-39- リゲルの能力
浮上する意識の中、リゲルの泣き声が聞こえてきた気がした。「大丈夫だよ、泣かなくてもいいよ」と言ってあげたいけど、まだ意識がハッキリとしない。誰かに怒られてるみたいで、何か言われる度に泣いている。
「……り、リゲル……」
ボーッとする頭でリゲルの名前を呼ぶ。
『アリス!!』
声と同時にリゲルが飛んできて、光の時よりも大きな体が突撃してくる。
「ぎゃっ! リゲル痛いっ!」
『アリスー! 良かったよー!』
顎辺りがとても痛くて、良くないんですけど……。その痛みのおかげ? で、一気に覚醒した私は顎をさすりながらゆっくりと起き上がった。あ、ここ私の部屋だ。
『またあんたは! ちょっとは落ち着きなさいよ!』
『ひゃっ! ご、ごめんなさい……』
リゲルを怒っていたのは、どうやらフィーだったらしい。フィーがいると言うことは……
「気がついたみたいだな」
「た、隊長さん!」
当然の事ながら、隊長さんも寝台の横の椅子に座っていた。
「体調に問題はないか?」
「は、はいっ、寝る前よりスッキリしてます!」
「それならば良かった」
『良かったよー』
寝起き、と言うか、寝てる姿を隊長さんに見られていたかと思うとすごく恥ずかしかった。掛けられていた布を手繰り寄せて顔を隠す。今さらだけど、とにかく隠す。隠したことで少し落ち着けて、ふと今何時? とか、あ! リュカは?! とか、疑問が次々とわいてきた。
「あ、あの、私が寝ちゃった時、リュカが一緒にいたと思うんですが……」
あの時、しっかりバッチリとリュカにリゲルを見られている。「内緒で」と言った気がするけど、あれからどうなったのだろうと、隊長さんに聞けば
「リゲルの言葉をフィーが拾ったので、急いで駆けつけたんだが、リュカにはリゲルの事は他言無用と言ってある。君はリゲルの言葉で強制的に眠らされたようだ」
取りあえず、リュカには悪いけど隊長さんからも言ってくれたみたいでホッとした。それにしても、強制的に眠らされたとは……。
『言葉に魔力がのったのよ。よほどあせったんだろうけど、ほんとに、気を付けなさいよ!』
『ごめんなさい……。アリス死んじゃうかと思って……』
フィー曰く、リュカの言葉に驚いて姿を隠す魔法が解けて、休ませないと死んじゃうと思ったリゲルが、寝てと言った言葉に魔力がのったらしい。こっちに来る時もあせって転移が発動してしまった訳だから、リゲルらしいと言えばリゲルらしい現象だった。
『こんなに思いがのりやすいなんて、普通ないのよ。なんなのこの子? 危ないったらないわ』
「んー、星の精霊だったよね、だからかな?」
『それがなんなのよ』
「地球じゃ、星、とくに流れ星なんかは、願いを叶えてくれるって言われてるからかな?」
『そっちじゃそんな風に言われてるの?!』
「うん。流れ星をみたら、三回願い事を言うと叶うって。ホントに叶う訳じゃないんだろうけど、小さい子でも知ってるおまじないだよ」
有名な歌にもある。嘘をつくと鼻の伸びる人形が出てくるお話だ。
さんざんフィーにお説教をくらっただろうリゲルはしょんぼりと小さくなっていた。
「もしかして、アリスが魔法を覚えやすいのも、リゲルの能力が関係しているのかもしれないな」
「そうなんですか? あ、そう言えば、契約すると精霊の得意なことが出きるようになるって言ってましたね」
以前フランクさんが説明してくれたやつだ。
「そうだ。私はフィーと契約したことで、風の魔法の威力が上がった」
じゃあ、願い事とか叶いやすくなったりするのかなぁ。なんてあれはおまじないだもんね。そこまではないか。
リゲルの能力がイマイチ分からなくて、そんな考えもすぐに消えた。
『あんた、ちょっと制御を覚えた方がいいわ、驚く度にほいほい姿現してたら、こっちにも被害が飛んできそうよ』
『が、がんばる……』
『ねぇ、ここに居られるのもあと少しなんでしょ? こいつちょっと借りてってもいいかしら?』
「借りてく?」
『ちょっと言っただけじゃ、絶対に分かんないでしょ? 帰るまでにみっちり教え込んどいてあげるから』
『え? アリスと離れたくないよ!』
『そんなこと言ったってしょうがないでしょ! 王都で人に姿見せたり、いきなり魔法使ったりしたら、あの子が大変なのよ! それに毎回こっちまで呼ばれたんじゃクロードも大変なのよ!』
実体化したリゲルの周りをぐるぐると回るフィーは、なんだかんだリゲルに親切だ。ああは言ってるけど、なにせツンデレですからね。うんうん。可愛いね。
「フィー、ごめんね。お願いできるかな?」
『あ、謝る必要なんてないわよっ、教えるのは私たちのためでもあるんだからっ!』
「隊長さんも、ご迷惑お掛けします」
「今朝みたいに部屋で静かにやっているぶんには、とくに気にしない。今回みたいな事がおきる方が心臓に悪いからな」
結局来てみれば寝ているだけとか、苦笑いを浮かべた隊長さんは、リゲルにも言葉をかける。
「リゲルもアリスの力になりたいのなら、しっかりと制御をフィーから学んだ方がいい。離れると言っても、この砦の中だ。気配はわかるんだろう、心配はいらないよ」
『むー、アリスと離れたくないのに……』
「リゲルもむくれてないで、しっかりフィーに教わってきて。一緒にいれないのは私も寂しいけど、それでも一緒にいるために必要なことなんだよ。ね?」
口を尖らせていたリゲルは、ぐぐっと体を縮込ませて『むむーっ』と唸った後に、ゆっくりと体を起こした。
『わかった……、フィーに教わってくる……』
「ありがとうリゲル。フィー、リゲルをよろしくお願いします」
私がフィーに向かって頭を下げれば、それを見たリゲルもあわてて頭を下げた。
『よ、よろしくお願いします……』
『丸一日くらいしかないからね、ビシバシいくわよ! 一応あなたの耳飾り、魔力を込めて預からせてくれない?』
「これに?」
胸ポケットにいつも入れていたピアスケースを取り出して、蓋を開ける。
『途中で魔力少なくなって寝られたら意味ないから。入れられるだけ入れちゃって』
「どうやって込めるの?」
『え、そこから?』
あ、なんかこれ三回目だ……。本当になにも知らなくてすみません……。
「両手に包み込んで、魔力をゆっくりと流し込む様に注ぐ。入らなくなれば反発がくる。それ以上入れようとすれば、媒体が壊れる。だから、ゆっくりと慎重にやってみなさい」
壊れたら大変だ、今日何度目かの忠告をいただき、ピアスに魔力を込めた。思ってたより結構入った気がする。反発も何となくわかった。これ以上入りませんって弾かれた感じがした。
隊長さんにピアスを渡し、フィーにドナドナされていくリゲルを見送って、隊長さんも部屋を出ていった。
リゲルの暴走っプリがなのげに好きです。
次回更新 6/12 夕方頃




