表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だんだん  作者: 武上渓
12/17

だんだん11話




ー11話



「今、ここ空港第2ビルの1階北ウエイティングエリアです」

白根はフロアガイドブックの案内図に太い人差し指を置いた。

「4階の見学デッキに行きます。ここから空港第2ビルを出て、滑走路から海に脱出します。ゴムボートで潜水艦朝潮とコンタクトします」

小林は案内図から目を上げて、白根を見た。

「質問が有りますか?」

「白根さんのケツにクッ着いていれば事は足りますか?」

白根は笑った。

「小林さん。シンガーが出来なくなったら、ウチで働きませんか?即日採用します」

「ここを生きて出られたら考えます」

「小林さんなら、いつでも待ってます……では」

白根は腕時計を見た。

「作戦名うるさい方のダイスケはん。開始30秒前………15秒前………今!」

白根はコルトを背広の下から抜いて、走り始めた。小林は頭を下げて白根のケツに両手を添えて走る。視線もケツだ。

どこをどう走っているかも判らない。耳許でクマンバチのような「ブン」と言う音がする。弾けて何かが砕ける音。白根はハンズフリーマイクに指示を出し続けながら走る。小林にも判るように位置を入れてくれる。

「横山っラインが上がってないぞ!177が堕ちてくる!言い訳せずに上げろっ!」

初めて白根が止まった。

「司老。横山が頭を押さえられてる。そっちから狙撃できないか?そうか……横山、奴らの後ろに電磁パルス地雷を置いて有るそうだ。防御ネットを被れ。15秒前……今!」

再び白根は走り始めた。

だんだん回りをかすめる音が多くなる。爆発音もする。

「連中焦って来たぞ!もう見学デッキに出るぞ!援護弾幕厚く頼むぞ」

外に出た。顔を上げられないが、見学デッキだろう。

「小林さん!」

白根が振り返った。破片が当たったんだろう、顔に薄く血の筋が有る。

「時間が無い。177便の突入が30秒早まった。上からネットのブランコが来ます。チャンスは1度だけ。二人で飛び乗ります」

やるしかない。

「来たっ!」

ヘリコプターの爆音が降りてくる。顔を上げると目の前に、荷揚げ用のネットが下がって来た。夢中で走り中に飛び込む。

行き過ぎた。反対側に上半身が出てしまった。

白根が引っ張る。もう下に見学デッキがミルミル遠ざかって行く。

「うんっ!」

と声がして、体が引き揚げられた。

しかし、勢い余った白根が外に落ちる。

右手がネットを辛うじてつかんだ。

「このまま、行けますので、何もしないで。二人とも落ちますから」

白根をぶら下げたまま、滑走路を越えて海に出た。

ゴムボートが見える。

ヘリコプターはホバリングして海面ギリギリまでネットを降ろす。

白根は降りきる前に海に飛び込んだ。

ゴムボートからウエットスーツの男達がバラバラと海に入って白根を捕まえる。

小林も海に飛び込んだ。

いったん沈んで浮き上がると、空港第2ビルに177便が突っ込む所だった。

爆風がここまで来た。


潜水艦朝潮で、海自の作業着を借り艦長室に入れて貰った。

「洗濯乾燥機を当艦は装備しております。1時間20分でホカホカになります」

艦長は近所にいそうなおじさんだった。

「白根さんは?」

「乗船せず。任務に戻られました。成田空港を壊したクソ野郎どもを刑務所にぶち込んでやるそうです」

「旅客機がビルに飛び込むのを見ました」

艦長はしばらく小林を見つめた。

「正しいと思う事を貫くのは尊い。しかし、一番大切なのは人の命。そう思わない人々は小林さんを止めるために、あっけなく簡単に人を殺せる。私は自衛官です。敵を知らなければ日本を守れない。小林さんは酷い目に逢っている人々に焦りすぎて、敵を知ろうとしなかった。犠牲のない世界……手に入れて聴きました。まぶしいくらいに惹かれる歌でした。間違ってはいない。退かないで下さい。次は戦略をもって臨むべきでしょう。応援します。ただし、春菜さんとハルトモでやりましょう。お釈迦様は手前から一人づつ救って行くそうです。そして全ての人を最後の一人まで救うそうです。人種も宗教も極悪人も善人も性別も性格も性癖も性同一性障害も関係なくね。地獄に落とされたキリスト教徒もね」

「僕は。お釈迦様にはなれません。でもやれる事はたくさん有る。艦長さん、お話しをして頂いて嬉しかったです。たくさんの人が死んだ。僕は生き残った。まだ使命は終わってないんでしょう。やるしかない。春菜と一緒に」

艦長は小林の肩を叩いて笑った。

「潜水艦朝潮はハルトモを応援します」

艦長はロッカーからTシャツを取り出した。背中にその文字がプリントされていた。

「持ってて下さい。辛い時握りしめて潜水艦朝潮がついてる事を思い出して下さい」

「はい。すいません泣き虫なんです」

小林は生き残り、ハルトモのセンターに復帰した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