-24- 魔法はイメージが大切
じーんと体が暖まり、指先足の先まで余すとこ無く魔力が行き渡る感覚を感じることが出来た。そしてそれはゆっくりと元の場所に戻っていった。
「リュカ、魔力ってあったかいね」
「うん、そうだね。僕も覚えたての頃はそう感じたよ」
ゆっくりと目を開けば、同じようにリュカも目を開けるところだった。
「こうやって毎日循環させて、体に馴れさせていくことが大切なんだよ。さっきも伝えたけど、イメージを明確にする事でより具体的な魔法を使ったり、細かな操作が可能になる。って、エルさんの受け売りだけどね」
「へぇ。魔法ってやっぱりイメージが大切なんだ」
「やっぱりって、アリスの世界には魔法無かったんでしょ?」
「あ、魔法はね、無かったよ。漫画やアニメはたくさんあったけどね」
「マンガやアニメ?」
「物語の中のお話だったら、魔法がよく登場してたんだよ。けっこう好きで読んでたから、イメージはしやすいかも」
「魔法が無い世界なのに、発想がすごいね。本もたくさんあるんだ」
「読み書きに関しては、7才頃から本格的に習い始めるし、読み聞かせはそれこそ生まれた時からいくらでもって環境だったから、本は生活の一部ってくらい一般的にあったよ。たくさんなんてもんじゃないくらいにね」
「アリスのいた世界は、本当にすごい世界なんだね。読み書きは母さんに教えてもらったからなんとかできるけど、平民なんて読み書きできる人の方が少ないんだよ」
「それにしても、魔法はイメージが大切なんだね」
「どんな風にどの魔法を使うか。どの程度の威力が必要か。どうさせるか。なんかを具体的にイメージするとより的確に発動することが出来るんだよ。それを、魔力循環や魔力操作を完璧に出来るようにすることで、さらに効率よく発動させたりできるって。僕はそこら辺苦手で、どうしても大雑把になりがちなんだけどね」
リュカは苦笑いしながら、そう教えてくれた。
「そっか、だから言葉で説明するより、見せて教えた方が早いんだね。じゃあ、リュカの魔法ちょっとでいいから見せてくれない?」
「だから、僕大雑把だから生活魔法みたいにちょこまかしたの苦手なんだって。それに、この部屋で使えるような魔法、僕にはできないし」
「そっかー、残念。私もなんか使ってみたかったなぁ」
テーブルに突っ伏して脱力すると、ププッとリュカが笑っていた。なんだか私も可笑しくなって一緒に笑い出す。
「今日はありがとね。これから魔力循環は続けてみるよ」
「いえいえ、どういたしまして。エルさんはもちろんだけど、ジェロームさんとメディさんや、マルクなんかも生活魔法けっこう得意だったりするよ。この後厨房の手伝いなんでしょ? 見せてもらえば? 料理で使ってる火力とか、そこら辺ジェロームさん魔力操作しながら使ってるから」
おぉ! なんと素敵な情報ゲット!
「ジェロームさんに聞いてみる!」
ワクワクとした気持ちが膨らんで、今から待きいれなかった。自分の時計を見ると15:30を指していた。つまりこっちでいえば6刻を少し過ぎたところだ。厨房のお手伝いをいつも6刻半からしているから、ちょうどいい時間と言うことになる。いそいそとテーブルに広げていたノートやペンをしまっていると、ふと視線に気がついて顔を上げた。
「そんなに急がなくてもジェロームさんは逃げないよ?」
「そ、そうだけど! だって楽しみなんだもん!」
またリュカに笑われてしまった。熱くなる顔を必死に片手パタパタと仰いで冷やしながら、帰り支度を終わらせた。
「じゃあねリュカ、今日もありがとう! また明日も宜しくお願いします!」
「じゃーねー」
バッとお辞儀をして、恥ずかしさからリュカの顔を見もせずさっと会議室から飛び出した。
18にもなってワクワクしてソワソワするとか、しかも年下の子に言われるとか……。恥ずかしいよ! 小走りに自分の部屋まで行き、荷物を置いてすぐに厨房へ向かった。食堂につく頃には恥ずかしさも収まって、ワクワク感だけが残っていた。
「お疲れさまでーす」
「よぉ嬢ちゃん。今日は早いじゃねーか」
「ちょっとジェロームさんにお願いがあって……」
「何だ? なんか食べたいもんでもあんのか?」
「ち、違いますよっ。そんな人を食いしん坊みたいに言わないでくださいよ!」
「違うのか? いつもウマそうにたくさん食うじゃねーか」
「それは、普通にジェロームさんのお料理が美味しいからですよ!」
「へへっ、ありがとよ。じゃあ、食べもんじゃねーなら何だ?」
少し照れたようにツルツの頭を掻いたジェロームさんに、私は姿勢を正して頭を下げた。
「魔法、生活魔法。見せてもらえませんか?」
「魔法か? なんだってそんなもん……」
「私も使えるようになりたいんです!」
「使えるようにったって、嬢ちゃんその年で魔法使ったこと無いのか?」
今度は髭を触りながら眉間にシワを寄せるジェロームさんの言葉の意味が、一瞬わからなくてポカンとなったが、すぐにその疑問が解消される。
私、この世界の村娘設定だった!! 誰でも魔力を持っているこの世界の人ならば、この年で魔法を使ったことが無いなんて、あ・り・え・な・い・んだ!
「……えっと、その……」
必死に言い訳を考えていると
「今まで見たこともないのか?」
「えっと……、は、はい」
「嬢ちゃんの両親は魔法が苦手だったのか?」
「あー、そうですね……全然ダメでしたね」
使えてたらこっちが驚きだよ。
「村には戻れねーって言ってたが、その、なんだ。両親にはもう、会えねーのか?」
「……はい。たぶんもう会えないと思います」
地球に戻る方法がわからない限り、もう会えないだろうと思う。もしかしたら、向こうでの私はもう死んでしまったことになってるかもしれないし、帰る方法があるのかも謎だった。
言った瞬間に、ジェロームさんがバッと口元を押さえて上半身だけ後ろを向いてしまった。
「ジェロームさん?」
「いや、何でもねーっ」
少しズズっと鼻をすする音が聞こえた後に、ニカッといい笑顔でジェロームさんが振り返った。
「魔法なら俺がいくらでも見せてやる! なんならコツも教えてやるぞ」
「え! 本当ですか!?」
「あぁ、俺は魔力が多い方じゃねーから、細かく分けて使ったりそいう使い方しか出来ねーんだが、覚えると便利だぞ」
「ありがとうございます!」
ドッカンドッカン魔法使っちゃう系かと思いきや、細かい操作が得意というジェロームさん。人を見かけで判断しちゃいけないとよく言われていたけど、これは絶対にわからない。リュカの方が細かいの得意そうだったのに、大雑把で苦手って。本当にわからないもんだね。
ちなみに突然鼻をすすったジェロームさん。両親はあの夜に、私を逃がすために魔物に襲われ死んだと、それなのに気丈に振る舞う私を健気に思い感極まってしまったなど、両親健在で魔法にワクワクしてた私が気付くはずもなく、自分の知らないところで勝手に設定が増えてくのであった。
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