シーズンⅤ エピローグ2 英雄の凱旋
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は千石先生のエピローグを書かせていただきました。
今回はレオン達のエピローグです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
研究所を出た俺たちは、特捜部から潜入調査の終了を命じられた。
アレクサンドルは肩に包帯を巻いていたが、よくやったと、俺たちの働きを労ってくれた。
俺たちは特捜部が用意した身分証を返却した。
俺とクロエは、学生証を返却するとき、少し名残惜しいような感覚を味わっていた。
前世では、学生証が名残惜しくなるなんて思ってもみなかった。
学生寮を出て行くとき、ルークとヴァンは最後まで手を振ってくれていた。
まあ、同じ王都に住んでいる者同士。どこかできっとまた会えるだろう。
「君たちには王国への反乱を阻止したという大いなる実績がある。近々、諸君らを救国の英雄として市民の前で表彰する式典を行いたいと、国王陛下が直々におっしゃられた。ついては、その打ち合わせをしたいのだが、この後は大丈夫かね?」
アレクサンドルは俺たちに聞いた。
——いや、それ予定があっても出なきゃダメなやつでしょ。
俺は心の中で思ったが、全員とも打ち合わせに出席することとなった。
◇
アレクサンドルのいう”打ち合わせ”は、事実上国王への謁見であった。
俺はもちろん、アリアやカイルも緊張を隠せない様子だった。
だが、国王陛下は案外気さくな人柄で、俺たちの功績を率直に讃えてくれた。
「レオン殿。先の『黒い天秤』の件に続き、今回の国軍による反乱の阻止。その功績をたたえて、褒美を授けたい。」
——国王陛下が提示した報酬は、押収した魔石の所有権だった。
あの魔石は違法に採掘されたものであり、本来であれば国庫に納められたうえで、ギルドを通じて再販売されるはずだったが、その処分を俺に一任する、というのだった。
俺の手でギルドに納入したとしても、俺の手元に、それこそ国家予算に匹敵する規模の金が残ることになる。
◇
俺は国王の許可を受けて、一旦別室に下がり、クロエたちと相談することとした。
魔石の取り扱いについて、俺は提案したいことがあったのだ。
「レオンのすることだもん。私は大賛成だよ!」
クロエが言った。
「さすがレオン様ですわ。」
アリアも賛同してくれた。
「私も同じ意見です。」
エレナもそう言ってくれた。
カイルも、ジークフリートも、笑顔で俺の提案を受け入れてくれた。
◇
「お待たせしました。魔石の所有権の件ですが、ありがたくお受けしたいと思います。」
俺は国王陛下に伝えた。
「ついては、お願いしたいことがあるのですが——。」
俺は、全会一致で決まった俺のパーティの意向を国王陛下に上奏した。
◇
一週間後、王都の中央広場にて式典が開催された。
俺たちは六人の『救国の英雄』として大々的に紹介された。
市民の歓声が沸き立つ中、その中に大きく手を振っている二人組を見つけた。
ルークとヴァンだった。
——あいつら、来てくれたのか。
俺は嬉しくなって、二人に向けて手を振った。
ルークは相変わらずさわやかな笑顔で応じてくれた。
ヴァンは<お前じゃねぇよ!>と言いたげにクロエに向かって手を振っていた。
クロエは全く気付いていなかったが。
俺は少し可笑しくなって、吹き出していた。
「どうしたの。レオン?」
クロエが、声を掛けてくる。
「いや——、なんでもない。」
そういえば、ヴァンが言っていた昼食の約束忘れていたな。今度気が向いたら誘ってみるか。
そんなことを考えていたら、司会進行の人が「救国の英雄」に押収した魔石の所有権を進呈することを宣言していた。
——群衆から拍手喝さいが沸き起こった。
「で、この魔石についてですが、英雄レオン一同の総意により——。」
歓声が収まったタイミングで司会者が続けていた。
「王都環境整備開発公団に出資、凍結されていた王都の地下道整備事業を再開します!」
司会者が高らかに宣言した。
——群衆から再び拍手と歓声が巻き起こった。
「本当にレオンらしいね。」
クロエが言ってきた。
「もともとはそれに使う資金が流用されていたんだ。俺はそれをもとに戻しただけさ。」
——まあ、寄付じゃなくて出資だから、俺たちの懐も多少は潤うわけだが。
俺は併せて、国王陛下に依頼していた。
