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勇者パーティー in ワルシャル竜王国 7

勇者パーティー in ワルシャル王国 7



「いらっしゃい・・・お兄さんがた」



 やたらとゴツゴツとした装飾がついた槍をもった男がいた。


 その槍には多数の七色の竜の鱗がついていた。明らかに魔道具ですといいたげな槍というか矛だった。


 その隣には立派な金の装飾がされた大剣を持った青年がいた。かなりの美形だ。


「なんだ、てめえは?」


「お前が勇者か?」


「随分、よわよわしいな」


 三人の仲間である男たちが言った。全員、俺の仲間である。


 経緯はいろいろであるが、基本貴族出が多い。装備もかなりいい装備をもっているし、腕もたつ。


「何者だ?」


 俺が尋ねると大剣を持った男はニコっと笑って言った。


「勇者です」


「生意気だ!」


 俺はその優男を潰すために距離をつめ、シャムシールを振り下ろした。


 カン。


 その一撃を簡単に防ぐ。ただのガキではないらしい。ゼロ距離で炎の魔法を放とうとして・・・


 距離をとった。


 何かされるような気を感じたのだ。実際は何もされていない。


「散」


 勇者はいうと俺の体が衝撃を受け拭き飛び、いや、よろけた。そこまでではない。


 しかし、好きとしては十分だ。そいつは間合いを詰めて、大剣を振り下ろした。片手だ。


 なめてやがる。俺も片手で対抗し、抑えるが奴が左手の何かを飛ばしたので片手はじく。それを見て勇者は距離をとった。


 魔王を練ろうとしたが、何かが飛んできた。


「シツコイ!」


 剣を振り下ろしてその何かをはじいた。投擲武器をもっているらしい。


 しかし、それが何かほとんど魔力を感じなかった。目を凝らしていないとわからないレベルの魔法のようなものだ。


 勇者特有の魔法なのだろうか?


 後ろに気をやると、隣にいた槍使いが、俺と連中の間に立って奴らが貫けない強力な防御壁をはっていた。


 勇者どのは俺との一対一をご所望らしい。結構なことだ。


 無詠唱の火球呪文をはなった。大型のモンスターを一撃で倒せる呪文だ。それを大剣で吹き飛ばした。


「やるねえ」


 一撃になることも少ないはないが、それは完全なスキを作った時だけだ。こういう時はいい敬遠になる。


「うらあ!」


 曲刀を振り回し、剣撃をはなった。二、三度はなったが器用なことに片手で俺の攻撃を防ぐ。


 だが、4度目の攻撃は受け止めきれず、そいつは両手を使って下がった。


「ようやく両手か」


「ええ」


 俺の腹に何かが刺さったような気がした。勢い余ったまま、やつがいた場所まで立っていた。


 何かしかけていたらしい。


 剣の浮遊魔法・・・でも、何かがおかしい。浮遊魔法ならそれ自体に様々な術式が絡む。


 だが、そんな様子は見て取れなかった。 


「これは・・・」


「散」


 さっきよりもでかい爆発。何よりも、魔力が一気に削られた。


 俺の魔力を使っての爆発魔法。聞いたことはないが、こんな切り札を抱えていたとは・・・


 意識が持っていかれそうだが、あの勇者がこんな無様な所を見逃すはずがない。右手の曲刀で大剣をなんとかバランスを崩しながら受け流し、地面に剣を落とす。


 もらった!


 カン!


 魔法防護壁が張られ、左手の曲刀が弾かれる。


「バケモンが!」


 無詠唱で炎の呪文を放った。


 奴はたまらず地面を転がり、ぐるぐる回って立ち上がった。転がる間に回復魔法をかけたのた、傷は大分よさそうだった。


「あなたも大概ですよ」


 すこし地面の埃で行けた面を汚しながら、奴は嬉しそうに言った。


 いい目をしていやがる。戦士の目だ。飢えた狼よりも、正義を自分の意志を貫くための決意の目。


 俺やラプサムとは違った目だ。


 俺たちはこんな戦士ではなく、狼だった。なんだってしてきた。


 それが奴が猟犬で、俺は野良狼。それくらいの差なのに、あいつは猟犬を選んだ。


「初手でアレが理解できる人はあなただけです」


 勇者が突きを放った。かろうじて避けるが、見えない刃が一気に魔力を持って行った。


「くそが!」


 魔力もそうだが、それと一緒に集中力を持っていかれるのがやばい。


 振り回されて、剣を止めた。両手のシャムシールで。


 しかし、足に何かが刺さった。殺気の武器だ。魔力が座れ、爆発する。


 踏ん張りがあまり効かない俺は両手の曲刀をはじかれる。その前に気合で腕力に魔力を集め、やつの大剣に負荷をかけて腕だけで後ろに飛んだ。


 着地して、無詠唱で回復魔法をかける。


 意識が飛びそうだが、なんとか、奴に意識を向けた。やつは明後日の方をむいていた。


 何か気になることが・・・


 フェミン?なんで、裏切り者というか、俺たちのギルドを抜けたあいつが奴の仲間を戦ってんだ?


