第六話 ~空空スカイ~
※この話は前作「あの夜にふたり」の四季と光につながっています。
「もーなんだよ~・・いきなり切れちゃったよ。」
でもびっくりした、去年のやつを見てたんだな~・・。
お兄ちゃん大丈夫かなぁ、一応頑張ってみるとは言ってたけど・・。
でもやっぱり、心配だなぁ・・。
四季は、少し焦っていた。
兄、光の家で、兄の心配をする。
定期的に会っているというものの、実は少しだけ顔を見るだけ。
あまり話などはしてない。
今回は、ゆっくり話せる時間も取ってくれたんだけど・・・
今日になったから、大変だろうなぁ・・。
でも、今回、流星群を見るためにとってくれたお休みは、そのまま残してくれるそうだし。
その日になったら、ゆっくり話せる。
その時に言ってあげなきゃ。
「私がいるよっ・・・てね。」
最近、元気がないらしいから。
残念なことに、兄は人とコミュニケーション取るのが苦手だから・・
支えてあげられるのは、私だけだしね。
・・・・また、いつものように笑ってくれてほしいから。
親が亡くなった時、私はまだ小さかった。
正直、親に全く覚えがない。
楽しかった記憶とか、悲しかった記憶とか。
ただ残ってるのは、兄の記憶だけ。
祖父母に引き取られた時までは、一緒にいた。
その時間は、祖父母が早く亡くなったから短かかったけど。
でも、一分一秒。忘れたことなんてない。
兄はいつも優しかった・・喧嘩もしたけど。
兄が私を育ててくれた、そう思うんだ。
そこからは別に親戚に引き取られて、離れ離れになって
連絡も、途切れ途切れだったけど・・
私の唯一の家族だから。
それから、ずっと兄の連絡を待った。
どこにでもあるような平凡な部屋。
「なんにも特徴ないな~・・」
カーテンが黒ってのがなぁ・・
「そういうところから、直さないとね・・ということで、買ってきました!じゃーん!」
一人でやっていて、少し恥ずかしいけど。
なんだか、すごく楽しい。
「緑のカーテン。これの方が絶対いいよね~」
さっそく、カーテンを付け替える作業。
手馴れた手つきで、カーテンを外す。
「これ・・再利用できそうな布だな~・・」
それでも、私はあんまり裁縫得意じゃないんだけど・・。
八重咲薔薇さんなら、うまかったんだけどな・・。
八重咲というのは、今お世話になっている親代わりの家。
だから、私の苗字も八重咲。本当の苗字は・・知らない。お兄ちゃんも教えてくれないし。
「・・・でも、もういないし・・・。」
八重咲薔薇は、八重咲家の娘。大学生の優しい人。
私が、八重咲家に来た時は、快く歓迎してくれた。
新しいお姉ちゃんが出来た気分。
裁縫もうまいし・・頭もいいし・・綺麗だし・・ほぼ完璧な人だった。
でも、先月。亡くなったのだ。
自殺だったらしい。
「はぁ・・何が原因だったんだろうなぁ・・」
あぁ、だめだ。考えたら、また悲しくなってきちゃうし。
もう、考えないようにしたんだった。
前を向かなきゃねっ、私がいつまでも落ち込んでどうするっ!
「さーてと、付けよう!」
緑のカーテンをつけ始める。
気づけば、時間が多く過ぎていた。
「できたっ!」
随分と明るくなったきがする。やっぱり、気分も変わるよね。
ライトグリーンがよく映えるには、太陽が出てる時じゃないとだけど。
「今何時だ・・?うげっ、もう1時間半もたったの!?」
でもまぁ、まだ時間あるなぁ・・
「あっ、そうだ。夕飯後なんだし、夕飯作ってあげよっと。」
食材はなさそうだし、買ってこなきゃ・・。
それから、食材を買い、夕飯を作る。
その時、すでに空も暗くなり、流星群が見える時間がせまる。
「まだかなぁ・・」
夕飯を机に置き、向かい合わせの椅子を眺める。
「今から行ったら、ギリギリかな・・・っと、電話だ!」
携帯の着信音が鳴る。
「もしもし!」
「あ、四季か?今、急いでそっちに向かってるから、外で待っててくれないか?」
「うん!わかった。」
よかった、これならまだ間に合う・・はず。
仕度をして、外に出る。
少しすると、バイクが見えた。
ん・・今思えば、バイクの二人乗りするんだよね・・?
私って、歳的にアウトじゃないのかなぁ・・?
バレなければいっか・・!
「ごめん!待たせた!」
「ううん、いいよ。早く行こ!」
バイクの後ろに乗るのは初めてじゃない。
過去に一回、兄がバイクを乗れるようになった時に乗せてもらった。
その時は、少しだけだったけど。
公道はさすがにまずい・・のかな?よくわかんないや。
「お兄ちゃん、久しぶり。」
「お・・おう。そうだな。」
昨日から、こっちにきてるけど兄は家に帰ってくるのが遅くて
会ってなかった。
風が心地よくなってきた。
「ねぇ、見る場所知ってるの!?」
「あぁ、四季が来る前に四季が言ってたところだろ?」
「うん・・あとさ。」
「なに?」
「休みの日・・休みの日もさ!夜になったら、今から行く丘の上で星みない?」
「星が見れればな・・いや、行ってあげるよ。」
「私、いろいろ話すことがあるんだ!お兄ちゃんもあるでしょ?」
「・・・あぁ。・・・でも、四季の話を聞きたい!」
「うん、寝させないもんね~!」
「・・・寝ないのは慣れてるから、俺は大丈夫だ。」
「そっか・・・ねぇ、お兄ちゃん。」
兄の体を、強く抱きしめる。
「なんだ?」
「・・・ううん。なんでもない。あ、もっと早くしないと、遅れちゃうよ!!」
「あぁ、そうだな!速度あげるぞ~!」
バイクの音が、高鳴る。速度が上がり、風が少し痛い。
「どんどんあげちゃえ~!」
その瞬間だった。
交差点の曲がり角から、トラックが走ってきた。
速度を出していて、全く気付かなかった。
そして・・衝突した。
それからは何も記憶がない。ただ自分の手には。
兄の体が抱かれていた。
強く・・強く、抱きしめた。




