第二章 001 再び
アルフ、リーフの二人と別れた天馬の冒険譚。
第二章の始まりです。
アルフとリーフ。短い間だったが天馬の面倒を見てくれた二人との唐突な別れから一週間。アルフの使っていた部屋に移り、同じだけの月日が流れようとしていた。
その間、天馬なりに忙しい日々を過ごしていた。一方、同室となったマリオは毎日、早朝から魔術師ギルドに向かい、深夜に帰ってくるという生活を送っていた。
『読めるのに書けない』
魔術師ギルドで特別講師の依頼を受けた天馬は、この世界の文字が書けないという事実を知ることになった。
依頼は講師としての立場と屁理屈に近い話術で強引に乗り切ったものの、文字を書けることの重要性を理解している天馬は、部屋を移るとすぐに教会図書館へ通い詰めた。
改めて『百科全書』を読み込み、知識を深めると同時に、必死に文字の練習に励んだ天馬。
その甲斐あって、図書館が閉まる頃には専門的な単語も不自由なく書き出せるまでになっていた。
翌日からは、午前中に教会図書館で自分を召喚した存在の手がかりを求め、神話や伝承を読み漁った。
午後は雑貨屋や武具屋を巡り、『百科全書』の知識を『鑑定』スキルで照らし合わせる実地訓練に励んだ。夕方になると食料品店で買い出しをして、マーニーのためにパスタのレシピ開発に勤しみ、マリオが帰って来るのを待って、試食をお願いする。そんな日々を繰り返していた。
そんな日々の中、図書館で出会った白いカソックの女性と、宗教や伝承について語り合ったのは楽しいひとときだった。ただ一点、彼女が何度も自分の口元を注視していたことだけが、天馬の記憶に引っかかっていた。
そして、本日、作った幾つかのレシピを譲るため、『強制依頼』以来、初めてマーニーの店を訪ねのだが、挨拶もソコソコに「生還の報告に来なかったこと」に対し、小言を頂戴し、平謝りをする羽目になった。
気を取り直して、本題のレシピを差し出すと、今度はその価値を巡って再びマーニーを怒らせて説教を食らう始末。最終的に銀貨三枚を無理矢理渡されて、天馬は逃げるように『蟒蛇の寝床』へ帰還したのだった。
「・・・・・・まさか、善意で届けたレシピで怒られるなんて」
ベッドに倒れ込み、天馬はため息をついた。
この世界に来て助けてくれた人々には、何らかの形でお礼をしたい。武具を付与して送った『大蛇』の面々には、共に生還したことで恩を返せたつもりでいたが、マーニーへのお礼がまだだったのだ。
レシピ五つで銀貨三枚。やはり貰いすぎではないか。居たたまれない気分を抱えたまま、天馬は天井を見上げた。
「それにしても・・・・・・普通、読めるなら書けると思うだろ」
ベッドに体を大の字に投げ出し、この世界に召喚した御方に今更だが、不満を言いたいと思いつつ、ユニークスキルの『言語理解』と『文章理解』の説明を思い出していた。
確かに『文章理解』の説明は『理解している言語の文章が読める』であり、書けるとは説明文になかったが・・・・・・
「普通はセットだろ。放置した上に生活に必須のスキルが・・・・・・片手落ちってどうなんだ、僕を招いた御方様?」
不満を口にしながら、ベッドから身を起こした天馬は、久しぶりにステータスを確認しようと思い、お約束の言葉を口にした。
「ステータス-オープン」
『名前: (偽装)テンマ(テンマ・イツキ)種族:人間 年齢:一九歳 性別:男性 職業:冒険者 付与魔術師 食の探究者 状態:通常』
『HP:250 MP:300』
『称号: 災禍を祓う者(隠蔽 転移者)』『加護:(隠蔽 ×××の加護)』
『能力値』『スキル』
「えっ?」
天馬は、いつの間にか増えた職業、HP、MP、新たな称号に戸惑いを覚えながら、魔樹のことを思い出していた。
「『災禍を祓う者』って、たぶん、魔樹を倒したせいだよね? HPやMPの増加は『能力値』が上がったからかな?」