 つうか、あいつら息がっていた割にはもうやられている。三人の無力化された男たちが転がっていた。


 “灰猫”がいるなら大丈夫だろう。しばらくは、もつ、その前にこいつを・・・


 傷はなんとか、なっているが魔力がやばい。


 “勇者”ってのはこうもバケモノなのかい?くそう。


 勇者はこっちをみると剣を振り下ろした。片手の曲刀では抑えきれない。


 もう片方で切ってみるが、すっと離れ、距離をとった。曲刀が空を切る。


 剣術の基本に忠実な技だ。


 だが、俺の変則的な技は変則的な故に初手は強いがなれてしまえば、御しやすい。手数は俺の方が多いが、それを上回る一撃の重さと、再攻撃の速さ。


 手数の差は1.5倍。剣の重さは奴が上。


 重さで押し、さらに謎の浮遊武器が俺を襲う。


 形状が剣から槍に代わり、次々に貫かれる。なんとか、気力を持たせようとするが、その槍は致命傷にいたらないものの、魔力を減らす。


 これが“勇者”。


 戦いの中で工夫をはじめ、どんどん進化をし始める。


 剣の腕も俺と変わらなくなってきている。いや、逆に押されている。魔力の欠乏だけじゃない。


 こいつ、俺の剣撃に完全に慣れてきている。フェイントを入れながら、誤魔化しているが、やつに全く届かない。


 くそう!


 なんとか、魔力を絞り出し、距離をとった。


 やつは平然としていたが、やつからも距離をとって、仲間に回復魔法をかけた。


 フェミンの方を見るとあの若造の両足を奪ったらしい。両足を奪われては不便だろうと回復させたのだ。


 にしても、あいつの槍捌き何者だ?


 足を怪我したまま、フェミンを追い詰めやがった。


「サンキュ」


「気にすんな」


 立ち上がりながら槍使いは嬉しそうに勇者に返した。それだけで仲のいい友人を思わせた。


 俺とラプサムを思い起こした。


 あいつはいない。あいつは・・・レミアと一緒に行きやがった。


 あいつらは裏切り者だ!


「うぉぉぉぉ」


 全身に魔力を巡らせて身体強化を図った。それと同時に体から炎が噴き出した。


 俺の魔力は火の精霊力を含んでいるらしい。こうすることで俺の体は炎に包まれ、さらにスピードも上がる。


「ヴァルキリーの纏いに近いのか」


「死ね!」


 俺は一瞬で間合いを詰めると曲刀を振った。ガンっ。


 俺は驚愕した。止められない一撃だと思ったからだ。この技についてこれる人間はいないはずだった。


「皮肉だね。あの奥さんの方が早くて正確だった」


「何を言っている?」


 この俺よりも早い打ち込みをしてくるものがいるのだろうか?


「そして、次期将軍様よりも力がない」


 なんだと?何を言っている。俺は精霊の契約者共よりも早く・・・


 次期将軍、そして、その義妹、剣姫。


「バカな・・・」


 ラプサムが敵にしてはいけない候補だった。俺よりも弱いはずだった。


 なぜなら、人を越えた力をもつ炎身は光の契約者よりも早いと言われているはず。それよりも適性のあるものがいるのか?


「そうそう、二人とも精霊を纏えるのは国家機密だったね」


「だけど、あなたのその力は参考になった」


「何?」


「魔力の、暴力的までに高い魔力をそこまで身体強化にはかるとそんなことになるなんてね」


「何を言っている?」


「マジであの人が怖いな」


 勇者は俺の体に蹴りを入れた。


 勇者の蹴りで俺の体いっきに吹き飛んだ。壁に叩きつけられた。


「ふざけるな」


 全身に張り裂けそうな痛みを感じながら立ち上がる。怒りが俺に力を与える。


 全身を巡らせた魔力が体を癒す。


「さすが、勇者候補」


 勇者はそういうと剣をこちらに構えた。剣に何らかの力が溜まる。


「何をする気だ」


 何かをさせないために間合いを詰め、殴りつけた。勇者はそれをためている途中の剣で防ぐ。


 同時に俺の力をうまく受け流して、距離をとる。すでに俺の動きについてこれている。


 俺の剣撃を受け止めず何とか避けている。そこに綺麗さはない。逃げ回るだけだ。


「どうした勇者!なさけないぞ」


「そんな人外剣無理ですよ」


 というか、剣で受け止められないから、そんな動きになってしまっているのは明らかだ。


「ふざけるな!」


 俺が大技に移ろうと剣を振り上げた時、一瞬、勇者が消えた。


 そして、大きく何かが消えて言った気がした。いや、ただしくは全魔力が吹き飛ばされたのだ。


 体から・・・


「バケモノめ・・・」


 俺はうめいて言った。


 “勇者”は何か言っていたが、俺にはよく聞こえなかった。「おく・・」がどうとか・・・


 俺にはきっと、わからん会話なのだろう。


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