表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/111

英雄伝「乙女と海賊」

※パラーニャ語の文章を作者が日本語に翻訳しています。

010「乙女と海賊」



 私はメッティ・ハルダ。

 エンヴィラン島に住む、本が好きな十四才です。島では「ハルダ雑貨店の長女」と言った方が通りがいいです。

 一応、将来は科学者になることを夢見ています。

 まあ、そう簡単になれるもんじゃないんですけど。



 私は本土の大学を受験するために船に乗りましたが、凶悪な海賊の襲撃を受けてしまいました。

 なんとか海賊に捕まるのだけは免れましたが、おかげで無人の船で漂流することになってしまいました。

 正直、とても怖かったです。



 でもあの人が、私を助けてくれました。

 皆がもう忘れてしまった古代語をしゃべる、異邦の……でも、とても優しい男の人。

 私のニホ語はだいぶ訛っているそうで、あの人にどんな風に思われているのか少し不安です。

 変な子だって思われてないかな?



 あの人は私を救助してくれただけでなく、私の願いを聞き入れて他の子を助けてくれました。

 あの劇場での光景は、今でも忘れることができません。

 崩れ落ちた天井から差し込む光に照らされ、舞台の上で微笑むあの人。

 まるで神話の一場面のようで、とても神々しかったです。

「もう大丈夫だ、何も怖がらなくていい」

 そう微笑まれたときには正直、ドキッとしてしまいました。

 思い出すだけで、今でも胸が高鳴ります。



 でも、こんなにいろいろしてくれたのに、あの人は私たちに何も見返りを要求しませんでした。

 ただ、「助けたかった」とだけ。

 海賊も奴隷商人も……いえ、この世の理不尽や恐怖の何もかもを打ち砕く、鋼のような頼もしさ。

 それと同時に、まるで神話の聖者のような優しさも備えていて、まるで……うーん。

 本当に不思議な人です。



 あの人は捕まっていた女の子たちを、みんな故郷まで送り届けてくれました。

 その後の予定は特にないそうです。

 あ、そうだ。



 エンヴィラン島に来てもらうのはどうでしょうか。

 私の命の恩人だって言えば、たぶん町の人たちも怖がらないでしょうし。

 行くあてがないみたいだから、安心して休める場所を提供できたら、少しは恩返しができる気がします。



 それに、あの不思議な空飛ぶ船のことも、もっと調べたいし……。ふふふ、あの船凄い。

 パラーニャだけでなく、近隣の国にあんな船を造れる技術力はありません。絶対に無理。

 だからあの人と船は、どこか遠い世界から来たに違いありません。

 本人たちもそう言ってますし。



 エンヴィラン島には昔から、遠い世界から来た不思議な旅人たちの伝承が残っています。

 ニホ語もそうで、私たちの先祖が使っていたと伝えられています。

 そう、私は遠い世界からやってきた不思議な人々の子孫。

 ということは、あの人とも遠い親戚なのかも知れません。



 うん、やっぱりエンヴィラン島に滞在してもらいましょう。

 そして、遠い世界の発達した科学をたっぷり学べば……大学に行くより、よっぽど勉強になりそうな気がしますよ!

 よーし、未来が開けてきたかも!

 ふふふ。



 やっぱりあのとき、最後まであきらめずにがんばって良かった。

 ありがとうございます、艦長。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 関西弁を使ったキャラクターに二重性を持たせる構成は非常に上手いやり方だと思う。
[気になる点] 艦長が戦闘指揮所にいないのに武装(30ミリ機関砲?)が使えてる謎
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