-17- 第一回・フィー対リゲル
『じゃぁ、ちょっと待ってね、うんしょっと』
何をしてるのかと思ったら、ピアスからフワッと光の玉が飛び出してきた。
「リゲル?! 出られるの?!」
『えっと、ちょっとだけね。ずっとお外にでてるとすぐ眠くなっちゃうから無理だけど、ちょっとだけならお外に出ていられるよ』
「ピアスの時も光ってて綺麗だったけど、リゲル自身も凄く綺麗だね!」
『えへへ、ありがとう!』
『準備はできたの?!』
『うん、いつでもいいよ!』
フヨフヨと2つの光が部屋の真ん中に並ぶ。
「では、位置について。……よーい、ドン!」
『行くわよーっ!』
『ビューンッ!』
「きゃー!」
小さな光が2つ勢いよく執務室を飛び出すと、突然部屋中に風が吹き荒れた。風に巻き上げられた書類がハラハラと頭上から落ちてくる……。
「お片付けは、あの二人に責任もってしっかりとやってもらいましょう」
「……そうだな」
大量に落ちてくる書類を眺めなていると、またも風が吹き荒れた。
『いっちばーん!』
「はやっ!」
あっという間に戻ってきたのはリゲルだった。遅れること数秒。
『こんなのアリエナイ!! 信じられない! 私が負けるなんて!』
もう1つの光がさらに書類を巻き上げる。
『だから超早いって言ったじゃーん』
『私だって仲間の中じゃ、超早いんだから!』
『でも、ボクの勝ちー』
『っく……、も、もう一度勝負よ! こんなのまぐれよ!』
『何度やってもボクが一番だよー』
私と隊長さんの間で、フヨフヨと漂うリゲルに、世話しなくその周りを飛び回るフィー。だと思う。今気がついたけど、リゲル銀色っぽいけど、フィーは少し白っぽい。
もう一度! と、息巻くフィーはリゲルと並んでスタート位置を調整していた。逃がすか!
「もう! 二人とも止めなさい! 部屋がメチャクチャになったんだからね!」
そう言って、2つ並んだ光を手の中に閉じ込めた。
『わぁっ!』
『きゃっ!』
手の中がちょっとくすぐったい。でも、どうにか二人を押さえることに成功した私は、部屋の惨状を見せるべく、そっと手の平を開いた。
「これを見て何か言うことは無い?」
『あ……』
『えっと……』
さっきまでフヨフヨとしてた二人が、ピタッと停止する。
『アリス、……怒ってる?』
「うん」
『ごめんなさい! ごめんなさい! アリス嫌いにならないで!』
「うぎゃっ!」
一瞬で顔に激突され、思わず変な声が出た。そして地味に痛い……。
「くーっ! リゲル?!」
『ヤダヤダ、嫌いになっちゃヤダよ! ごめんなさーい! うぇーんっ!』
「ちょっ、リゲル! 嫌いになんてならないから、落ち着いて!」
『ホントにホント? ボクのこと嫌いじゃない?』
ものすごい勢いで頬をグリグリと押され、少し仰け反る。こんなにちっちゃいの、力つよっ!
「嫌いじゃないから、むしろ好きだから!」
『わぁー! アリス大好きー!』
「うわぁ!」
ついにはリゲルに押されて倒れてしまった。なんて力だ、このちっちゃな精霊さんは!
「だ、大丈夫か?」
「は、はい。なんとか」
隊長さんが差し出してくれた手を取り、なんとか立ち上がる。
「リゲル」
『はい?』
「こういう時何て言うか知ってる?」
『……ごめんなさい』
「良くできました」
小さすぎてよしよしできない変わりに、ニコッと笑ってあげた。そして、もう1つの光、フィーに向き直ると
「フィーは?」
『え? なんで私が……』
「フィーは人に迷惑かけても良いと教わった? それとも、何をしても良いと思ってるの?」
『そ、そんなこと……』
人に怒られるなんてたぶん初めてなんだろうフィー。でも、悪気がなかったからって、よくないことをしてしまったら謝るのがスジだ。
「競争してただけかもしれないけど、そのせいで、隊長さん、クロードさんの大切なお仕事の邪魔をしちゃったのよ。悪いなと思わない?」
『クロードの?』
「そう、クロードさんがみんなの為に一生懸命頑張ってたお仕事。フィーもこれで助かってるんじゃない?」
『助かってるの?』
「だって、魔物って精霊さん食べちゃうんでしょ? その魔物退治にすごく重要な書類だったんだよ? 直接じゃないかもしれないけど、フィーも他の精霊さんも魔物減ったら暮らしやすくなるよね?」
『うん。あんな奴らいなくなってほしい!』
「だったら、そのお仕事の邪魔しちゃったんだから謝らなくちゃね」
フヨフヨとフィーが隊長さんに近づいていった。
『クロード……』
「な、なんだい?」
隊長さん、そこちょっと笑うとこじゃないから!
『いつも魔物退治してくれてありがとう。感謝してるわ。……それと、お仕事の邪魔して、ごめんなさい……』
「あぁ、わかってくれたのなら良いよ。出来れば次からは気を付けてくれると助かるけどな」
少し幼い子供に話すように喋る隊長さん。優しさが滲み出てて私の中の好感度がさらに上がった。紳士的で、ちょっと抜けてて、小さい子にも優しいなんて、顔以外も相当なイケメンだな!
「あぁ、それと、いつも色々な助言をありがとう。フィー」
いつもは一方的な助言だけで、会話はほぼ無く、すぐにいなくなってしまっていたらしいフィーに、ちょっといらなかったかもしれないけど、あったらあったでとても助かっていただろう助言のお礼を言っていなかった隊長さんは、この機会を有効活用して、フィーにふんわり笑顔付きでそう言った。
すると、フィーがその場で小さくグルグルと回りだし、突然眩しいくらい光だした。
散らかしたら、キチンと片付けましょう(笑)
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