【68】星の精霊様
フィリップ様はゴホンと一度咳払いをして、身なりを整えてからもう一度リゲルたちに向き直った。
「怖がらせてしまって申し訳ございません。お初に御目にかかります。フィリップ・ラスティードと申します」
『ほら、リゲル。もう平気そうよ』
畏まって自己紹介をするフィリップ様。家名はラスティードって言うんだ。ん? ラスティードって、どっかで聞いたような……。
こっちに来てから聞いた気がするんだけど、良く思い出せなかった。短い期間だけど濃厚すぎて情報量が多すぎた為か、なかなか思い出せない私は、とりあえず考えるのを後にして目の前の三人に意識を向けた。
『ほ、ほんとうに大丈夫?』
『大丈夫だって、出てこないとまたゾワゾワ来るわよ』
『えっ! やだやだ!』
フィーの言葉に、あわてて前に出るリゲル。
「本当に申し訳ございませんでした」
『本当にゾワゾワしない?』
「はい、以後気を付けます」
座ってとはいえ、綺麗に頭を下げるフィリップ様。い、いいのだろうか……。
不安になって隣のクロード様を見れば、私と同じく眉にシワを寄せて困っていた。
「気にしないでいい、と言っても気になるだろうが、これがあの方の普通だ。この場では心配はいらないよ」
「はぁ……」
説明をされても不安が無くなったわけではないけど、とりあえず心配ないってことなので今は飲み込んでおくことにした。
「リゲル様のお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
『リゲル様?! なにそれ! ボク偉くなったみたい!』
「精霊様は皆、尊き存在なのです。御目にかかれることも稀ですが、幸運にも生涯を共にされることを許されれば、恩恵も多岐にわたるとされております。自身の能力以外にも、精霊様のお力は素晴らしいと。一部その恩恵を目当てに契約者と共に、よこらぬことをする輩もおりますが、ご安心下さい。リゲル様と共に、アリスも必ずやお守りいたします」
んん? なんか、リゲルとセットで保護される感じかな? 良いのかな? 私、一般市民なんだけど……。
ダラダラと変な汗が出てきそうな話になっていたけど、声をあげるわけにもいかず、まばたきが多くなりながら2人の会話を聞くしかなかった。
『フィリップが守ってくれるの? クロードも守ってくれるって前に言ってたよ』
「クロードもでしたか。それはたぶん物理的にじゃないですかね? 彼は腕がたちますから」
『物理的に? あぁ、アリスを一番最初に助けてくれたみたいに? じゃあ、フィリップは?』
「私は、クロードが手出しできない者にも対応できます」
フィリップ様が、そっとリゲルに近寄った。
「こう見えても、私はそれなりに力があるのですよ?」
き、聞こえてるから! そんなちっさい光の玉に囁いたって、なんの壁にもならないし! むしろ私に言ってるみたいですからっ!
目を大きく開いて二人を見ていたら、視線に気が付いたフィリップ様とバッチリ目があってしまった。
「アリスも心配しなくていいからね」
「は、はい。ありがとうございます……」
にっこりと微笑まれ、若干その笑顔が怖くなった。身分がとても高い人だってことが私の中で確定した瞬間だった。いい人? なんどろうけど、逆らっちゃいけない人でもあるんだろうな。気を付けなくちゃ……。
「そっか、クロードはそんな約束をしていたんだね」
「いけませんか?」
「いけないことはないよ、君にそんな感情があったことに驚いているだけだよ。まぁ、私とクロードでは、守る対象が違うみたいだがね」
「フィリップ様!」
急にクロードさんが立ち上がり、フィリップ様が驚きの表情になった。と思ったら、すぐにまたニヤケ顔になりうんうん一人で頷いていた。
何? 何て言ったの? なんかフィリップ様すごく楽しそうだけど、クロードさんがあわてるなんて珍しい。なんて思っていたら、今度はフィーがフィリップ様の目の前に出てきた。
『フィリップ、私のクロードで遊ばないでくれる? 最近になってちょっと不安定なんだから』
「あぁ、フィー様。申し訳ございません。こんなクロードも珍しいものでしたから」
『クロードも、アリスがビックリしてるわよ? 座ったら?』
「へ?」
