人で、何でも、それこそ泥でも食べる悪食であり、最大の特徴は再生能力をもち、巨体に見合っただけの力ももちろんある。
ロックトロルは岩で全身を覆われているトロルである。
「姿が見えないけど」
「……この岩、怪しいな」
「ケケケ、ところでなんで同じ岩が3つもあるかねぇ…確か、ここは一体だけだよな」
「斬ればわかるだろ」
錬治が岩を斬ろうとすると岩から手が生え振り下ろしてきた。
「ちょっ、これってレアケース!?」
美千代は他にも動き出した岩を見回す。レアケースはユニークとは異なり通常よりもモンスターの数が多いことや武器の種類が違うなどユニークというわけではないが、基本と異なるボスが出現する希な状況をさす。
「ケケケ、誰が一番早く倒すか競争といこうじゃないカカッ」
光太郎は楽しそうに笑い、足を止めてロックトロルと打ち合いを始めた。
「……新技を試すとしよう《カスタマイズ》【フット:キャタピラ】」
源治はキャタピラで地面を、滑るように攻撃を躱す。
「俺もやるかな」
暴れるロックトロルの拳の弾幕を躱しながら構えをとる。
この戦いを見ていた六角美千代は、ゴールデンウイーク明けに担任の大島右近と同席者として菊池麻美に進路指導室にて次のように語った。
「やっぱり最初は、派手に打ち合いをしている光太郎君に注目していましたね。だって、おかしいでしょ? ロックトロルの一撃って、普通の探検者なら一発で昏倒するか、下手したら即死ですよね。それを何発も受けて平気どころか、ゆっくり近づいて行ったかと思ったら、斧一振りで両足切断しちゃったんですよ? おかしいでしょ? まぁ、タフなロックトロルだからそれくらいじゃ戦意を失わなくて足が無くなっても腕振り回していましたね。あっ、ジュース無くなったんでお代わりください」
グラスに無言で大島がオレンジジュースを注ぐと一口つけて話始める。
「ふぅ、まぁ、光太郎君がそんな感じで暴れていたら。今度は、源治君は源治君で、キャタピラで駆け回りながら、ハンマーでロックトロルを両手両足を、集中的に狙って攻撃してたんですよね。しかも、ハンマーで振り下ろしてきた拳を、撃ち返したりとかしてたし。そんな感じで、ハンマーで叩いてロックトロルの表層の岩を少しずつ砕いていくようにして殴りつけてましたね。
錬治君もあれですね振り下ろされた腕を駆け昇った。と、思ったら、ロックトロルの岩の隙間から血が噴き出たんですよ。たぶん、斬ったとは、思うんですけど、早くて見えませんでした」
その報告を聞いた菊池先生は嘘ですよね? という顔で大島の顔を見るが天井を見上げながら遠い目をしている大島をみて心中を察する。
「まさか、ロックトロルを一方的にレベル20前半で蹂躙するとかは、まぁ、普通におかしいとは思いますよ。私だって、話聞くだけなら嘘だといいますよ。あの非常識の三人組の攻撃とか頭おかしいと思います。光太郎君は斧で殴りつけたら胸部まで吹き飛ばすし、源治君は大穴開けるし、錬治君は首を刎ねて落とすとか、本当に何考えてるんだか…おかげで素材の回収が大変だったんですよ」
ロックトロルの外殻は、かなり硬く並みの攻撃では、びくともしない。それを破壊するという三人の攻撃の強さは、一線級の実力が既に備わってるのでは思うには十分な材料だった。
「まぁ、そんなでたらめな戦闘動画、先生いくらで買ってくれます?」
六角美千代。金儲けには、抜け目のない少女である。
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