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【52】嵐の来店


 シャルテと別れた後、どうにも浮上出来ないリュカにリゲルをレンタルしたりあれやこれやと慰めつつ、どうにか次の日の朝仕事に送り出した私は、今日も一日頑張るぞ! と気合いを入れて開店準備をしていた。


『リゲル、昨日はありがとね』

『ん、リュカ元気になったかな? ずっとハァハァ言ってたけど……』

『リゲルくん、その表現はいかがなものかな……』

『え?』


 薄いリゲルはコテンと首を傾げて目をパチクリしていた。君は可愛いから許されるけど、リュカがハァハァ言ってるのは、ため息だからね。誤解がないようにちゃんと言おうね。


『リゲルは語彙力をつけた方が良いと思うよ』

『ゴイリョク?』


 はい、わかりませんね。いいんですよ。私が分かっていれば大抵の事はカバーできますんでね。


『そろそろお店開けるけど、どうする?』

『んー、昨日遅くまでリュカといたから、今日は寝とくー』

『魔力あげようか?』

『ううん、そういうんじゃなくて寝たいだけだから寝とくー』

『フフ、そうなんだ。じゃお休みー』


 魔力が少なくても寝る。魔力が足りてても寝る。リゲルは寝るのが好きらしい。可愛い精霊さんにお休みを言うとクルンと前転した後にパチンと音がして光の玉になったリゲルがスッとピアスに入っていった。

 そう、ピアス。リゲルが入っていた方のキャッチを無くしちゃってたんだけど、このお店にも置いてなかったから、仕方なく反対の付いてる方のキャッチを付け替えて今は右耳につけている。左のピアスには入らないの? って聞いたら、左のピアスには入れないんだって。不思議だね。だから、今は左のピアスはケースの中にしまってあった。


「さてと、お店開けなくちゃね」


 ぐるっと店内を見回して、不備が無いかを確認した後で、お店の鍵を開けた。立て看板を外に出そうと扉を開けると


「すみません、アリスって子いますか?」

「ちょっと、ティナちゃん待ってよ」


 立て看板を地面につけ声をかけられた方に目線を向けると、前方にど金髪で癖毛がくるくると可愛いショーヘアの女の子と、後方に薄紫のボブヘアの女の子がいた。


「アリスは私ですけど……」


 ズカズカと私の前に来るティナちゃんと呼ばれる金髪の女の子は、ズイーッと顔を突き出して不躾にもジロジロと上から下まで私を見てきた。


「な、なんでしょうか……?」

「もう、ティナちゃん、失礼だよ……」

「エマはちょっと黙っててよ」


 エマと呼ばれた薄紫の子は、それでもティナを止めようと右腕に必死にしがみついていた。

 なんだろう、なんかすごく昨日と同じ感じが……。


「あんたが森の奥から来た子? ちょっと図々しいんじゃない?」

「はい?」


 ちょっと意味がわかりません。もうちょっと説明をください。


「やめなよティナちゃん。その子だって困ってるんだし」

「困ってるからって、店で働かせてもらえるだけでも高待遇なのに、家に居候までしてるんだよ! 図々しいじゃないか!」

「はぁ。そう、ですよね」


 私も図々しいと言うか、至れり尽くせりだなとは思ってたのよ。リュカんちにしても隊長さんにしても、すごい親切だよね。


「そうですよねって! わかっててやってンの!」

「分かっててって言うか……」

「ティナちゃん、喧嘩腰は良くないよ。ちゃんとお話しするっていったじゃない……」


 どうやらティナよりエマの方が常識があるらしい。朝イチとはいえ、開店したばかりのお店の前で繰り広げていい展開じゃ無いと思う。


「すみません。お店開けたばかりでこれからお客さんも来ますので……」


 後でにてしてもらえませんか? と言おうとしたけど、ティナは軽くあしらわれたと思ったようで


「逃げるの?!」

「いや、逃げるとか、逃げないとか、そういう問題では……」

「だいたいね! あんたが来てからあの子がどんだけ落ち込んだと思ってンのよ!」


 あの子がどの子か知らんし……。ダメだ、話が通じない……。

 開店からお客さんがたくさん来るのが日常的な店の前には、既に買い物に来たであろう人が数人こちらをチラチラと見ていた。

 そのお客さんが気になって、目を向ければ困ったような顔をされてしまった。ほんと、なんだか知らないけど、すみません。


「あんた! 聞いてンの!?」

「他のお客様がお待ちなんです。お客さんでないのなら営業妨なので、後でにしてもらえませんか?」


 至極全うな事を言ったつもりだったが、言い方が悪かったのか何が悪かったのか、ティナは真っ赤になって拳を握りしめた。


「ティナちゃん! 暴力はダメだよ!」


 後ろで腕に張り付いていたエマが、ティナを諌める。渋々拳を緩めてティナが私を睨んだ。


「話は全然終わってないんだからね。また後で来るよ」


 ティナはそう言うと、エマの腕を振りほどいて道のへと歩いて行ってしまった。


「もう、すぐに怒るんだから……。ごめんなさい、こんな感じになるはずじゃなかったんです。また後で来ます」


 ペコっと頭を下げ、エマは先に行ってしまったティナを追いかけて行ってしまった。


「なんだったんだろう……」


 話が通じない人は苦手。人の話を聞かないのは良くないよね。うん。


「あ、すみませんでした! いらっしゃいませ!」


 お客さんがいたことを思い出して、立て看板をいつもの場所に置きつつ、待っていた常連のおばちゃんにい声をかけた。


「アリスちゃん大丈夫かい? あれ防具屋んとこと魔石屋んとこのお嬢さんだろ。なんかあったのかい?」

「さぁ、私も良く分からなくて……」


 防具屋と魔石屋の娘さんですか。私とは何繋がりですかね?


「喧嘩なら早く仲直りした方がいいよ。可愛い子が怖い事なんて似合わないからね」

「あはは、そうですねー」


 仲直りもなにも、初対面で向こうが喧嘩越しだったんですけどね。理由も分からなければ、話から察するだけで名前とどこの子って事しかわかんないんだけどなぁー。


「もしかして、リュカくん絡みかい? やるねーここの長男は! あんたも頑張んな!」


 バシバシ背中を叩かれ、変な誤解が増えていく。このおばちゃん【ルアンダさん】は解体屋の息子さんがいて近所に住んでいる。日用品を良く買いに来てくれるんだけ、それ以外でも世間話をしにちょくちょく店に顔を出す話好きのおばちゃんだった。

 成人した長男が連れてきた女の人ってんで、一時期噂にもなってしまったんだけど、私も含めアンリエットさんとかアナベラさんとか、違うって説明して誤解は解けた人の方が多い中、何故かずっと誤解したままなのが、このルアンダさんだった。


「いつも言ってますけど、リュカとはそう言うんんじゃないんですって! ルアンダさん聞いてます?!」

「いやー、若いっていいねぇ。息子もリュカくんみたいにモテれば心配ないんだけどねぇ」


 ワハハっと豪快に笑いながらお店に入っていくルアンダさん。肩を落としてハァとため息をつきながら、その後ろについて私も店内に入ったのだった。


リゲルとの念話はアリスも『』にちら表記になります。

精霊は変わらずで、人が『』これになったら、念話してるんだと思ってください。


そして、すみません。土日祝日は執筆が出来ない為、更新ができません(;´Д⊂)


次回更新は、火曜日となります(。>д<)

ではまた!

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