38 生き残るためなら
「何事だ!?」
エルターン達は悲鳴がある方に向かった
そこで見た光景は多くの魔獣が里にあふれている様子だった
里は人々は食われ、血しぶきが舞い、人々の悲鳴と魔獣の方向が聞こえる地獄と化していた
「ちっ、こんなことになるまで気が付けなかった・・・かなりの実力者がいるな・・・。」
エルターンは悔しそうに顔をゆがめた
「フィデリア、レオ、リリー!お前たちは里の者たちを助けろ。俺は、この騒動の首謀者を見つけて殺す。」
「「「はい!」」」
レオ達は駆け出した
「お父さん、また、みんなで楽しく語らいましょう。」
「ああ。死ぬなよ、フィデリア!」
「ええ。まだ死ぬわけにはいかないもの!」
エルターンとフィデリアは去り際に言葉を交わした
* * *
同時刻、セレーナは
「くっ・・・意外と強いな、お前。」
グラオリラを圧倒していた
セレーナはほぼ無傷だが、グラオリラは全身にいくつもの生傷を作っていた
魔人なので再生するが
「当たり前です。これでも私は閃辰流の王級ですから。」
「くくっ、そうか、じゃあ、門下生の中で一番の実力者ということになるのか?」
「そうです。」
「こりゃ、いい。お前をここで倒せばあとは楽そうだ。」
「私に勝てるとでも?」
セレーナがグラオリラに斬りかかった
その時、セレーナは強烈な頭痛と吐き気を感じ、その場に倒れこんだ
視界が白くぼやけ、意識もなくなりそうだ
平衡感覚もなくなったようだ
「これ、は・・・。」
セレーナがやっとの思いでグラオリラを見上げる
「ようやく効いてきたか。」
グラオリラがニヤッと笑いながらセレーナに近づいた
「俺の魔術は毒。効果範囲内に俺の魔力を充満させ、それを吸ったものを毒で殺す。・・・あんた、すげぇぞ。なかなか毒が効かなくてよ。びっくりしたぜ。」
「卑劣、な・・・。」
するとあざ笑うような顔でグラオリラがこういった
「俺たちは命の取り合いをしてるんだぜ?ズルもくそもねぇよ。生き残るためには何でもする。それが俺のやり方だ。ま、俺のご主人はズルしないけどな。」
セレーナは何も言い返せなかった
こいつの言っていることはわかる
死ぬことはあらゆる生物が恐れていること
それから逃れるためならば手段を問わない
それでも、こいつが許せないのはきっと、このままでは負けると思ってしまっているからだ
グラオリラの近接戦闘の実力は王級下位から中位程度
本来であれば、帝級相当のセレーナの敵ではない
だが、毒を食らった今の状況ではとても勝てるとは思えない
それでも勝たなければならない
でも、それが厳しい
ゆえに無性に腹だ立ってしまうのだ
セレーナはこぶしを握り締めることしかできなかった
「おいおい、悔しいのはわかるが、許してくれよな。」
グラオリラはセレーナの首筋に剣を当てた
* * *
そのころ、レオ達は魔獣を掃討していた
「逃げてください、こっちです!」
里の人々を一番安全な剣術道場に誘導しながら、魔獣を倒している
「フロストスラッシュ!」
リリーは魔術で魔獣を圧倒している
「レオさん、この程度ならば大丈夫です。レオさんは、ほかのところの援護に向かってください。」
「わかりました。頑張ってください!」
レオはリリーにその場を任せ、その場から去った
その時、行くなと言われていたが里の外の様子が気になり、レオは里と隣町をつなぐ橋へ向かうことにした
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