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感情複合バッドステータス4

 フライパン片手に炎と対峙する。

 筋肉を弛緩させるほど手馴れてはいないし、逆に緊張させるほど経験は浅くもない。つまり、可もなく不可もなくの通信簿の三みたいな技能ではあるけれど、気を抜くと目玉焼きがさにーさいどあっぷあっぷになるのは予想できるので、こうして僕は大人しく月見に興じているのである。もちろん、他の食材は既に救済措置を施してある。痛んでないかと心配だったけれど、きっとそれは杞憂かもしれない。だって、リビングの空調がぎんぎんに効いていたし。

「あー、温まった」シャワーを終えた揃姉が入室する。もちろん、背中を向けているので姿は視認できない。「くそう油断した。お前を注意した私があの様とは……、本末転倒だな」

「まあ――お仕事お疲れ様です、って僕にはそれしか言えないけれど」揃姉に殴られた後頭部が痛覚の妄想を訴える。「コーヒーは?」

「頼む。生でな」

「は?」

「いや、悪い」いつもよりは二倍増しの低い声で、『まだ寝ぼけているな……、しかも酒も抜けていない、最悪だ』と、揃姉は呟いた。

 僕は肩を竦めてから、目玉焼きをフライパンから皿に移動させる。食材のほとんどが肉類だったのが妙に納得できる台詞だった。桜田門の諸君であるところの揃姉が、よもや飲酒運転なんぞしていないだろうな? と、訝しんでみたけれど、それは皆無と判断して間違いないだろう――というか絶無だ揃姉の場合。生まれながらにジャスティス仕様だし――余計な詮索をしたことを反省。美味いコーヒーを淹れることに専念する。

 僕と入れ替わりに揃姉がぺたぺたとフローリングに足音を残して、一人分の目玉焼きを押収する。

『鑑識に連絡を!』などど、そんなリアルな冗談を揃姉が言うことはなく、目玉焼きを一瞥したあと、踵を返して黙ってテーブルの席へと戻った。ちなみに、ワイシャツ一枚でした。うほっ! コーヒーの隠し味は酸化した体液に決まりですね、奥さん――

 ジョークだらぁ。

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