だんだん9話
ー9話
春菜は、横浜アリーナに池上商店街を出現させた。
ファンは、池上駅行きのキップを渡され、チケットのQRコードをかざしてゲートを入る。
ゲートは京王井の頭線の電車のドアだ。
開くと池上駅のホーム。傷も錆びも汚れも落書きもそのまま有る。
自動改札をくぐるとドルフィンホテルに、池上商店街のゲート。席はなくファンは当然のようにカフェハッシーくんに向かう。
スタッフが演じる客の輪の中で、有名な小林智昭トリビュートシンガーが歌っている。
横浜アリーナの池上商店街の街路を全て、観客が埋めた。
すると、トリビュートシンガーの床が浮き始める。
「春菜。春菜…」
トリヴュートシンガーの呼び掛けに観客が手拍子と共に応える。
すると、架空の空に花火が開く。
その中をハッシーくんが飛んで来る。背中に春菜を見つけて、観客が爆発する。
架空の池上商店街が波打つ。
空中のステージに春菜が降り立つ。
「ようこそ~。マキシマムザ近藤ワールド池上商店街に~」
ハルトモハーモニーが歌われる。
許せない行き違いも
わかり合えない歯がゆさも
二人とマユで行きたいカフェも
公園も 見たい夕陽も
辛いけれど
大切なのはあなたを大好きな事
大切なのは君を大好きな事
あきらめない
あきらめない
二人で歩いて行こう
同じ歌を歌いながら
同じ空を眺めながら
ハーモニー足音さえも
ハーモニー笑い声さえも
ハーモニー指差す花も
春智ハーモニー
会えない夜の闇も
忘れられた悲しさも
二人とマユで過ごしたい午後も
目覚めたい 夜明けも
涙するけど
大切なのはあなたを大好き事
大切なのは君を大好きな事
あきらめない
あきらめない
二人で歩いて行こう
同じ歌を歌いながら
同じステージの上
ハーモニー足音さえも
ハーモニー笑い声さえも
ハーモニー指差す花も
春智ハーモニー
春智真由ハーモニー
小林は成田空港のロビーで、生中継のモニターを見ていた。
女子大生風の二人が立ち止まって見上げた。
「なんでさー。小林右翼になっちゃたのー?この歌に小林居ないの無しでしょ?」
「春菜、懐デカイじゃん。行ってらっしゃい!戻る場所はここに有るよって。これ見て小林、轟沈だよ」
「そだねー。ここまで支えてもらったら、男泣きだよ」
「あーあ。ここまで出来る彼が欲しい」
「やったげれば?翔太の浮気癖も治るんじゃない?」
「それ言う?お互い様だよね?」
二人はしばらく黙った。
「同じ事考えてる?」
「多分」
「だったら急ご!まだキャンセルしてもお金戻ってくる」
二人は走り去った。
残された小林は、当然男泣きで、轟沈していた。




