第14話 冒険者ギルドでステータスでざわざわ、あとはテンプレートだよね。
《 おはようございます。
我が主、ウーノ家で一泊しました。
犯人は、次男の嫁でした。
サネモルは見た! 『あらいやだ・・・』
それと、トイレ掃除をすることにしました。 》
送信
--ピロン♪ ピロン♪
《 サネモル、その台詞は懐かしい響きである。
我も毎週土曜日は楽しみにしていたのである。
それよりも、トイレ掃除はやるなである!
トレットのせいで、我がここにいるのである。
トイレを綺麗にすることは、我に反逆することと同じである。
二度と掃除をせず、むしろ汚すのである。 》
スタンプ:『おこっ!』
しまった、だんだん設定を忘れていた。
デスペとのやり取りは、従順な配下サネモルだったわ!
デスペ怒ってるなぁ…。
《 我が主、これはレイオットに強要されたことでございます。
少し疑われておりまして、踏み絵のようにトイレ掃除をさせられて
苦痛でございます。
お許しください。 》
スタンプ:『めんごめんご』
送信
--ピロン♪ ピロン♪
《 なんと、レイオットとやらは酷いのである!
サネモル、疑ってすまぬのである。
いつか恥辱まみれにしてやるのである!! 》
スタンプ:『げきおこっ!!』
デスペの矛先が、俺になった。
まあ、元々俺は狙われてるのだけど。
つーか、酷いのはお前だろうがっ!!
あー、もうデスペの相手が嫌になってきたぁ。
よしっ!! 気分転換を兼ねてトイレ掃除やるぞぉーっ!!
【ヘェアリーサークル】すると、まだみんな寝てるな。
ウーノさんに周知してもらう前に、実力を見せてやろう。
レイオット!、ゾーンに入りますっ!!
『それはさておき~♪』
~Gの集うトイレ~
そこはひとときの安らぎを求める場所だった。
しかし、今はかつての輝きを忘れくすぶっている。
扉はきしみ、カギが壊れている。
なにより、小さな黒い生物のうごめきを感じるため、落ち着いて座ることすらできないトイレ…。
今日の匠『トイレの空間魔術師レイオット』
匠はこのGの集うトイレをどう変えるつもりなのでしょう。
・・・・・
まぁ、なんということでしょう!!
天井に張り巡らされたクモの巣は取り払われ、壁や床はピカピカに磨かれ、まるで光の教団の大神殿。
しっかりと個室を守る新しいカギが取り付けられた頼もしい扉を開くと、おかえりなさいと蓋を開けて待ってくれているのはU型の便座。
そこに、Gの居場所なんてありません。
これからはこの空間でウーノ家の人々は、一人の時間を快適に過ごせることでしょう。
…うん、やりすぎた!
一時間みっちり掃除した、G達には荷物まとめて立ち退いてもらった。
駄メイド達にバレると面倒だから、部屋に戻っておこう。
あー! すっきりしたぁ~♪
次は、セバスチャン達が使ってる使用人用のトイレだな。
世界中のトイレを清潔で落ち着く環境にしていくぜ!!
『一方、その頃…』
『よくぞ、ここまできたな…勇者チョロスよ。』
「魔王ドゲザノス…っ!!! お前の命運もここまでだっ!!!!」
『くくっ、それはどうかな……』
--スー
「っ!! ……それは何のつもりだっ!!」
『すまないっ!! 許してくれぇ~!! 俺は魔王なんてやりたくなかったんだぁ~!! 邪神に無理やりやらされていたんだぁ~!!』
「なんだとっ!? …しかし、村が魔物に襲われているのは、お前の仕業だろ?」
『仕方なかったんだぁ~!! 許してくれぇぃ!!』
「そんなに、両ひざをついて頭を平伏している者を切るわけにはいかないっ!! 俺はここには来なかった…。 お前も早く魔物達を連れてここから消えろっ!!」
『勇者チョロスよ、すまないっ!! この恩は忘れないっ!!』
「ちっ! 早く行けっ!!」
・・・・・
『行ったか…』
『ぎぃ!』
『我の土下座魔法の前に、敵はいないということか。 よし、魔物達よ、勇者チョロスにバレないように進軍せよ!! 我の支配はもうすぐじゃ!! わっはっはっ、わーっはっはっはっ!!!!!』
『それはさておき~♪』
食堂にて、今回は料理長が自ら食事を持ってきてくれた。
一応、浄化もさせてもらった。
「おはよう、レイオット殿…、トイレがリフォームをしたかのように見違えておるのぅ。 昨日の夜に話したばかりなのに、仕事が早いのぅ。」
「いえ、朝から清々しい気持ちになってほしかっただけです。 ちょっとだけ張り切って掃除をしただけですよ。 あ、扉のカギは修理させてもらいました。」
「……ピッカピカだった。」
「昨日、Gを見てしまったの。 だから、レイが掃除してくれたって聞いて安心したわ。 レイがGを許すはずないもの。」
「うん、Gが悪いわけではないよ。 だけど、トイレでうろうろされると、トイレのイメージが悪くなる。 俺はそれが嫌なんだ。 今頃、Gはもっと汚いところを見つけて……」
--きゃーっ!! --ぎゃあっ!!
