【四階層七区域】金山蔵ダンジョン 三
一般的な探検者との戦いの結果はいかに…
【四階層七区域】金山蔵ダンジョン 三
光太郎は前に出て拳を構える。
「おいおい、一人じゃなくて全員でこいよ」
「なめてんのかガキども」
がなり立てる二人組の一人に光太郎は掴みかかる。
「はぁ!?」
「ちょっ」
慌てる二組にかまわずに、手近にいた男の右手を掴んだかと思うと、力任せに振り回しもう一人に思いきり叩きつける。
「ぐげぇ」
「おら! もういっちょ!」
普通に考えて人ひとりを掴んで振り回すなどは、不可能なことではあるが、その理不尽さを可能にしているのは、光太郎のスキル《アンフェア》ではなく、純粋な膂力。それだけでこのような荒業をやっている。
そもそも光太郎は武術を教わった経験はない。ただ、見ただけで何となく理解できる。そして、体を数度動かし違和感をけす。天性の素質という言葉ですら霞むほどの理不尽な存在なのである。
人を鈍器として扱うなど、倫理としてどうかと聞かれても、そもそも、そんなことができる人などそうそういるわけでもない。むろん、できる人はいるだろうが、躊躇なく人を振り回して攻撃など普通ならやらない。
しかし、光太郎は躊躇しないどころか、平然と地面に叩きつけたり、もう一人の防具の硬いところめがけて何度も殴りつける。
「オラオラオラオラァァァァ!」
立会人をしていた剛三も目が点になりながら唖然としている。そんな最中
「錬治君!」
突如として、美千代が声をあげると同時に錬治は、唖然としている剛三へと駆け出し刀を鞘に納めたまま剛三の顔面を狙うかのように突きを放つ。その突きになんとか反応できたが、よけきれないと思いしりもちをついてしまった。
「ぬぉっ!? クソガキ何しやがる!」
「あのなぁ、おっさんよく見てくれよ」
しりもちをつきながらも、悪態をつく剛三に対して、自分の切っ先を見るように促す。そこにあるのは岩に擬態したスライム。正確にいうならコアを破壊されたために肉体を維持できなくなったスライムの残骸である。
「こいつは…カモフラージュ・スライムか」
カモフラージュ・スライムは、スライム系のモンスターの中でも、特に擬態能力に優れているモンスターの為にその感知は非常に難しい。低階層でも不意打ちをされればただでは済まない程のモンスターである。
「……ところでさっきからコソコソと撮影している二人組…姿を見せろ、見せなければ敵対者として、排除する」
「えっと、源治君それなに?」
「《カスタマイズ》【ヘッドギア:サーチアイ】だが?」
バイザー型の《カスタマイズ》【ヘッドギア:サーチアイ】。探知能力をもち、半径20m以内の地形データと生物の位置情報を視覚にデータとして転送される装備である。範囲が狭いのと自分の視界を塞がれるので使い道には困るが、待機状態のときに警戒には便利な能力である。
「す、すみません。わた、わた、わた、わ、たわわ」
「ちょっ、秋ちゃんおちついて、すみません。オレ達はDムーブチャンネルの『エクスプローラー通信局』のもので」
「……錬治どうする?」
「そうだな。今回は俺がリーダーだし、話は聞くか」
話し合いの流れになり、少し脇道へと入り奥にエクスプローラー通信の二人と剛三と取り巻き二人が寝かされ、錬治たちは本道にもとれる位置にたった。なお、取り巻き二人は派手に殴られ続けていたがなぜかそれほど大きなダメージを受けてはいなかったのである。
「ケケケ、ちゃんと手加減したぜ。蹂躙なんてフェアじゃねぇからな」
「それで…」
「私、夏本秋奈といいましてエクスプローラー通信局で、記者兼アナウンサーをしています。今回は狂鬼の剛三さんの取材でして…」
エクスプローラー通信局は主にマイナーな探検者を取材したり探検者同士のバトル動画を配信しているチャンネルであり、そんな中でも二級限定の探検者の動画はコアなファンがあることからそれを中心に手広くしている団体である。今回は一級スキル《バーサーカーソウル》をもつ狂鬼の剛三を取材にきていたとの事。
剛三は横柄で傲慢な口調ではあるが、根はそこまでの悪人というわけでなく、若くて無茶をする探検者に声をかけて、深く潜るのを止めていただけではある。ただ、手段が滅茶苦茶ではあったが、それでも大けがなどをさせることはなく、普段なら実力の違いを判らせていただけだったのだが、今回は、相手が悪すぎた。剛三たちのパーティーは低くはないが、あくまでも、平均レベルの探検者なのである。ステータス評価も高くてB評価で平均値はD+評価である。
ちなみに、この評価は大きな探検者協会にある大型の測定器で、測定することが可能になっている。あくまでも目安であり、最高評価のA+評価をもつものはいない。また、数値誤差があるために平均値の評価基準はF<E<D<D+<C-<C<C+<B-<B<B+<A-<A<A+となっておりプラスとマイナスの基準は上下の数字の平均値を基準点におかれている。
そして、この評価基準は探検者の間では、レベル以上に重要視されており、評価基準が2ランクも違えばレベルの10の違いすら話にならないとさえ言われている。
「あぁ…確かに俺らって見た目、ガキだもんな」
「ケケケ、確かにこいつはアンフェアだが、こいつだけはどうしようもねぇ」
「……知名度を上げる必要があるが……」
「うーん、こういうの絶対、彼の領分でしょ…けど、帰ったらクラン立ちあげちゃう?」
クラン。それは探検者たちの集まりをさす。企業などから素材の調達などを引き受けたりする個人事業主である。
「さてと、落とし前だけど…」
「ケケケ、そうだな…」
源治の提案は秋奈たちには意外ではあったが承諾するしかない内容だった。
ご意見・ご感想があればお聞かせください。
簡単な能力値を試算してはいます。




