勇者パーティー in オーディナル聖王国 49
「うそでしょ」
一人の女が呆然と呟いた。お腹を摩りながら、呆然と呟いた。
「あの子たちが殺された?」
「事実だ」
アキラはトウカに向かって言った。ボーとしている。
四凶はトウカが世界を滅ぼすために作った自信作で、この世界にそのままいると危険なので異次元の檻に閉じ込めていたくらいの怪物だった。
そんな怪物をあっさり倒したとんでもないやつがいるらしい。
「誰?」
「奴らの話だと“勇者”とその仲間だが、2体を倒したのは“光戦乙女の契約者”だ」
「何ですって?人間如きにやれるような子達ではないはずよ」
「人間ではないのだろう」
アキラは困ったように言った。四凶を呼び出す際に一人の魔王を犠牲にしている。それをもって、魔王の顕在をアピールする予定が台無しになった。
逆にこれが“勇者”の勢いをつける形になってしまった。
「人間ではない?」
「精霊と契約し、かなりの力を持っていると思われる。人間をやめてしまったような恐ろしい力を出したのだろう」
「そんな」
トウカの顔がひどいものになっていく。未だ、かわいい子供たちが死んでしまったことが許せないようだった。
「うふふ、この世界を滅ぼす子達が・・・ふふ。ごめんね。アキラ、私もう力になれない」
「?」
「だからね」
トウカはそういうとすっと姿を消した。
アキラはそれを見てため息を付いた。
「とうとう、アバターを捨てて異世界に戻ってしまったか。あっちでどんなバケモノを生むつもりなんだ。あいつは・・・」
アキラは困ったように言った。
そこに一人の男が姿を見せた。インキュバスの男である。
「アキラ様。どうします?」
「そういわれてもな。あれはもう元の世界にというか自分の世界に戻った。俺の手が出せるようなところではないよ」
「ふむ・・・どうします?」
「まあ、“暴食”の私兵を使って誤魔化すしかないだろうな」
アキラは肩を竦め、苦笑いを浮かべていった。
「他の魔王候補を探せ、“勇者”が予想以上にやっかいだっただけだ。気楽に攻めるさ」
アキラはニヤニヤ笑った。
「“暴食”や“憤怒”がいる。まあ、奴らの力がなんなのか、わかればどうにかできるだろう」
アキラはのんびりと呟いた。
「あら思ったよりもうまくいっていないようね。“強欲”」
「仕方ない。上手くいかないものはしょうがないだろう、“傲慢”」
声がかかった方をみた。そこには嬉しそうに笑う女性がいた。偉そうな態度。アキラが声をかけたが、結局はちゃんと仲間にならなかった女だ。
「“怠惰”には裏切られ、“嫉妬”は死亡。“色欲”は逃げ出した。七人の魔王は無能ということね」
「まあ、この結果を見ればそうなるな」
「それ以外に何かあると?」
「まあ、今回の件はすべてが無駄になった。“勇者”がかなり手ごわいのがわかった。それだけでも十分な戦果だと思うが?」
「そういうことにしておきましょうか?」
「まあ、“嫉妬”は」
アキラがそういうと右手を振った。
そこに裸の男が天井から落ちてきた。ばたんという音を立てて、床に転がった。
「“蘇生”ね。秘術のはずだけど?」
「秘術の割にはいろいろな所で見受けられるからな。俺の魔法ができなくはない」
「まったく、知識に関してはほんと貪欲ね」
「色々と助かっている」
アキラはそういうと床に転がっているそれを蹴った。
「うっ・・・なんで生きている?」
「何を言っている。お前は死んでいるだが、お前のデータは使えるので、そのまま使っただけだ。以前の自分と同じものだと思うなよ」
アキラはそういうと欠伸をした。
「お前は俺の命令には逆らえない体にした」
「ふざけるな!」
それは怒ったように言った。それを聞いて、アキラは肩を竦めた。
「死んでもバカは治らんようだな。まあ、それでもいい。お前の力はまだ使えるし」
アキラはため息を付いた。
「面白いこともできる」
それを聞いて、眉をひそめた。
「お前、俺で何をしようとしている」
「言っているだろ?お前は以前のお前ではない。気が付かないのか、以前よりも圧倒的に少ない魔力を」
「なんだと?」
それを聞いて、それが顔色が大きく悪くなった。
「なんだよこれ、ただの雑魚じゃん」
「そうだ。お前は・・・いや、お前らは“魔王”の力をしっかりと使えるようにしてやる」
「何を言っていやがる?」
アキラがいうとそれの顔が大きくゆがんだ。
「なんだこれ、なんだこの力は・・・」
「嫉妬の力だな。お前は劣等感を覚えれば、覚えるほど強くなる。それを使って強くなれ」
アキラは静かにいうと、ソレはニヤッと笑った。
「なるほど、これが俺の本当の力ってわけか・・・魔力は落ちたが、これならなんとなりそうだな・・・ってすぐに下がる」
「まあ、お前の気持ちに直結する力だからな」
「うぜえが、要領はわかった。だが、お前にさか・・・ガガ」
ソレは逆らう意思ができたのか、体を震わせた。
「ガガ・・・くそが」
ソレの目に怒りが混じっていく。嫉妬の力が強くなっていくのを感じた。
「ぜってえ許さねえ」
「好きに言ってろ」
アキラは冷たく言い放った。見下ろすように見つめていた。
ソレにとって、ソレがとても悔しく、嫉妬心が刺激されてきた。そういう存在が羨ましくて、羨ましくてしょうがなかった。
「お前はゆるさねえ」
「それでいい。それだけでお前は強くなれる」
アキラは静かに言った。
ソレは悔しそうにすると、立ち上がって歩き出した。
「じゃあな。偽物」
アキラはカズヤ・シロキのデータを読み取って生み出したカズヤ・シロキに本質的に似た何かに向かって言った。
記憶も引き継いでいるので、自分がクローンであることに気が付かないのかもしれない。気が付いて、そういう風に動いているのかもしれない。
哲学的なことはよくわからないが、それは以前のカズヤ・シロキとは別物ではある。
さすがに魔力を与えることはできなかったが、“嫉妬”の力を付与することはできた。それだけで十分な戦力になるだろう。
「補充要員はあれでいいか」
アキラは静かに言うとインキュバスの男を見た。
「効率のいい素材が欲しい。確保に行け」
「はい」
アキラの言葉にインキュバスは嬉しそうに頷いた。