そう考えながら、天馬は『能力値』のウインドウを開いた。
『腕力:90 体力:80 敏捷:65 知力:85 魔力:95 器用:75 魅力:85 運:80』
予想通り、各能力値は上昇していた。ただ、100の壁は超えていない。仮定したMax値「100」が正しいのかはわからなかった。次に『スキル』のウィンドウを次々に開いていった。
『戦闘スキル(P・S)』
『剣術:Lv5 祓の刃:Lv3 格闘術:Lv4』
『魔法スキル(A・S)』
『水魔法:Lv5 生活魔法:Lv5(隠蔽 火魔法:Lv2 風魔法:Lv4 大地魔法:Lv3 光魔法:Lv3 闇魔法:Lv1 時空魔法:Lv1 錬金魔法:Lv3 付与魔法:Lv6 召喚魔法:Lv1 鑑定魔法:Lv10)』
『技能スキル(P・S)』
『話術:Lv8 作法:Lv6 社交:Lv7 商い:Lv7 鍛冶:Lv2 木工:Lv2 皮革:Lv2 石工:Lv1 調剤:Lv2 調合:Lv3 調教師:Lv1 料理:Lv6』
先に戦闘、魔法、技能の確認した天馬は眉間に皺を寄せた。
「レベルはある程度上がっているとは思っていたが、鑑定はカンストしてのか? 告知はなかったけど? って言うか、カンストしてあの情報量? 『魔樹』も鑑定できなかのに‥‥‥何が、レベルが上がれば『高次の存在も鑑定できる』だよ」
開いたウインドウを閉じながら、天馬は初めてスキルがレベルアップした時に聞こえた声を思い出し、突然の声に不平を述べたあと、声を聴いていないこと不思議に思いながら『耐性スキル(P・S)』のウインドウを開いた。
『健全な体 健全な心』
「えっ」
スキル名が変わっていた。慌てて説明を開いて、天馬はスキルの効果を確認する。説明になっているようで説明になってはいなかったが、耐性スキルであることは変わらないようだった。
『健全な体:過度、若しくは急激な身体の変化に対して健やかな身体を維持する』
『健全な心:過度、若しくは急激な感情の変化に対して健やかな心を維持する』
「説明になっているようで、説明になっていないのは相変わらずだな。そもそも『過度』とか『急激』って誰の判断になるんだか。それより、他のスキルも変化してたりしないような?」
『ユニークスキル』
『言語理解』『識字の加護』
『EXスキル』
『身体強化(P・S) 鑑定偽装(P・S) (偽装)アイテムボックス(亜空間収納)(P・S)』
天馬の不安は見事に的中し、『文章理解』は『識字の加護』に、『EXスキル』からスキルのレベルどころか、スキルが一つ、『鑑定遮断』が消えていた。
困惑と、わずかな怒気を含んだ言葉が天馬の口から漏れた。
「・・・・・・なぜ、こんなことになっているんだ」
数瞬の静寂の中、消え入りそうな細い声が聞こえた。
『(すいません・・・・・・すいませんでした・・・・・・)』
聞こえた声に跳ねるように立ち上がった天馬は、『亜空間収納』から長剣を抜き放ち、油断なく気配を探る。
「誰だ! どこにいる!」
しばしの沈黙。
『(申し訳ありません・・・・・・私が職務を怠ったために天馬様にご不便をおかけしておりました)』
また、声が聞こえた。その声は、天馬の頭の中に直接語り掛けていた。聞き覚えのある響きだった。
「この声・・・・・・レベルアップを告知してきた、あの声か?」
問いかけると、声の主から安堵と喜びの感情が波のように伝わってきた。
「君は・・・・・・誰なんだ?」
声の主から、戸惑いと困惑の感情が伝わってくる。
まるで自らを表現する言葉を探しているような感情。「名前がない?」と天馬が思った時、再び声が響いた。
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最低でも『隔週』更新していこうと考えてます。




