要編 9 男の訓示
シーン9 男の訓示
要と宗弥は国防大学を卒業した翌日、ある場所で守秘義務・承諾書にサインする。
そして、ある場所で行われるある人数の、特殊戦群の選抜訓練に参加した。その参加者の出身母体は国防大学、自衛隊工科学校、自衛隊一般公募、第一空挺部隊、特殊工科、情報収集部隊、スナイパー部隊からだった。
書類選抜された隊員に対して、深い身辺調査も行われた。訓練初日の朝、選抜された総員が整列していると、要と宗弥に話しかけて来た男が、暗がりから影のように姿を現した。そして総員の眼前に立つや、大きな声ではないからといって聞き取れ無いわけでもなく、低音が耳にしなだれ掛かってくるような、まとわりついてくるような、そんな異質な声で話しはじめた。
「我が国の自衛は、専守防衛が基本中の基本だ。その基本を最も重んじ、厳守しなければ、それを規範にしなければこの国の防衛は成立しない。しかし、世界の国々は政治力の反証として、軍事力を交渉カードの1つとして行使し、外交を行う。交渉相手国にわかりやすく、軍事派遣を示して見せる。そうすることで自国の平和、政治経済、自国民を固守する側面がある。昨今、世界の戦い方は対人戦に移行した。個人を傍聴し、監視し、あらゆる情報を探り、分析し、感知して有事に備えている。太古のような戦術だ。その精鋭部隊を我が国も創設することが決まった。この部隊に所属する者はこの国の影となり、盾となる事を鉄則とする」
居並ぶ総員を男は見回し、
「これから行われる訓練は、その部隊員の選抜だ。心得のない者は去ってもらう。覚悟のない者も去ってもらう。自己憐憫の管理が出来ない者はいらない。己の意思をこの訓練で示せ。以上だ。3分後にグランド集合」そう訓示した。