オレたちの世界
オレのオヤジの遺言は…
『ボインちゃんには気をつけろ』だ。
オヤジ曰くボインの中にゃ脳みそが
詰まっているらしい。
だから…デカけりゃデカいほど
厄介らしい。なんせ頭と合せりゃ
3つの脳みそが有る事になる。
そう言やオレのおふくろもボインだったっけ。
あのオヤジでも頭が上がらなかったよな…
そう言うコトかよ…オヤジよ。
オレが誰かって?名前は無いが…
職業は有る!
そう、この世界じゃ職業が名前さ。
オレの職業?そいつぁ…
爆弾屋さ。
ま〜でも、みんなはオレの事をこう呼ぶ…
「ドッカン!」とね。
◆
仲介屋から伝書バトが来やがった。ハトから
依頼書を外して、エサをやったら嬉しそうに
帰って行きやがった。オレの頭にフンをして。
さてと…今回の仕事は…東の山の向こうの
トウキビ村か。
この世界は昔は栄えていて、それは便利な
世界だったらしい…今はドコに行っても
荒れ果てた土地が拡がるばかりだ。
昔に何が有ったか知らねぇが、オレの仕事が
成り立つのも、その何かが有ったおかげだぜ。
さ〜て、とりあえず東の山を越えるには…
3段爆発のボムジャンプと行きますか…
さっそく仕事着に着替える…クリーム色の
ポケットだらけのツナギ服。 それに工具が
差せる太いベルトに短ブーツ。それとゴーグル。
そして大事な商売道具のデカいリュック。
中身はもちろん爆弾さ、ただしオレのは
強、中、弱の3種類の爆発力の粘土爆弾さ。
現場の状況に合わせて練り合せが出来る
いわゆるオーダーメイド爆弾がオレの信条さ。
ボムジャンプ…爆発の威力で飛んでく時は
爆風重視の爆弾を作る。
そいつを大、中、中と爆弾玉を3つ作って
長めの導火線を差し込むと準備はOK。
そしてデカい鉄板(中華鍋風)を用意する…
鉄板の真ん中に太い針が突き立ってる、そこへ
大きい爆弾玉をぶっ刺して鉄板を伏せる。
伏せた鉄板の上に乗り込んで鉄板とブーツを
固定する…さあて発射準備完了!
ポケットから出した薄手の着火グローブを
右手にハメて導火線にパチンと指を鳴らすと…
火花が散って…導火線に着火。
ドッッカーーン!!と大音響!!
この音がたまんね〜。
オレは大空高く飛び上がる。景色は最高〜!
バカと何とやらは高いトコが大好きだと…
オレは最高に大好きだぜ。
とか、言ってる間に身体を反らせて、次の
ヤツを鉄板にぶっ刺して…ハイっ着火…
ドォォオーン!!垂直から次なるは…
水平方向ときたもんだ。
山を越えるにゃ、もうヒト爆発だ。
もっかい鉄板にセットして…ハイっ着火…
ドゴォォオーン!!…軽々と山越え成功だぜ。
さ〜て、目的のトウキビ村が見えて来た。
パラシュートを開くとするか…
オレのリュックにゃパラシュートも装備
されてる。人家が無けりゃ爆発着地も
出来るんだけどね…
バサササーー…広場目指して微妙に調整と
ズザザザーッ…ハイっ ピッタシ着地成功だぜ。
ワイのワイのと村人が集まって来やがった。
見なれたヤツらばかりだぜ。
前に出て来たオッサンが「ドッカン、久しぶり
じゃの〜、いつも派手じゃの〜」
「オウ、村長のオッサン今回は何の仕事だ?
また、トウキビ畑を耕すのかよ?」
「違う、違う、水が枯れてしもうてな…」
「次の水脈はわかってんのか?」
「探し屋がまだ到着しとらんのじゃ〜」
と言ってる間にダチョウにまたがったヤツが
ご到着。
ダチョウから降りて来たのが、なな何と
ボインの女じゃね〜か…
赤のアンダーシャツの上にモモ色の
半袖半パンのツナギを着て生足に長ブーツ。
細いベルトに商売道具を装着してる。
「アンタがドッカンかい、ウワサは聞いてるよ。」
「見ねぇ顔だな…でっどんなウワサだい。」
「バカでお調子者だって…本当だったんだ。」
「本当だぜ…って言うかコラ!誰がそんなウワサ
を流しやがったんだ!」
「仲介屋のジェーンさんから聞いたんだけど…」
お〜…おふくろじゃねえかよ…オレをそんな風に見てたのかよ…と天を仰いじゃったぜ。
「探し屋のガスのジーさんは知ってるか?アイツどうしたんだ?」
「あ〜ありゃ引退したよ。アタシはガスの孫で、ボインってんだ。」
オイオイまんまじゃね〜か…て、ヒトのコト
言えね〜か…
「で、ガス並みのウデは有んのかよ?」
「試して見るかい?」
ボインは腰に差してた2本のL字型の棒を両手にとって「さあ、何を探す?」
村長がすかさず「バカ」と言った。
棒の先がオレの方へ向いた!