各所で悲鳴が聞こえる。
--バタバタバタバタッ! ガチャッ!!
すごい剣幕で、駄メイドAがあらわれたな、俺たちがいること知らなかったみたいだ。
どうしたんだろ。
「なんじゃっ! ノックもせんと、行儀の悪い!! それに騒がしいぞっ!!」
「す、すみませんっ!! 大旦那様、私たちが使っているトイレや…、奥様やお坊ちゃんの部屋にGが現れまして…。 厨房の裏口にある物置に行くのに最短距離だったもので…。 すみません、お食事中だったとは。」
あ、他の場所に居心地の良いとこを見つけたのか。
「ふん、お前達が普段から掃除をサボっとる証拠じゃろう。 食事は料理長に持ってこさせたわ。 お前達に運ばせたら何を入れられるか分からんからのぅ。」
「っ! それは、どういう意味でしょうか?」
顔色がころころ変わってるけど、ポケットに毒薬入れたままだからなぁ。
ポケットに小瓶ぐらいの膨らみがある。
いつでも毒を盛れるように持ち歩くって、どんだけ油断してるのか。
「さてのぅ、ほれ、ここは食事中じゃ。 物置に行きたいなら向こうから回るがよい。」
「……、はい、失礼いたします。」
パタパタパタっと、駄メイドは出て行った。
ウーノ爺さんも、ポケットの毒薬には気づいてそうだな。
「…セバスチャン。」
「はい、かしこまりました。」
あうんの呼吸で、セバスチャンがどこかへ出かけた。
おそらく毒の出所を突き止めて、それから役所に訴えるのだろう。
駄メイド達も近々、一新されそうだな。
「ワシが知らんうちに解雇された使用人達がおるようじゃ。 その者らに戻ってきてもらうように手配しよう。」
家のことはビアンカに丸投げしてたツケではあるけど、ウーノ爺さんもここまでされるとは思ってなかったんだろうな。
食事を終えた俺は、とりあえず使用人用のトイレ掃除をしてピッカピカにしてやった。
駄メイド達は、しぶしぶお礼を言っていたけど、お前らのためじゃない。
トイレのためだ。
G達には悪いけど、とりあえずビアンカとダートの部屋にでも行ってくれ。
あいつらがすぐに証拠を出すとも思えないが、駄メイド達が首になれば何か動き出すかもしれない。
それまでは、ヘェアリーサークルで気をつけておけばいいだろう。
今日は、いよいよ冒険者ギルドだ。
どんなところか楽しみだ。
デスペのメールは、しばらく業務連絡だけしておこう。
『それはさておき~♪』
冒険者ギルド、職を持たないある意味でも冒険者な人達が集う場所。
薬草集めや、荷物運びに始まり、商人の護衛や魔物狩りまで様々な難易度のクエスト(任務)があり、クエストの成功率や受注回数で、ランクが上がったり、下がったりするらしい。
アラソニークの町には、Cランクの冒険者が多いんだとか。
俺はもちろんFランク。
アクアもトトの町でノッカー達が死亡届けを出したせいで、記録が消されたみたいで、Fランクからのスタートだった。
「以上で、冒険者制度の説明を終わります。 何か質問はありますか?」
事務的な対応のお姉さん、すらっとした長身のモデルみたいだ。
メガネをくいっとしながら、パソコンのような魔道具に何かを入力している。
「いえ、特にありません。」
「では、こちらの水晶に手をかざしてください。」
パソコンとつながっている指紋認証装置の水晶バージョンか。
ファンタジーだけど、なんか現代風な物があるのは俺以外にも転生者が過去にいたのかもしれないな。
俺とアクアが順番に手をかざす。
【レイオット】
ねんれい: 15才
しょくぎょう: 総合格闘家 屁魔法使い
せいべつ: おとこ
レベル: 61
【アクア】
ねんれい: 17才
しょくぎょう: 魔法使い
せいべつ: おんな
レベル: 48
ステータスは、レベル表示までか。
能力やら加護が表示されなくて良かった。
よく考えたらもう少し警戒しないといけない場面だったかも!
