-1- 突然の?!
久しぶりの新作になります。15Rは保険です。
タイトルの雑貨屋は、序盤の最後ら辺から出てくる予定です。
毎日更新で頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!
今日は一時間置きに3話更新します★
キラキラのエフェクトが目の前に現れ、一瞬目を奪われ綺麗だと思ってしまった。
体感にして30秒くらいだったろうか、周りがだんだんと白くなり目が痛くなる。
目が開けられなくなって私はぎゅっと目を瞑った。
なにこれ……!! 眩しい!
あっという間に白い光に飲み込まれた私は、腕で顔を覆って光を遮り落ち着くのを待つしかなかった。
どのくらいだっただろうか、草の匂いがしたと思ったら、ヒューっと冷たい風が体を撫で、さわさわっとした感触が私の体をかすめた。
「何!? 寒っ! 何で?! 今7月だよね!」
バッと腕を体にまとわせ、目を開けたら目の前には背丈程の長い草が生い茂っていた。
「なん、何で!? ここどこ!? 」
理解しがたい現状にパニックになる私は、目を見開いて辺りを必死に見回した。
どこを見ても草、草、草。ちょっと遠くに森? 薄暗くてハッキリとわからない。とにかく周りは身長156cmの私の肩辺りまである草だらけだった。
頭上を見上げれば月のようなモノが辺りを照らしていた。
サーッと冷たい空気と共に草が揺れる。
寒い! とにかく寒い! 私、学校終わって家に帰る途中だったのに、なんでこんなところにいるの?!
意味わかんないんだけど! 友達には隠してたけど、凄く好きで読んでたアレか?! まさか、アレなのか?! 非現実的なアレなのか?! 異世界転移ってやつなのか?!
いやまて、まだ異世界と決まったわけじゃない。もしかしたら、歪んだ空間とか飛び込んじゃって、田舎にテレポートとかもあり得るかも?!
でもまって、それも十分に非現実的だよね?!
とにかくアスファルト歩いてたのに、草ボーボーってどゆこと――――――!?
頭を抱え、ぐるぐると答えの無い考えが頭の中を駆け巡っていると、突然ガサガサと後ろの方で音がした。
「ひっ!」
ドキッと痛いくらい心臓が跳び跳ねた。
大声で悲鳴を上げなかった自分を褒めてあげたいくらいだった。
咄嗟に手で口をふさいで、ガタガタと震える体をお腹に力をいれて押さえ込んだ。
何かいる……
周りを確認しようとした矢先、斜め右後ろ側に気配を感じた。
そーっと首だけを動かして、気配のする方に視線を向けて背筋がゾクッとした。それなりに遠いけど草ギリギリの高さに光る2つの赤い目と犬みたいな耳のシルエット。慌てて顔を戻す。
何かいるし! 目光ってるし! 犬にしては大きいし!?
私は音を立てない様に、そっと草の中に身を沈めた。うるさいくらいに自分の中に鳴り響く心臓が、痛いくらいの鼓動を打つ。
死ぬ?! 私、死んじゃう?! ワケわかんないところの来て、いきなり死んじゃうの?! テンプレなら、誰か来るよね?! 助けが絶対に来るよね!!
でもでも、来るの遅くてズタボロになっちゃう話しとかあるし、そっち系?! 痛いの嫌だよ!
どうする? どうしよう? このまま隠れる? それとも逃げる? きっと足早いよね、追い付かれるよね?! 食べられちゃうのかな?! こんなところで死にたくないよ!!
吐き気までしてきて、目がグルグルと回る感覚が襲ってくる。自分で自分をきつく抱き締めて、うずくまって勝手に出てくる涙を止めることも出来ずに、ただただ恐怖に怯えるしかなかった。
ふいにガサガサと、草を掻き分ける音が聞こえ、ただでさえうるさい心臓が、ギュッと締め付けられた。
本気でヤバい……。
最悪に痛い思いをするか、理不尽にも死ぬか、はたまた助かるか……。どれが正解かわからないけど、とにかく【逃げる】を選択した私は、震える足をギュッとつねって、涙が流れっぱなしの目蓋と頬を、乱暴に拭った。
とにかく走ってやる!
小学校では男の子に混じってサッカーをしていた。中学高校では陸上部で常にトップの成績だった。この夏最後の全国大会はトップ10入り間違いなし! と顧問の先生も部のみんなも期待してくれてたのだ。足には自信がある!
あいつに勝てる自信はないがなっ!
ずっと背負っていた通学リュックを静かに下に下ろした。さすがに背負ったままでトップスピードを出せる自信はない。
ジリジリと距離を詰めようとする気配に、どうかスペシャルラッキーで誰かと、出来れば強そうな人に出会えます様に! と願いながら、あいつに背を向けてスピードが出せるようにクラウチングスタートの体勢をとった。
フーッと深い深呼吸をして、草だらけの前方をまっすぐに見る。
足場視界は最悪。この先に何があるかもわからない。でも、走らなきゃいけない事だけは分かった。
心の中でカウントを初める。
3…… 2…… 1!
「っ!」
バシバシと顔面に当たる草を、なんとか両手で掻き分けながら、必死に走り始めた。同時に後ろの気配も一緒に走り出した。
ムリムリムリムリ無理っ――――――――!!!!
無我夢中で走り初めると、フォームなんて無茶苦茶で、とにかく前へ前へと草を掻き分けて進むしか出来なかった。
近づいてくる足音と荒い息が、自分のそれと重なる。たいして走ってもないのに、持久走をしているみたいに長く苦しく感じた。
確実に大きくなる音が、全身を恐怖でいっぱいにしていた。
まだ、まだ、逃げなきゃ! もっと走らなきゃっ!
喉が痛くなり、呼吸が乱れる。掻き分ける手が草で切れる。制服のスカートから出る足もたぶん切れてる。
でも、手足の痛みなんて感じなかった。ただ喉が痛くて苦しいだけ。いつまで走ればいいなんて、全然分からなかった。
「はぁっはぁっ、んっ!」
ふいに掻き分けていた草の感触が途切れた。
ガンッ!!
「ぎゃっ!」
何かの金属に思い切りぶつかり、反動で後ろに倒れ込んだ。
ぶつけた痛みも倒れた痛みも酷かったが、それどころではない、早く立って走らなきゃ!
ぶつけた顔を押さえつつ、慌てて立ち上がろうとした時――――――
砦編1話読んでいただきありがとうございました!
次の更新は1時間後です(*´▽`*)
もしよろしければ、応援よろしくお願い致します(*´艸`*)