『工事が再開されたら、鉱山で解放された鉱夫たちを正当な労働条件で雇ってほしい』、と。
もともと、社会的な居場所がなくて奴隷に身を落としてしまった人たちもいる。
公共事業が始まれば、彼らも働き口を見つけるきっかけになるだろう。
こうして俺たちの冒険がたどり着いた、この式典はつつがなく終わりを迎えていた。
◇
式典が終わって、夕暮れに空が染まるころ、俺たちは市民がいなくなった中央広場で集まっていた。
「なあ、俺たちのパーティってこれからも続くってことでいいんだよな?」
ジークフリートが言った。
「当たり前だろ。俺はまだ『特別専属会員』なんだ。いつまた妙な依頼が来るか分からないしな。」
俺は言っていた。
「必要な時はいつでも声を掛けてくれ。——必ず貴殿の背中を守って見せる。」
カイルが言った。
「公爵家も引き続き全力で応援させていただきますわ。」
アリアが言った。
アリアとカイルは立場上自由に冒険者になるわけにはいかない。
だから、二人を正式にパーティメンバーとして登録することは叶わない。
だけど、「いつでも力になる」と約束してくれる二人も、まぎれもない俺の仲間だった。
おれも、いつだって二人の力になってやる。
——できる範囲で、だけど。
「私は、これからもレオンと一緒だよ!」
クロエは言っていた。
クロエはギルドにパーティメンバーとして登録しているから、今後も一緒にクエストをこなしていくことになるだろう。
「あら、私ももう自由の身ですし、ぜひご一緒させていただきたいわ。レオン。」
エレナが言ってきた。
エレナも冒険者としてパーティメンバーに登録する気らしい。
俺としては断る理由はなかった。
「エレナは友達だし........。別にいいけど..........。絶対に負けないからね!」
クロエは小声でエレナに言っていた。
「お邪魔じゃなきゃ俺も入れてもらおうかな。どうせヒマだし。」
ジークフリートが言ってきた。
もちろん断る理由なんてない。
だけど、お前も貴族だったはずだけど......いいのか?
クロエがポーチから一枚の紙を取り出した。
ヒロからもらったあの念写だ。
クロエはそれを眺めてえへへと笑っている。
が、背後からエレナとジークフリートが、その念写を覗き込んだ。
「これは........。いつの間に!」
エレナが声を荒げた。
「ほー。いいもの持ってるじゃねぇか!」
ジークフリートが揶揄うようにいう。
その後ろでカイルが額に手をあてて、アリアが「あらあら」と笑う。
——俺たちのいつもの光景だ。
◇
ふと、クロエの念写が、俺の足元に飛んできた。
どうやらジークフリートが念写を見せろと揶揄ったあげく、取り合いになったらしい。
あいつはいっつも度が過ぎる——。
念写の裏に書かれたヒロによる『ぼくのえいゆうたち』という文字。
でも、今見たら別の文字が小さく書かれている——?
クロエが慌てて俺のところに駆け寄ってきた。
念写を俺の足元から拾い上げると、赤い顔をしてポーチにしまっていた。
「見た?」
クロエが聞いてきた。
「いや、何も?」
俺は答えた。
クロエはほっとした顔で、エレナたちのほうに戻っていった。
——ま、ばっちり見えていたんだけど。
念写の裏に書かれた『ぼくのえいゆうたち』という言葉。
その下に、小さな文字でこう書かれていた。
『私の一生の英雄』
「レオン!日が暮れるからもうそろそろ帰るよ!」
クロエが俺に向かって手を振った。
「ああ、今行く。」
夕日が王都を染め上げる中、俺はかけがえのない仲間たちの待つ”自分の居場所”に向けて一歩、歩き出していた。
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!
全73話にわたる、ストーリーを初めて書ききった作者としても、ここまで読んでいただけた読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
今後も、様々なテーマで執筆活動を続けていきたいと思いますので、またお会いすることがありましたらよろしくお願いいたします!
最後になりますが、作者として皆様の感想を是非お聞きしたいと思いますので、よろしければ感想に加えて、高評価・ブックマーク等で応援していただけたら幸いです。
カクヨムでも執筆していますので、そちらにも応援いただけたらと思います。
それでは、またどこかでお会いしましょう!




