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要編  24 真っ黒な集団



   シーン24 真っ黒な集団



 富士子が乗る社用車が寺を出発した2分後、助手席に要を乗せたローバーは追尾を開始し、今、現在、中央高速で東京に向かっていた。



 運転席の宗弥が「無事に済んで、安心した」と言ってチラリと僕を見た。「そうか」と答える。前の車に合わせて車を減速させた宗弥が「富士子はいつも墓参りの後、気持ちが沈む事が多くてさ。心配してた。でも、今日はなんか楽しそうにしてて良かった。ありがとうな」ホッとしたような、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。



 富士子車に視線を戻して「宗弥、今日のタイミングしかなくて、すまなかった」と謝る。しかしながら富士子といると、余計な行動を僕は取ってしまう、そういう自分が面倒だ。



 運転席側・後部座席に座っているトーキーが「液体デイバイス基盤の発信器って、凄いですね。位置ブレが全く無いです。発信電波の強さも安定してます。ほかの電波影響を全く受けてない。この発信器、別格です」秘匿衛星と直で繋がっている自立型のPC画面を見ながら感心した。



 「最新だもんな、mapでもそうなのか?」と尋ねると、[送る。ターキー。イエーガー。こちらもすこぶるクリアです。あっ、全然関係ない話ですが1時間ほど前に、観光客が入店してきて改装中ですと伝えました]と入り、[了。送る。イエーガー。ターキー、富士子の信号を差別化したい。レッドからグリーンにカラー変更してくれ]と頼む。即答しないターキーに、技術的に難しいのかと思っていると、遅れて[了]と入った。



 そこに右隣りの車線を走り、4台後ろのミニから[送る。チャンス。イエーガー、尾行と思われる車両を発見。ローバーと同じ車線、2台後方。白のレクサス、ナンバーは品川33 0134]チャンスから入り、フロントボックスからグロッグ26を3丁取り出し、1丁を宗弥に、1丁をターキーに渡しながら[了。送る。イエーガー。ミニは富士子車を護衛車列で追尾。ローバーがレクサスに対応する。トーキー、レクサスに乗る人物の写真撮影、画像をターキーに送信。ターキー、身元を確認せよ。総員、緊急時の発砲を許可する。フレミングやれ]と指示した。



 前方の車との車間距離を空け始める宗弥。トーキーは座る場所を助手席側に変える。



 運転席側に向けた上半身を運転席と助手席の間に入れ、フロントボックスに押しつけた左足裏を踏ん張り、左膝を伸ばして身体を後部座席に大きく押し出し、右手で支えるグロッグに左手を添えて発砲体勢を整えた僕は[送る。イエーガー。ファイター、goだ]と発す。クソ、来やがったか。



 ファイターはミニを加速させ、1番左の車線と、ローバーが走るラインを縫いながら、次々と前の車を追い越して富士子車の後ろにつく。


 それを確認した宗弥は左車線に変更して減速しつつ、運転席側の後部こうぶ窓を開け始め、レクサスの左隣に付けると同時に全開にする。


 背後のトーキーがスマホで写真を撮り始め、レクサスの車内を僕は目視した。



 助手席にサラマンダーが乗っていた。赤い目をサラマンダーは僕に向け、ウィンクして見せる。



 グロッグを下ろして「宗弥、窓を閉てくれ」不機嫌をあらわにして言い、体勢を助手席に戻してグロッグに安全装置を掛け、フロントボックスに戻しながら[送る。イエーガー。総員。白のレクサス確認。ベータチームの車両と判明。ローバーは富士子車の監視に戻る]と通信した。宗弥は「クソ」と言いながら車の速度を上げ、ファイターの[クソ!]とののしる声が内耳モニターに入った。



 [ああ、クソ!まったく、クソだ!日本で発砲するところだった。クソったれ]僕もクソと連発する。トーキーに振り返って「サラマンダーの携帯番号を調べてくれないか」と頼んで、[送る。イエーガー。ファイター、先にmapに戻ってくれ]と入れ、ファイターから[了。3台もいらないしな]と入り、[送る。チャンス。イエーガー、棒倒しの様子を見に行ってもいいですか?]とチャンスに聞かれて、[ああ、行ってこい]とこたえた。



 車線変更したミニが、加速して走り去って行く。宗弥は富士子車の1台後ろにローバーを付ける。



 トーキーがパソコンを操りながら「チャンスの作戦、うまく行ってるんですか?」と聞く。「ああ。うまくやってる。いい感じだ」とこたえて、上着の内ポケットからスマホを取り出し、ローバーの音響機器と同期させて“ I'm A Slave 4 U “を選曲する。



 しばらく音楽だけの時が流れ、トーキーが「イエーガー、携帯番号わかりました」と言い、視線を前に向けたまま「サラマンダーにメッセージを頼む。本日は、国男氏の護衛任務を、ご了承りょうしょういただきました事、感謝致します。またチーム長、自ら、我々にご同伴して頂きまして、ありがとうございます。今後は、事前にご一報いただけたら幸いです。と送ってくれ」と伝えた。



 沈黙して聞いていた宗弥が「どうして、富士子の警護にベータチームも動いてる?」と僕に聞く。「わからない。何かあったら、向こうから連絡してくるだろう」と答えると、宗弥は顔をしかめた。



 その表情が気になって「どうした?」と聞く。「富士子を大人数で監視って、事が大きいって事だろう。心配になるよ」声をしぼませた宗弥に、「確かにそうだ。無神経な言い方をした。すまない」と謝り、視線を前に戻す。初日から僕はやらかした。思いやりに欠け、配慮が足りない。



  宗弥が要の横顔をチラリと見る。



 そして「本陣の技術局が例のビデオを解析して、割り出した場所を02:30(マルニーサンマル)に、ベータが強襲したらしい。だが、空振りで、カンマルがトラップで負傷したんだと」と言った。「本当か!本陣からそんな話は下りてきてないぞ!!お前、どうして知ってる?」と聞く。宗弥は「俺のネットワークは広い」と答えた。誰からが気になったが、それを聞いてどうなるとも思う。富士子車をぼんやりと見つめ「所在不明1、負傷1、怒りのサラマンダーだな」と呟いた。



 トーキーが「返信きました。“ 礼を言われるまでもない。たまたまだ。気にするな“ だそうです」とキーパットを打ちながら僕に伝え、続けて「撮影した写真を認証システムに掛けて、サラマンダーを調べているんですが、何にも出てこないんですよ。自衛隊出身者でもないようです。この人は誰なんだ⁈」最後は呟きにしては大きく、聞いているのだとしたら小さい声で言った。



 宗弥はバックミラー越しに、トーキーを見て「もう調べたのか!お前、俺たちも調べたんじゃないんだろうな!」と大きな声で言い、トーキーは「アルファーに転属が決まった時、調べさせて頂きました。みなさんの資料は、全ての項目が真っ黒に塗り潰されている上に、写真も出てきませんでしたし、名前もコードネームも違ってました」カンタービレで宣言する。



 「真っ黒か」と言った。なんだか笑える。




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