また、村長がすかさず「カシコ」と言った。
今度は村長の方へ向いた!
村長は「合格!」と手を挙げた。
村人たちは歓声あげた。
なんじゃそりゃ…ま〜いいか…オレにゃ
水脈は探せねぇからな。
いわゆる、ダウジングと言うヤツだ。
ボインは胸を揺らせながら村の周りを
両手に棒を持ってウロウロしている。
うしろにダチョウを引き連れて…
「有った!有ったよ。スゴイ量の水脈!!」
村長ともども村人たちが湧き立った。
「よし!お次はオレの出番だ。ド派手に爆穴を
開けるとするか…」
「ちょっと待って!結構深いよ…それに…
なんかヤバい塊がその上らへんに有る見たい…」
「オイオイそこまで判んのかよ…さすがガス
ゆずりの探し屋だな…」
「で…深さはどのくらいか判るか?」
「うん、アンタの背丈の50倍かな…」
「よし、わかった…」さっそくオレは粘土
爆弾を調合しだした。鋭い破壊力が有って
コークスクリュー状に爆破する楕円形の
手のひらサイズの爆弾玉を50個作った。
前の時はオレの背丈の20倍だった…
あの時の経験で地質はだいたい判ってる。
気になるのは…ヤバい塊…そいつがどんだけ
硬いかどうかだな…
まず1個目の爆弾を置いて着火、ドーン!
浅めの穴が空いた。2個目の爆弾に着火して
その穴に投げ入れる。ドーン!
土砂は出ない、爆圧で穴の内壁に圧着される。
そう、土管の様な構造になる。うまい仕組みだ。
それの繰り返しを続けると、やがて穴は
深くなって行った。間口はヒト2人が入れる
位の大きさだ。ホンの数10分の出来事。
その手際の良さに村人たちはどよめく…
村長曰く「簡単にサクサクやっとるが、爆薬の
調合、時差をつけた爆烈そのバランスがとれて
はじめて、穴がスムーズに下へ伸びて行く。」
村長は続ける「ただの爆弾を放り込むだけじゃ、大きな窪みが出来るだけじゃ…」
「スゴイね!こんな手際のイイ爆弾屋は
ハジメてだよ!」ボインが感歎の声をあげる。
「ま〜待ってくれ、ホメてくれるのは終って
からにしてくれや、いよいよ例のヤバいのに…
届きそうだぜ。」
続けて爆弾を手際良く穴に投げ入れて行く。
45個、46…47…48…49…最後の
50個とくぐもった爆発音は聞こえて来たが
コレと言った気になる異音は無かった。
そして、少しの沈黙の後…
グゴゴゴガグゴボコボコゴゴゴォーー…
水が上がってくる音と何かが穴を削つて
這い上って来る音が同時に聞こえた。
ドドドドーンと黒い大きな塊と水柱が穴から
勢いよく吹き出して来た!
村人たちは大歓声をあげた!
その刹那ボインとオレは、ほぼ同時に叫んだ!
「危ない!みんな!ココから離れろ!」
ボインはアレを大変な危険物だと察知した。
オレはアレをトンデモない爆発物だと感じた。
オレのひと回り以上の大きさが有る…この物体が
あとで不発弾と言う爆弾と知るのだが…
オレはリュックを抱えて、その物体の落下地点
まで走った。オレはリュックの上から導火線を
出来るだけ仕掛けていって着火した。
物体が落下したのと同時にオレはリュックと
共に物体に抱きついた。
物体からガチッと嫌な鈍い音がした…
少しの静寂のあと…大爆音が周りに響き
わたった。そして盛大に土煙りが上がった。
土煙りが消えたあと、そこには深く大きな
窪みが出来ていた…吹き上がった水が
その窪みに流れ込んで行く…
そして…そこには…
爆弾屋と探し屋の姿はドコにもなかった…




