【96】孤児院へ行こう
「ねぇ、アリス。最近リゲル見ないけど、どうしたの? また寝てんの? 僕の間が悪いだけ? もしかして、僕に見えないだけ? 何か悪いことしたかなぁ……」
朝、身支度を終え部屋から出ると、ちょうど下に降りていこうとしていたリュカに聞かれ、スッと表情筋が仕事をしなくなる。あまり気にしないようにしてることを(寂しすぎるから)ズバッと聞いてくるもんだから、朝からテンションダダ下がりだよ。
「え? ホントに僕なんかした? え? アリス怖いよ?」
「……リゲルは今、クロードさんとこです」
「え? 隊長のとこなの? なんで?」
「何でって……」
言いかけて、ぐっと留まった。あれ? リュカってフィーのこと知らないよね? さすがに私から言っちゃうのはまずいよね……。
「か、貸し出し中……」
「貸し出し?」
「この間の魔物が出た件で、リゲルが原因じゃないかって、調査中」
うん、調査は嘘だけど、リゲルが原因なのは嘘じゃ無い。
「えー、そうなの? 大変だね? 大丈夫?」
「まぁ、預けてるのがクロードさんだし? 心配ないとは思ってるけど」
「けど?」
問いかてくるリュカをジトッと睨みつける。
「寂しいんだよ! もー!再確認させないでよ!!」
「うわぁ! びっくりした!」
気持ちが収まらず叫んでしまった。リュカも驚いて一歩下がる。
「ごめんごめん、知らなかったんだから、許してよ」
「う゛ー、そうだけどさ、はぁぁぁぁぁ、早く帰ってこないかなぁ」
怒っていた肩を元に戻して、今度は全力で脱力してしまった。本当にリゲルがいないのが辛い。こんなに何日も離れてたことなんてこっちに来てから無かったから。
「そうだ! これから気分転換に出かけない?」
「はぁ?」
「アリス今日休みでしょ? 僕、今日非番だからちょっと出かける用事があったんだよ。それに付き合わない?」
いいこと思いついた! みたいに目を輝かせながら、グイグイくるリュカ。
薬草採りに行けないからポーション作りもお休みだし、楽しみにしてた女子会はまだ決まってないし、何する予定でも無かったからいいけど……。
「いいけど、何処行くの?」
「父さんに孤児院に様子見に行ってくれないか? って頼まれたんだよ。ほら、ジャンだっけ? 父さんが気にかけてた奴」
「ジャン君とこ行くの? 行く行く! 気になってたの!」
「じゃあ、ご飯食べたらすぐ行こうか」
「わかった、何か持っていく物とかあるかな?」
孤児院に行くなら、何か手見上げを持参した方がいいのだろうかと、小説の知識からお菓子なんかを想像したけど、あいにくと手持ちで渡せる様なお菓子は持ち合わせていない。今から作るにしても時間も無ければ、材料も無かった。
「今日は母さんがお菓子作ってくれてるから、それを持って行くよ。アリスは気にしなくてもいいんじゃない?」
「そっか、アンリエットさんのお菓子なら喜ばれそうだね。私も何か持って行きたかったけど、あげられる物がないや」
「それなら、アリスは子ども達と遊んであげたら? 小さい子に飢えてるんでしょ?」
「飢えてるって! 言い方! リゲルは確かに小さいけどさ、んー、まぁ、飢えてると言えば飢えてるかも……」
リゲルに飢えてるのであって、ちびっ子に飢えてる訳では無いけど、確かに今小さい子に癒やされたい気持ちもあった。
「よし! 今日は遊ぶ! いっぱい遊んでストレス発散する!!」
「すとれす?」
「心労って事! リゲルがいないモヤモヤを晴らすって事! 遊び倒すぞ!!」
「アリスが楽しく過ごせるならいいよね、よし! ご飯食べて早く行こう!」
リゲルが居ないのは、ここで暮らしていく為に必要な事で、離れるのは仕方ないこと。分かっていても寂しさは募っていく。リゲル頑張れ! 私も頑張るから! と思いながら、私は文字や知識でしか知らない孤児院に少しだけ(不謹慎かもしれないけど)ドキドキしながら、階段を降りて行くリュカについていった。
「母さん、今日アリスも一緒に行くことにしたから」
「ジャン君のこと気になってたんで、一緒に行くことにしました」
食卓に座るのは、アンリエットさんとリュカと私だけ。リビオさんは既に仕事に出かけていて、弟妹達はまだ寝ていた。
「あらそうなの? リビオから聞いてたけどジャン君って弟さんがいるんだって?」
「弟さんがいるっていってましたね、ちび達がたくさんいるから頑張らなきゃって」
パンとスープを食べながら、今日行く孤児院の話しになった。
「アンリエットさんは、孤児院に行ったことは無いんですか?」
「私かい? そうさね、街の外れにあるのは知ってるんだけど、お店が忙しくてね。行ったことはないね」
話しを振ったのは私だけど、ちょっとだけ失敗したかな? と思ってしまった。だって、アンリエットさんの顔がちょっと困った表情になったから。
「えっと、何か気になることでもあるんですか?」
「いや、あそこの孤児院は管理しているのが王家の貴族だからね、管理はしっかりしてるから、悪い噂は聞かないよ」
「そうだったんですね」
しっかりしていると聞いて安心した。だって小説で出てくる孤児院は劣悪な環境でひどい扱いを受けてる子達がいたり、管理している人が横領とか人身売買とかしてる物が多かったから。
「数年前の戦争で、親を亡くした子たちを保護してるんだ。そりゃ普通の暮らしをしている子達に比べたら、大変かもしれないけど、それでも最低限の暮らしと教育は施される。それを知ってか、育てられなくなった子をあの孤児院に置いて行ってしまう人もいるって話しだよ」
「そんな……」
どんな理由があるかなんて人それぞれだし、この世界の生活基準がどんなものかもまだ分からないけど、育てられなきゃ産まなきゃいいのに。すごく無責任な親もいるんだ。
「全部が全部悪いとは言わないけどね。今は生活も落ち着いてきて、戦前の暮らしに戻ってきてはいるけど、やっぱりある程度は減らないらしいんだよ」
魔物が出る世界だもんね。冒険者だっているんだから、交通事故以上に死亡者数は多いのかもしれない。死にたくて死んでいく訳じゃ無い。家族を養うのにみんな必死で戦っているんだろうな。
まだ社会に出ていなかった私には、想像するにも乏しくて、家族を持って生きていくっていう重みが分からなかった。ただ、孤児院にいる子ども達が暮らしている場所が、私の知っている最悪な場所では無く、ちゃんと管理されている場所で良かったと、心から思ったのだった。
読んでいただきありがとうございます(*´艸`*)
今週もう一話更新します!
ではまた~( ≧∀≦)ノ




