【二階層十一区画】時代の光と闇
毎週水曜日の12時に更新していきます。
今回はいろいろな探検者のお話しになります。
【二階層十一区画】時代の明暗
探検者カードにより、数値やスキルなどが示されることによる明確な格差も生まれた。
といってもスキルの等級による格差は少ない。むしろ三級スキルを重視する企業もあるいくらいである。
今川義也の場合――
年齢は22歳と、若くはあるが、既に大手食料品メーカーの食肉調達の班長として同期よりも一歩はやく昇進している出世頭といえる。
それというのもスキルというが大きい。といってもギフトスキルは《ナイフ》《解体》《隠れ身》と三等級スキルと平凡なものではあったが構成自体は悪くもなく元々小柄でもあったのでナイフによる奇襲などを得意としていた。
「班長、解体お願いします」
「おう」
《解体》系スキルは動物系のモンスターに止めを刺すとドロップの品質や数量や種類が増える効果もあり義也の班はトップの成績を収めていた。
北条雅美の場合――
「今日の鑑定分おねがいしますね」
「わかりました」
北条雅美22歳。現在は薬品メーカーにインターンシップとして、週に数回の鑑定業務に携わっているが、既にいくつかの会社から内定を受けている。それというのも《鑑定》のスキルをもっているからである。二級スキルに分類されるが鑑定持ちは引く手も数多。どの企業も欲しい人材なのである。
なにせ鑑定スキルはレベルが高くなれば個人のステータスの細かい数値もわかるし未知の素材も判別できるしダンジョン産アイテムやダンジョン産素材で作成されたアイテムの効果も確認できると現代において企業の生命線となるスキルなのである。
立花真二の場合――
一流大学を卒業し、一流商社に就職し順調に出世し50代で専務までになった。そして、五年前に突如、退職し周りを驚かせた。
そんな彼が今何をしているのかといえば、地方の田舎へと引っ越しのんびりと田畑を耕し緩やかな日常を過ごしている。それというのもギフトスキルが《農業》と《植物育成》だったからである。そんな彼に妻である、なつみは驚きはしたが、子どもも独り立ちしたことからおっとりとした日々を過ごしている。
「よう、真二さん調子はどうだい」
「おぉ、和孝さん。ぼちぼちだねぇ」
そういいながらも、真二は今の生活は気に入っていた。競争競争の人生。それが今はのんびりとした時間を過ごせるようなり十分に満ち足りていた。
「今度、三級だんじょんに遠征にいくけどどうだい?」
「あぁ、ご一緒させてもらうよ」
三級ダンジョンは中高年にとってはゴルフ感覚でたのしまれているのであった。
松倉勝利の場合――
探検者協会の談話室の一角にて怒号が響き渡る。
「やってられるか!」
「あぁん、なんだと」
「てめぇとはもうやってられねぇ」
「なんだと! 今まで俺がいたから、お前らは、ここまでこれたんだろうが! 俺のSRスキル《シャイニング》のおかげだろう」
「そのお前の強引さで、俺以外の連中は入院中だよ!」
「よえぇお前らが悪いんだよ足引っ張りやがって」
松倉勝利は荒れに荒れていた。年齢は26歳。と若手から中堅に差し掛かる年齢ではあるが伸び悩んでいた。三級ダンジョンや二級ダンジョンの中層前半までなら問題なく進めるだけの力はあるが中層後半となれば力押しでは難しくなりそれが原因で未だに二級限定探求者どまりなのである。
「とりあえずオレはチーム抜ける。他の連中もな」
「はぁ? ふざけんな!」
「ふざけてねぇよ。天草なんて今回のケガで引退だぞ! まぁ、あいつは器用だしいろいろと手広くできるから就職先はあるけど…とりあえずもうやってられないからじゃあな」
「おい…くそが!」
一級スキルがあろうとも、必ずしも成功者になれとるは限らない。日本のトップランカー100人中特級・一級スキルの保有者は2割程度しかいないのだから。
ご意見・ご感想があればお聞かせください。
次回からは第三章となりダンジョンへ行きます。




