【70】贈り物
思いの外長く話してしまったようで、フィリップ様は次の予定の時間が迫っているとかで、それはそれは名残惜しそうに退出していった。
「クロードさんはフィリップ様と一緒に行かなくて良かったんですか?」
「私は今日一日お休みを頂いてるからね」
そして対面に座り直したクロードさんと一緒に、お食事中だ。
久しぶりの再会の上に、二人で食事だなんてちょっと嬉しい。フィーやすでに実体化したリゲルも一緒だから、変に意識しないでいられるし。
『フィーも食べれば良いのに』
『い、いいわよ。それに、聖霊は食事を取らなくても死なないもの』
『えー、でも美味しいよ?』
テーブルの端に、あ、テーブルに乗るのはお行儀が悪いっていうけど、まぁリゲルはちっちゃいしね。ちょこんと座って取り分けた食事を一緒にいただいていた。
聖霊の主食? は、魔力みたいで、人が食べるようなものは、摂取しなくても大丈夫なんだって。でも、リゲルはたまにこうやって食事をする。毎日一緒にごはん。は、リュカの家族の手前出来ないけど、町に買い物に行ったときとかにお土産に買ったお菓子なんかを、部屋で一緒に食べたりするのだ。
「そうだ、マルクがアリスにお礼を言っておいてくれと言っていたよ」
「マルクさんがですか?」
「あぁ、なんでもお付き合いをしている女性が、贈り物を初めて喜んでくれたと」
「あー! あれですね!」
そっかぁ、マルクさんうまくいったんだ! 嬉しい報告に渡しも笑顔になる。
「アリスはセンスが良いのだね」
「そ、そんなこと無いですよ、あれはマルクさんが……」
「確かに、1度聞いたがマルクのセンスはどうかと思ったな」
「ですよね」
いくら売り込みの話が良くても、やっぱり女性は見た目が大事なのだ。彼女さんが喜んでくれたなら、おすすめした私も嬉しい。
「私も今度何か選んでもらおうかな」
その言葉を聞いて、ドキッとしてしまった。クロードさんだもん、好きな女性くらい、ううん。お付き合いをしている女性がいたっておかしくない。むしろ、いない方がおかしい。
ちょっと気持ちが落ち着かなかったけど、平静を装おってクロードさんに話を合わせる。
「わ、私でよければお力になりますよ」
「そう言ってもらえると助かるよ、そろそろセリーヌの誕生日が近くてね」
「誕生日プレゼントなんですね、でも、クロードさんが選んだものなら、なんでも喜んでもらえるんじゃないですか?」
一部を除いて、だいたい恋人から貰ったものは、何でも嬉しいものだ。
「セリーヌはなかなか厳しくてね、マルクほどではないが私もよく怒られるんだ」
なんてことだ! クロードさんからの贈り物だというのに、セリーヌさんは気に入らないと!
「ち、ちなみに何を送られたんですか?」
「お店で評判のぬいぐるみや服なんだが……」
「まさか、マルクさんみたいな?」
「断じて違う! 気味の悪いぬいぐるみなどではない!」
ちょっとあせって否定するクロードさん。気の毒だけどちょっと可笑しかった。
「ふふ、なら何でですかね?」
「さぁ。あの年頃の子供は、何を考えているのかさっぱり分からない」
んん? 子供?
「えっと、セリーヌさんはおいくつなんですか?」
「今度の誕生日で13になる」
「じゅ、じゅうさん?!」
クロードさんが25だから、一回りも違うのか! いや、ここは異世界だし。もしかしたら成人前から婚約者とか小説では結構あった設定だったし。そうか、13才か。
驚きと戸惑いを隠せないまま、ぐるぐると考え事をしていたら、カトラリーを静かに置いたクロードさんが私をじっと見てきた。
「アリス、何か勘違いをしていないかい?」
「はい?」
「セリーヌは、私の妹だよ」
「い、いもうと!」
「さすがに成人前の婚約者はいないし、政略結婚をしなくてはならないような家系でもない。それにアリスは知っているだろう」
そう言って、テーブルでワチャワチャしているフィーを見た。
「あ……」
そうだった。クロードさんは女性が苦手だったんだっけ。
「そろそろ結婚をとは言われているが、さすがに13の少女を娶る気はないよ」
「なんか、すみませんっ」
勘違いが恥ずかしくて、うつ向き気味に謝った。でも、ちょっとだけホッとしてしまった。妹さんだった……。いやいや、ちょっとだけね、ちょっとだけ! もう少しこういう時間があると嬉しいなとは思うけど、さすがにそんなことは言えないしね。
「どうやら私が送るものは子供っぽいそうだ。女心が分かっていないと、怒られる。まだ成人前なのに言うことは女性のそれと変わらないとは、セリーヌの将来が怖いよ」
家族の話になったからか、クロードさんはすっかりお兄さんの顔になっていた。こっちでは一回りとはいわないだろうけど、12才も離れていれば謎の生き物なんだろうなと思った。
クロードさんは定期的に討伐に行かなくちゃいけないわけだし、お仕事も忙しそうだから、この年頃の子に何を送ったら良いのかなんて分からないのも無理もない。
「ちょっと背伸びしたい年頃なんじゃないですか? かわいいじゃないですか」
「アリスは会っていないからわからないんだ。言わねば分からないのに、察しろとセリーヌは言うんだ。私は心を読むことは出来ないのに」
しょぼんと話すクロードさんが、私がわがままを言った時の兄の表情と少しだけ重なって、気の毒になる。
「お兄ちゃん、頑張ってくださいね」
「お、おにいっ……、ごほん。あぁ、今度こそは怒られないように頑張ってみるよ。だから、アリスも協力してくれるかい?」
あ、やばっ。またお兄ちゃんとか言ってしまった。オルガンさんの時はからかわれたけど、クロードさんさ照れてしまったらしい。耳が少し赤かった。そんなクロードさんを見たら、言ったこっちも恥ずかしくなる。言うんじゃなかった。
「わ、わかりました。喜んで貰えるようなものを探しましょうね」
照れ隠しで思わずはにかんで答えた。せっかく一日お休みならばと、食事の後にいくつか店をまわってみることになった。選ぶのにヒントはないかと、出来るだけセリーヌちゃんの印象と好きなものや性格なんかを聞いて、私は何が良いかなぁと考えを巡らせるのだった。
そんな私たちのやり取りを見ていたフィーが、疲れたようなため息をしたとかしないとか。リゲルは幸せそうな顔でデザートのお菓子を頬張っていた。
今週、もう一話更新します。
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ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ




