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【99】ちょっとしたイタズラ


「キャー!! キャハハハ!! お姉ちゃんすっごいねぇー!!」

「ジェイミーくん大丈夫? 怖くない?」

「ぜんぜん平気ー!!」


 孤児院の敷地内を走る私の背中で、はしゃいだジェイミーくんがキャッキャと笑っていた。遊ぶと決めてきたけど、こんな遊び方になるとは思わなかった。少しは体動かすことは頭に入れてきたので、スカートだけど中にはスパッツ的なものは履いていた。

 最初は「危ないからダメだ」と反対したジャンくんだったけど、どうしてもと譲らなかったジェイミーくんの強い意志と、それにメロメロだった私が、止めるジャンくんを諦めさせたのだ。


 もちろんあの時よりもスピードは落としている。それでも自分で走るよりはかなり速い。乗り物としては、馬に乗って駆けてるくらいかな? と自分なりいスピードを調節していた。

 そんな体験はしたことの無いだろうジェイミーくんは、絶叫系も大丈夫な感じで、この速さを楽しんでいた。広めの庭だったけど一周はあっという間だ。でも、そのくらいがちょうど良いのかもしれない。

 そして一周して戻ってみると、一緒にいた子ども達がワクワクしながらお行儀良く待っていた。


「ジェイミー良いなぁ」

「私もやってみたいー」

「ぼくもー!」

「お、俺はだめかな……」


 ジェイミーくんと同じくらいの子から期待の声がかかった。最後の言葉はジャンくんの隣にいたジャンくんと同じ年くらいの男の子だ。んー、身長差からして無理じゃないと思うけど絵面が痛いと思うのだよ。

 とりあえず、先に子ども達を満足させてあげたかった。「順番ね」と言うと何か決まりがあるのか、小さい子が先頭でちゃんと列にして並んでくれた。それでも気になるのか、ひょこひょこと顔が横から出てくるのに思わず笑ってしまった。


「いってきまーしゅ!」


 しっかりと私におぶられた女の子は、肩に掴まっていた片方の手を高く上げてぶんぶんと振った。


「ちゃんと掴まっててね、いくよー!」

「はーい!!」


 左右の肩に小さな手の感触がしっかりと確認出来たところで、私はゆっくりと走り出す。そしてちょっと風の魔法で女の子を保護しながら段々とスピードを上げていった。

 結果みんなとっても楽しんでくれた。何度もグルグルと回る事になったけど、強化してるし疲れもそんなに無い。むしろ良い運動になったくらいだ。

 何度目になるか、ちょうど持ってきたタイミングで、ジャンくんと男の子が話している声が聞こえた。


「ちび達あんなに楽しそうにして……、やっぱり俺も頼んじゃダメかな?」

「やめとけって。子ども達だからスピード落としてやってくれてるけど、マジのは半端なかったんだぞ」

「嘘だろ? あんなに小さい体で? 俺たちとそんなにかわんなくないか?」

「強化してんだから大きさは関係無いだろ。そうやって見た目で判断してっと、いつか失敗するぞ」


 なんだろう。私ディスられてない? ちっさいとか、なんとか……。 


「小さくて悪かったわね。で? やるの? やらないの? あぁ、怖くて出来ない?」


 最後の子を下ろしながら、話していた二人に近寄りちょっと意地悪に聞いてみた。


「怖くなんか無いよ! いいのか!?」


 怖いのか? と聞いたら勢いよく否定してきた。それどころか、ちょっとノリノリでびっくりする。


「ジャンくんは背負って走れたから、キミも大丈夫だよ? せっかくだからもうちょっと違うのにする?」

「やったぜ!」

「おいっ」

「ジャンくん大丈夫だって、なんだったら、ジャンくんもやる?」


 ちょっと慌てるジャンくんに喜ぶ男の子。大丈夫、大丈夫と言いながら、ジャンくんにもやる? と人差し指を空に向けてみると、勢いよくブンブンと首を横に振って青ざめていた。


「ちゃんと掴まっててよね」

「わかった!」

「じゃあ行くよー!」


 年長者の男の子を背中に乗せて、私は勢い良く走り出した。


「うぉー! すげー!」


 子供たちと同じスピードで走り出した私の後ろで、男の子はテンション上がりまくりで喜んでいた。一周もあっという間で折り返し地点を通りすぎ、終わりまで後半分のところでちょっと強めに保護の魔法を強めにかける。そして私はこの後の展開に少しだけ顔がにやける。


「口閉じてないと舌噛むよ!」

「へ?」


 先に見えるジャンくんの顔が崩れていた。きっとあの時の事を思い出したのかもしれない。

 さすがに思い切りはまずいかな? と思い、少しだけ押さえつつもグッと足に力を入れて、上へとジャンプした。


「ーーーーーーーーーっ!!!!」

「ひゃっほーーい!」


 久しぶりの運動で私もテンションが上がってたみたいで、思わず叫んでしまった。

 そこにちょうどシェイナさんとリュカが、庭に出てきたところだった。慌てていたのはリュカで、隣のシェイナさんは目を丸くして口元を手で押さえていた。


「アリス! 何やってるんだよ!」


 叫びながらリュカがこちらに向かって走り出してきた。すでに落下が始まっていた私は、前回同様風魔法を足元に展開させてスピードを落としていく。と、スカートが風でフワッと膨らんだ。


「キャー! リュカこっち来ないでー!」

「あ、アリスっ!?」


 うっかり冒険者用の服ではなかった事に、今更ながら気が付いた。あの時はズボン。今はスパッツ履いているけどスカートだ。

 スカートの膨らみに気が付いたのか、リュカがくるっと後ろを向いてくれた。私は片手でスカートを押さえながらゆっくりと着地。と同時に後ろの男の子がドサッと尻餅をつきながら座り込んだ。


「大丈夫か?! ナット!」


 ジャンくんが駆け寄り、尻餅をついた男の子に話しかけた。私はスカートを整えながら座り込んだ男の子、ナットくんに向き直りニカッと笑って


「楽しかった?」


 と、してやったりな、爽快な気分で聞いてやったのだ。

 聞かれたナットくんはというと、呆然としていて目の焦点が合わないのか、目の前のジャンくんを通り越して、遠くを見ていた。


「おい! おいナットっ!」

「……」

「アリスっ、やりすぎだよ!」


 ちょっと涙目になっているジャンくん。あれ? やりすぎたかな? と少しだけ焦りを覚えた時。


「……う、うぉぉぉぉぉーーーー!」

「うわぁっ!」


 座り込んでいたナットくんが、突然叫びだし拳を振り上げた。その叫び声に驚いて私はビクッと体を震わせた。


「ナット?!」

「な、ナットくん? 大丈夫?」


 声に驚きながらも、シェイナさんとリュカが駆け寄ってくる。子供たちも怯えながらナットくんの周りに近寄ってきた。

 みんなが囲うように、ナットくんの周りに集まり、拳を突き上げたままふるふると震えるナットくんを見ていた。


「お……」

「お?」

「おもしれーーーーーーー!!」

「へ?」


 ナットくんは叫びながら両手を下ろすと、勢い良く私に視線を向けてきた。頬と口角は上がり大きく見開いた目、高揚した表情で見つめられた。


「アリスさん! もっかいやって!!」

「えー……」


 やりすぎたかと思ったら、物凄く気に入って貰えた様で、ナットくんはジャンくんの引き気味の視線なんか気付きもせずに、ワクワクした表情のまま私にひたすらお願いするのであった。





読んでいただきありがとうございます(*´艸`*)


ではまた来週~( ≧∀≦)ノ

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