12.昼懐石
「紹介?する必要はない。」
「俺は、ヤン・ガニラメール、君は?
あ、かたっくるしいの苦手なんだよなー。してほしいなら、するけど。」
「いらん。名前を呼ばせる気はない。」
「ふぅ~ん、でも俺知ってんよ。はやーく着いたおかげで色々聞けたし。
み・つ・き
樽で水売ってくれたり、オアシスぐらいの水ひとりで作ったり。
で、いくらで売ってくれんの??」
「売る気はない。名前を呼ぶな。」
わたしは、ラルさんの後ろに引っ付いてる感じになっている。
背で守られてる感じがして、顔がにやけちゃう。
「ふぅ~ん、隠せる訳でもなし、商売せんのやったら、変な事件に巻き込ませるよーなもんだぞ。変な独占欲出さんと、それぐらいしたっても、いんじゃない?
な、みつき。
それに、困ってる人ほっとくのは、ひどいんじゃないか?」
「…ラルさん、私、大量にとかだと、困るけど、少しずつなら大丈夫ですよ??」
「…美月、
お前、美月の優しさにつけこむとは、いい度胸だな。」
「わー。みつき、ありがとう!!
ついでに、俺とつきあってみない??
めっちゃタイプなんだよね、みつき。」
「えぇ、ごめんなさい。」
「おい、パリス、こいつは、帰るらしい。見送ってやれ。」
「…まだ食ってすらないんだけど?
なんなん、手、捕まれとんだけやろ、まだ片思いてことじゃん。俺とも遊んでよ。」
「…手??」
捕まれてるだけだとダメなの??…握り返せってこと??
骨ばった温かくて大きな手に繋がれて、力が抜けるんだけど…
痛くはないけど、離れないっていう、絶妙な力加減。
どどうしたら??
どきどきどきどき。
女は度胸っ!!えいっ
捕まれてる左手で、ラルさんの右手をぎゅぅっと、握る。
あ、結構力入っちゃった。
ばっとラルさんがこっちを向いたのがわかる。
ん?ラルさんの耳がどんどん赤くなっていく。え???
赤くなるのは、私だけだと思ってたのに。
なんか…かわいい!!
ラルさんをいじめたい気持ちになっちゃって、
繋いだ手をしたに下げ、背伸びをしてほっぺに
ちゅっ
ラルさんが目を見開いてる。手と私の顔を交互に見て、
固まってる。
「ちょ、みつき、それが何を意味しとるかしってんの??
あー、やだこれ、まじ?!何も今せんくてもよくない?
あーあ。もーえーわ。ミルドランドさん、ちょお話つめようや。みつき貰えんのなら、水だけは、がっぽり貰って帰んわ。」
硬直から抜け出したラルさんは、無言で私を抱え、
部屋まで速歩きで(むしろ走ってる)戻り
ガチャッ
鍵をかけた。