突然話をふられて、あわてて立ち上がったクロードさんを見上げた。クロードさんは視線をそらすために私とは反対の方向を向いてしまった。でも、私は見逃さなかった。耳。耳が赤いですよ! クロードさんの本気照れに思わず胸がキュンとしてしまった。
あぁ、表情が見れなくて残念! いや、見たら見たで私が大変なことになりそうだから、これくらいがちょうどいいのかも。
私も顔を反らして、ぐっと拳に力をいれて「はぁっ」と一息吐いて気持ちを落ち着けてから、正面を向いた。
同じタイミングでクロードさんも戻ってきたらしく、ゆっくりとソファーに座り直していた。
「君たち、面白いね」
フィリップ様はちょっと呆れたようにそう呟いた。
「それより、リゲル様。星の精霊とはいったいどのようなものなのでしょうか?」
『んー、なんだろうね? ボク、こっちに来る前は、フィーみたいなのは周りにいなかったし、全然知らないの』
「そうでしたか……」
心なしかがっかりしているフィリップ様。リゲルが自分自身の事を分かっていなかった事で、知りたかったことが知れずとても残念そうだった。
「私も精霊がどういうのもなのか、分からないのでなんとも言えないのですが、とても早いみたいです。それに、思ったことが叶いやすいと言うか、言葉に魔力がのりやすいみたいですね。以前リゲルに寝てと言われて眠らされたことがあります」
リゲルの変わりに私がフィリップ様に答えると、視線をこちらに向け、興味深そうに話を聞いていた。
「早いとは、風の精霊様より早いのかい?」
「えっと……」
風の精霊様、の、フィーをチラッとみてしまった。これたぶん機嫌悪くなるやつだよね……。
『そうだよ! ボク、フィーより早いんだ!』
『負けたのは一度だけよ! 次は絶対に勝つんだから!』
『えー、何度やってもボクが勝つと思うよ?』
『そんなの、やってみなくちゃ分からないじゃない!』
ほら始まった。以前はこの流れで選手権が始まってしまったのだ。
「そ、その勝負はまた今度ね。お願いだからここではやらないでね!」
私がフィーとリゲルにあわててお願いすると、ヤル気満々でグルグルとその場で回っていた二人がピタッと動きを止めた。
『や、やらないわよ。でも勝つんだから』
『ボ、ボクもやらないよ? 絶対に勝つけど』
二人とも自分が勝つと信じてる言葉をぼそっと呟き、それぞれの定位置に戻っていった。
「風の精霊様より早く、願いが叶いやすいと。リゲル様は不思議な存在なのですね」
「まだ、これくらいしか分かっていなくてすみません。私も走るのは得意で早い方なんです。たぶんリゲルのおかげかな?」
肩に戻ってきたリゲルに視線を寄せれば、リゲルはすりっと頬にくっついてきた。
『違うよ! アリスが早いのは、アリスが頑張ったからだよ? ボクなにもしてないもん!』
なんとも嬉しいことも言ってくれる。でも、こっちに来てから強化した時の早さは、常人の常識を越えるっぽい。制御できるようになったら、ヤバイ早さになるんじゃなかろうか……。
「アリスは、願いが叶ったことはあるのかい?」
「願いですか?」
んー、と伏せ目がちに考えてみた。私が願って叶ったことってあるかな? なんだろう。
「あ、魔法が使えるようになりました」
「魔法は誰でも使えるだろう?」
「そうなんですが、どうやら覚えるのも早いみたいです」
私がいいなぁと思って、実際に出きるようになったのは、生活魔法だった。慣れるまでは時間がかかるって言われてるものが、すぐに出きるし応用も早かった。
「それくらいですかね? あまり願ったことは無いので私自身が受けてる恩恵も、良く分からないです」
「そうか……」
フィリップ様は、顎を擦りながら考え込んでしまった。
ミゲルの名前をリゲル修正しました。
登場時「オリオン座の恒星リゲル」としていたのに、
登場一頁目からリゲルとミゲルが混合してて、いつの間にかミゲルになっていて、それに気づかずずーっとミゲルにしてた事に驚きです(苦笑)
今後もリゲルをよろしくお願いします(。>д<)
プライベートでの用事がだんだんと忙しくなってきてしまい、体調不良とも重なって更新が遅れがちです。本当にすみません(泣)
週に2度は更新したいです(希望)
以前のような長期休載はしませんので、これからもよろしくお願いいたします。
ではまた~(*´∀`)