アクアは、レベル48か差を縮められないように頑張ろう。
「レベル6じゅっ……!?」
--ざわっ
あれ?、受付のお姉さんが震えている…?
「お、お二人は、失礼ですがその若さで、どうやってそんなレベルになられたのですか?」
「えっ? いや、不思議の…「ごめんなさい、それは秘密です。 レイ、冒険者が簡単に手の内をさらしてはダメよ。」
「えっ、そうなんだ。 アクアありがとう。」
「失礼しました。 お二人のレベルが……いえ、ではこちらが冒険者証になります。(あと、屁魔法のことも聞きたかった…)」
--ざわざわ ざわざわ
(6じゅっって、あの若い奴60レベル越えてるのか?)
(うそだろ?、Bランクの奴でもそこまでレベルいってねぇよな)
(ああ、Bランクだと平均50レベル…)
辺りが騒々しくなってきたので、退散しよう。
アクアと俺が出ようとしたとき…
--どんっ!
「ってぇなぁ、ガキがっ!!」
ひょろ長い20代後半のお兄さんが、俺にぶつかった反動でしりもちをついてしまった。
「あっ、すみません。 大丈夫ですか?」
手をさしのべると、ぱんっと払われてしまった。
「おいおいおいおい、うちのコーブンにひどいことをしやがる。 コーブン、大丈夫か?」
がっしりした体格のヒゲ面のおっさんが、コーブンの手を持って立たせた。
「あいててて、兄貴ぃっ、肩が折れてやすぅ。」
折れてるってひ弱すぎだろ。
「なにぃっ!? おーや、これは本当に折れてーら。 おい、坊主っ!! この落とし前どうつけてくれる?」
ええぇー!!
--ざわざわ ざわざわ
(あいつらはCランクのオーブンとコーブン!)
(新人相手にいつもああやってタカるんだよなぁ。)
(しっ、おい声が大きい。 アイツらの後ろにはBランク……)
またざわめきだした。
「落とし前って…、どう見ても折れてませんけど、治療しましょうか? すぐ治りますよ。はい『超善玉菌操作』」
コーブンが最近つけたであろう生傷まで綺麗に治った。
「兄貴ぃ、どこも痛くなくなりやしたぜっ!? こないだの傷まで綺麗に…!」
「バカかおめぇはっ! 治ったらダメだろうがっ!! おい、坊主、確かに外傷はなくなったようだ。 だがな、さっき受けてしまったコーブンの心の痛みはまだ治ってねぇはずだ。 さあ!どうしてくれるんだよっ!?」
オーブン、どや顔で言うことじゃないよ。
うわぁ、面倒くさー!!
「どうもしませんよ、アクアは物じゃないし、お金も払う必要ないですし。 もういいですか?」
「受付のお姉さん、すみません、なんか変なのに絡まれてるんですけど…」
「冒険者同士の争いは、刃傷沙汰でなければ話し合っていただくしかありません。 できればギルドの外でお願いします。」
アクアが聞いてくれたけど、やっぱり事務的な対応か。
「おう、姉ちゃん! ちょっと可愛いからって変なのとはなんだ!」
あちゃー、アクアに飛び火した。
面倒だし、とりあえず静かにさせよう。 ほい、【ナニカ支配】
--ぷっすぅ~ --ぶっ!
「「 ぐっ! 」」
「お腹の調子が悪そうだし、終わりにしませんか?」
「てめぇ、ふざけん…」
--きゅーきゅるきゅるきゅる --ごろごろ
「「 あふんっ 」」
(おい、あいつら急に腹を押さえてあふんあふんって気持ちわりぃな。)
(ぶはっ、やめろ我慢してんだから。)
(笑いを?ナニカ?)
(やめろ、くだらねぇ。 くくっ)
外野が二人の変化に気づき始めた。
ほらほら早めにトイレに行かないと大惨事になるぞ~♪
「おい、アクア行こうか。 この人達は用事が出来たみたいだし。」
「へえ、『用事』ねぇ。 ぷぷっ、あんた達もう話しかけて来ないでね!」
「まっ! 待てお前らっ!! まだ話の途中だろうがぁっ…!! ぐっ!」
叫ぶのはお腹に良くないよ、経験者だからわかる。
オーブン達をどけようとしたところで、入口が急に暗くなった。
「おいっ、お前らっ!!うちのギルドで騒いでんじゃねぇぞ!!!!!」
熊だっ!! 熊が現れたぞぉっ!!!




