1.婚約破棄されて顔面を婚約者に蹴り飛ばされた時、前世の記憶を取り戻して乙女ゲームの世界に転生したのに気付きました
幾多の物語の中から私のお話見つけて頂いて有難うございます。
毎日二話更新目指して頑張ります。
「アデライン・ダンブリーズ、貴様との婚約を破棄する!」
私は愛しのエドワード・グレナン第一王子から卒業パーティーにて、声高々と婚約破棄を宣言された。
私に取って晴天の霹靂だった……
いや、少しは覚悟していた……
エドワード様にピンク色の髪の変な虫が付いていたから……
「貴様の聖女メリンダ・エグモントに対する数々の嫌がらせや暴行、果ては彼女に対して破落戸を使って襲わせて傷物にしようと画策した点、全て我が王家の陰が証拠を掴んでいる。最後の襲撃は事前に貴様の兄、オーガストが動き未遂で済ませた。貴様のような者を私の婚約者にしておく訳にはいかない! 何か言い訳があるか?」
冷たい視線をエドワードは私に向けてきた。
その横には見た目は可愛らしい男好きのするピンクの髪の女が私を恐れるようにエドワードに庇われていた。
私は今まで麗しのエドワード様にずっと熱い視線を向けてきたのに!
私は王家に認められた婚約者なのに、そのエドワード様の寵愛を今では全てあの平民のピンク頭の聖女が全て受けているのだ。そんなのが許されるのか?
でも、私を見る視線は皆冷たい。
誰一人同情の視線さえ向けてくれない。
王子達の後ろには怒った顔の王子の側近達や、昔は仲の良かった私の兄のオーガストまでが私をゴキブリを見るような目で睨み付けていた。
昔は私を激かわいがりしてくれた兄も、今やメリンダの毒牙にかかったのか、怒り狂った目で私を見下ろしてくれていた。
そう、もう私には何も残っていなかった。
でも、私は殿下や兄に言いたかった。
「何をおっしゃっていらっしゃるんですか? 全ては私という婚約者があるにもかかわらず、あなた様に必要以上に近付いて親しくなったその女が悪いの……ギャッ」
私は怒鳴り返そうと前に歩きだしたところを横にいた王子の側近のビリーに足を突き出されて、蹴躓いて転けてしまった。更に最悪なことに倒れた私の顔の前には私を蹴りつけようとしてきたエドワードの足が丁度あったのだ。
ガツンッ!
「ギャー!」
凄まじい音がして私は、顔面を思いっきりエドワードに蹴り飛ばされていた。
凄まじい激痛が襲う!
普通は公爵令嬢の令嬢の顔を足蹴にするか?
私は信じられなかった。
王子本人としては腹でも蹴り上げるつもりだったのかもしれないが、それでも令嬢のお腹を蹴るか?
私は顔面を思いっきり蹴り飛ばされた瞬間、頭に火花が散った。
その時だ。頭の中に凄まじい量の前世の記憶が蘇ったのだ。
前世、私は丘山愛韻として、とある地方都市で生活していた。私には明るい両親と旺雅っていうとても格好良い自慢の兄がいた。
私は病弱で高校もあまり行けていなかった。
でも、そんな私を両親や自慢の兄がよく面倒を見てくれていた。
そんな中、地震が襲い、愛韻は津波に巻き込まれて死んでしまうのだ。
でも、今はそんな事はどうでも良かった。私は私の今世の名前が乙女ゲーム『グレナンのピンクの薔薇』の悪役令嬢アデライン・ダンブリーズだと今判ったのだ。このゲームは女子高生達に爆発的に流行っていたゲームで、私も何度もやっていた。それもこの場面はゲームの最後の断罪の場だ。
断罪の場だと今蹴り飛ばされたところでそれが判ってどうする?
もう絶対に手遅れだ。
それもヒーローに顔面蹴られて顔中血だらけにして思い出すってどれだけの罰ゲームなの?
ゲームでもこんな場面はなかった。
ゲームの中でアデラインは自分の婚約者に纏わり付くヒロインの聖女メリンダを虐めまくり、最後は破落戸どもに襲わせようとして失敗、卒業パーティーで断罪追放されてしまうのだ。
でも、さすがにゲームの中では婚約者の王子に顔面を蹴り飛ばされる場面なんて無かった。
まあ、ここは泣きわめく私を騎士達が捕まえて馬車に押し込まれるのだが、その護送される途中で破落戸どもに襲われて散々慰み者にされ他挙げ句に殺されるのだ。
ちょっと完全に詰んでいるじゃない!
津波で死んだのもそうだけど、転生できたって判った瞬間、断罪って何なの?
それも王子に蹴り飛ばされてきれいな顔を血まみれにして、断罪されるってどういう事?
更にそのうえで慰み者にされて殺される、こんな第二の人生なんて嫌だ!
元々アデラインは黒目黒髪とこの世界では少し変わった姿形をしていたが、くりくりとした大きな物言う黒い瞳と明るい性格で、ダンブリーズ公爵家では両親や兄、使用人達から花よ蝶よ大切に育てられていた。兄のオーガスタとの仲も決して悪くなかった。というかオーガスタは一つ下のアデラインを溺愛していた。
そんな中、彼女は10歳の時に王家の第一王子エドワードの婚約者となった。
公爵令嬢で未来の王太子の婚約者という事は未来の王妃になるのが確実だった。
アデラインの前途は洋々と開けていたのだ。
でも、そんな彼女の前にヒロインのメリンダが現れてから全てが変わってしまった。
王子と同学年に転入してきた天真爛漫なメリンダは、誰とでも親しくなれる性格で、あっという間に王子とその側近達の心を掴んでいた。天真爛漫なメリンダを王子が愛するようになるのは時間の問題だった。側近達も皆婚約者がいたのだが、あっという間にメリンダに骨抜きにされていた。昔はアデラインを可愛がってくれていた一つ上の兄のオーガストも、最初はエドワードも仕方が無い奴だとアデラインの味方をしてくれていたのに、メリンダと話すようになると、あっという間にアデラインから離れて、メリンダの面倒を見るようになっていた。
そんなだから、私は孤立無援、王子に蹴飛ばされたら、今度は側近どもからリンチされて、それで殺されて終わりだと思ってしまった。まあ、ごろつきどもに慰み者にされて終わるよりもましか、と私は覚悟した。
そして、私が地面に激突しようとした時だ。
私はバシッと誰かに抱き締められていた。
誰?
この人は?
私を抱きとめてくれる人なんているわけないと思っていたのに……
王子に逆らって、メリンダを傷物にしようとしたのだ。そんな私を身を持って助けてくれる人がいるなんて、想像だにしていなかった。
王子達はそれを見て、ぎょっとしていた。
「俺の妹に傷を負わしたのは誰だ?」
そこには地獄の底にいる閻魔大王のような氷のような冷たい低い声を発したオーガストお兄様がいたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
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本日は後二回更新予定です








