第十七話 「告白」
学園祭は最高潮を迎えていた。
焼きとうもろこしの匂い。
提灯の灯り。
笑い声。
Eクラス屋台前には、信じられないほどの行列ができている。
《リアルタイム人気ランキング》
一位。
Eクラス焼きとうもろこし屋台。
「勝ったぁぁぁぁ!!」
柴崎が机を叩く。
「A組倒したぞ!!」
「炭火最強!!」
「とうもろこし革命成功!!」
改良班が泣いていた。
意味が分からない。
⸻
だが。
問題はそこじゃなかった。
「……おい九条」
柴崎が真っ赤な顔で近づいてくる。
「なんだ」
「お前、さっき変なこと言ったよな」
「告れってやつか」
「軽く言うな!!」
完全に動揺している。
すると。
少し離れた場所で。
松永も瀬名を見ながら固まっていた。
こっちも重症だった。
「……なんでEクラス恋愛イベント始まってんだ」
一ノ瀬が楽しそうに笑う。
「青春だね」
「この学園で一番縁遠い言葉だったのに」
⸻
その時。
中央広場ステージから声が響く。
《特別企画!》
《学園祭公開告白タイム!》
「最悪のイベント始まったぞ」
しかも。
《現在、恋愛感情上昇率上位者を自動選出します》
嫌な予感。
次の瞬間。
モニターへ名前が表示された。
《柴崎悠人》
「は?」
《松永大地》
「え」
Eクラス全員が吹いた。
「お前らじゃねぇか!!」
「国家公認告白タイムだ!!」
「待て待て待て待て!?」
柴崎がパニックになっていた。
⸻
白鷺優斗が壇上で微笑む。
「素晴らしいですね」
「やめろその顔!」
「本物の感情は、やはり数値を動かす」
そして。
「ぜひ、皆さんに見せてください」
公開処刑だった。
⸻
最初に押し出されたのは柴崎だった。
「うおおおお無理無理無理!!」
Eクラスが背中を押す。
「行けぇぇ!!」
「漁業班の未来を掴め!!」
「意味分かんねぇ!!」
だが。
朝霧ひまりは、ちゃんと待っていた。
少し緊張した顔で。
柴崎は数秒固まる。
そして。
「……俺」
声が震えていた。
「お前と話してる時、楽しい」
静かな空気。
「魚取ってる時も」
「飯食ってる時も」
「バカ騒ぎしてる時も」
顔真っ赤。
「だから、その……」
深呼吸。
「好きだ」
講堂が静まり返る。
朝霧は目を丸くしていた。
数秒後。
少し照れながら笑う。
「……うん」
小さく。
「私も、好き」
沈黙。
次の瞬間。
「うおおおおおおおお!!」
Eクラス大爆発。
「成功したぁぁぁ!!」
「漁業班カップル成立!!」
柴崎が崩れ落ちていた。
⸻
そして。
「次」
全員の視線が松永へ向く。
「……」
とうもろこし王、硬直。
「行けぇぇぇ!!」
「農業班ァァァ!!」
瀬名ゆかりは苦笑していた。
「松永くん?」
松永は数秒黙る。
そして。
「……お前と燻製作ってる時間、好きだ」
地味だった。
だが。
それが松永らしかった。
「あと」
真顔。
「お前、火加減うまい」
「褒め方!!」
Eクラスが吹き出す。
瀬名も笑っていた。
そして。
「……私も好きだよ」
静かな返事。
松永が固まった。
「……そうか」
「反応薄っ!?」
⸻
《リアルタイムLスコア更新》
モニターが輝く。
柴崎と朝霧。
松永と瀬名。
Lスコア急上昇。
観客席がざわめく。
「なんで……」
「Eクラスなのに……」
白鷺優斗は静かに見ていた。
そして。
「なるほど」
微笑む。
「恋愛感情は、“環境”で変わるのですね」
⸻
その時だった。
《Eクラス総合評価更新》
モニター数値が上昇していく。
《社会性》
《協調性》
《感情適応力》
全て上昇。
生徒会席がざわつく。
相沢が顔をしかめた。
「ありえないだろ……」
Eクラスが。
“恋愛不適合者”たちが。
本物の感情で評価を覆し始めていた。
⸻
その光景を見ながら。
一ノ瀬がぽつりと呟く。
「……いいな」
「何が」
「ちゃんと好きって言えるの」
小さな声。
俺は少し黙る。
すると。
一ノ瀬は少しだけ笑った。
「九条くんは?」
「……何がだ」
「好きな人、いる?」
心臓が少しだけ跳ねた。




