-42- ほっこりときゅんきゅん
朝、目覚ましもなしに起きられるようになった私は、朝日が昇ると同時に目が覚めた。
昨日は感傷に浸ってしまったけど、今日は別の意味で落ち着かない。これから森を5日間歩いて王都に向かうのだ。周りはみんな強い人ばかりで、私は守られるように随行するのだが、半分ワクワク、半分恐々の旅になる。何しろ、この世界は魔物がいるんだから。
昨日の夜、珍しく食堂に隊長さんが来て明日からの打ち合わせが行われた。この1ヶ月の遠征で、強い魔物はほぼ狩り終えたと報告があり、次に湧くだろう期間までは問題ないと判断され、予定どおりの帰還となる。
今回の帰還での注意事項として、私が無事に王都に着けるようにと連携も確認してくれた。各々言葉もかけてもらった。
「アリスちゃんを安全に王都に送り届けるわ!」
「俺たちがいるから、安心しなよ」
「アリスっちは何も心配しなくていいよ」
「しっかり守るからね!」
みんなのそんな言葉が嬉しくて「ありがとうございます! よろしくお願いします!」と深く頭を下げた。
王都に行ってからの事も聞かれたので、近くに座っていたリュカを見ると、リュカもこちらを見ていたようで目が合った。リュカはにっこりと笑って
「アリスはうちの実家で予約済みでーす」
人差し指を立てながら、自慢げにそう言った。
「リュカんとこか!」
「何?! 先越された!」
「確実に安心できて反論できない……」
「今からでも考え直さないか?!」
「ちくしょー! 狙ってたのに!」
「リュカんとこなら、遊びに行くから!」
「あ! 俺も!」
「先輩たち、ちゃんと買い物してってくださいよー」
みんなの反応にも驚いたけど、ちゃっかり店の宣伝も忘れないリュカに笑ってしまった。
そして、やっぱりリュカの実家は凄いんだと、改めてビックリした。
「王都でも頑張りますので、また会えたら嬉しいです」
そんなことを言えば、必ず会いに行く! と言ってくれる団員さん達に、その夜は終始胸がほっこりするのだった。
ーーコンコン。
「アリス起きてる?」
「リュカ? 起きてるよ」
朝から珍しくリュカが訪ねてきた。手櫛で髪を整えてから扉を開けると、リュカがおはようと声をかけてくれた。
「おはよう、どうしたの?」
「隊長が、朝食の前に執務室によってくれって、話したいことがあるんだって」
「あ、これからジェロームさんのお手伝いがあるんだけど」
「大丈夫、隊長さんがジェロームさんには言ってあるからって」
「そうなんだ、わかった。ありがとう、支度したらすぐ行くね」
部屋の中に戻り、身支度を整えてから部屋を出る。そんなに時間がたっていなかったのか、リュカが壁にもたれて立っていた。
「あれ? 待っててくれたの?」
「うん、僕も呼ばれてたから一緒に行こうと思って」
「そうだったんだ。言ってくれればもっと早く出てきたのに」
「そんなに急いでないし、大丈夫だよ」
そんなさらっと格好いい事されると、ちょっと照れる。
「リュカってモテるでしょ」
照れ隠しにジト目でリュカに聞いてやった。
「は? 僕が? そんなこと無いよ?」
「えー、嘘だー。絶対にモテるよ」
「本当だって。それに他の人にモテても意味ないし……」
なにやら楽しげなワードが出てきた。「他の人にモテても意味ないし」
「何々? リュカって好きな子とかいるの?」
「す、す、好きとか! そ、そんなんじゃ!」
普段見せないあわてたリュカが面白くて、からかい半分でどんどん質問していく。
「えー、だって他の人にはモテても意味ないんでしょ? だったらその子にモテたいんじゃないのー?」
「そ、そう言う意味じゃなくてっ!」
「じゃあどーゆー意味?」
にやけ顔が止まらない。久しぶりの恋バナに、こっちまでドキドキしてくる。
「アリス、面白がってるでしょ……」
「あ、はい。すみません。楽しいです」
顔を真っ赤にしたリュカが勘弁してと、顔を手で覆っていた。
「だって気になるじゃん。リュカの好きな人」
「女の子ってそう言う話し好きだよね」
「うん。大好物です」
全然悪いと思わず、どんどん話を盛り上げていく。リュカは盛り上がってないけど……。
「はぁ……。どうせ王都に行ったら、会うことになるだろうから、言うけど……」
「何々?! 私も会えちゃうの?!」
リュカの思い人に会えるなんて、なにそれ楽しい! 自分の目がキラキラしている自覚はある。期待に胸を膨らませながら、リュカの言葉を待った。
「隣に住んでる幼馴染み……」
幼馴染みキターーーーーー! ドキドキ展開だよね!
「へ、へぇ。幼馴染みが、いるんだ」
はしゃぎたい気持ちを押さえつつ、平然とした態度で相づちをうつ。
「アリス……、全然気持ち隠せてないから」
さっきとは逆に、ジト目で言われてしまった。
「ごめんごめん、そっかぁ。幼馴染みかぁ、良いねぇ。で、どんな子?」
「まだ続くの!?」
「そりゃ、今後お友だちになるかも知れませんし?」
「友達になるの?!」
リュカがどんどんあわてていく。
「なるかも。だよ。私だって女の子のお友だち欲しいし」
「そ、そうか。そうだよね、アリスはこっちに友達いないんだもんね」
友達どころか知り合いもいませんよ。聞かれたくない気持ちと、友達欲しいだろう私の気持ちもわかって、なんだかんだ教えてくれるリュカは、やっぱりいい奴だ。
「面倒見が良くて、優しい女の子だよ。ちょっと周りが見えてないときもあって、突っ走ると止まんなくなったりもするけど、すごくいい奴……」
頬を赤らめながら、その子を思い出すように話すリュカは恋する男子だった。くぅー! いいねぇ!!
「頑張ってねリュカ! 応援するよ!!」
バシバシとリュカの背中を叩きながら、人の恋バナできゅんきゅんしちゃう私。ちょっと引き気味のリュカは「余計なことしないでよね」と方をすくめた。
これでひとつ王都に行く楽しみが増えたのだった。
次回更新 6/15 夕方頃




