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おっさんに恋するリリナ4 過労

 リリナはお母さんを湯治で有名なリゾート地の病院に預け、妹リリカを全寮制の学校に入れ、二人に別れを告げダンジョンへと向かった。

 背には、重量軽減の護符を入れた金貨を満載したリュックを背負って。

 

 パーティーメンバーはギルドのトップクラスの強さを誇るメンバー五人。

 一人あたり金貨二〇枚で雇った。

 

「よろしくお願いします」

「ボス前部屋に連れて行くだけなのに金貨二〇枚も貰っていいのか?」

「うん。ただ、向こうで待ってる人が居るから、なるべく急いで連れて行ってね」

「おう! 任せろよ! これだけ報酬貰ったら頑張らない訳が無いだろ!」

「そうだ、そうだ!」

 

 街から一番近い、難易度中級のダンジョン攻略は、普通三日ぐらい掛けて行う。

 リリナが雇ったパーティーメンバーはトップクラスの強さだけあってかなり火力が高く、本来は三日掛かる攻略を一日で済ませた。

 さすがギルドトップクラスの冒険者だけは有る。

 ボス前部屋に着いたが、おっさんの居るはずのダンジョン宿屋はなかった。

 ボス前部屋が宿屋と繋がっていなかったのだ。


「ハズレだ……」

「あのー、もう一周お願いしていい? ちゃんと金貨は払うから!」

「もちろんさ! お前さんの思い人が待ってるんだもんな! 次は金貨一〇枚でいいぞ!」

「ありがとう! お兄さん!」

 

 そして二周目……またしてもおっさんの宿屋には行けず。

 一気に疲れが出てへたり込むリリナ。

 

「もう一周いい?」

「こっちも宿屋が出るまで付き合ってやるから! 次も金貨一〇枚でいいぞ」

「ありがとう!」


 三周目……やはりダメ。

 結局七周目も出なくて、疲れ果てたパーティーメンバーは『疲れ果てた』と一言だけ言ってパーティーを解散して帰った。

 その日、久しぶりに家に戻ったリリナは枕を涙で濡らした。


「おっさんに会いたいよ……おっさん……」


 それからもリリナは、冒険者を雇い続けダンジョンに潜り続けた。

 何度も何度もダンジョンに潜り続け、敵との戦闘を繰り返しているせいか、徐々に徐々に強くなる。

 ボス前部屋の宝箱から手に入れた指輪を使う事で、いつしか使えなかったはずの魔法が使えるようになっていた。

 最初こそお荷物だったリリナは、雇ったトップランクプレイヤーに匹敵するほどの強さへと成長していた。

 だが何度潜っても宿屋には辿り着けずおっさんとは出会えなかった。

 

「会いたいよ……おっさん……」


 長い旅はリリナの体に異変を引き起こす。

 リリナは体の異変に気がついた。

 

「僕の体、傷だらけだし、もの凄く筋肉質になってしまったよ。こんなにガッシリした体になったら嫌われちゃうかな? でも、おっさんの事だからこんな僕でも嫌わないはず! 絶対大丈夫! 体の事なんて気にせずにガンガンとダンジョンに潜らないとね!」


 リリナはガムシャラにダンジョンに潜り続ける。

 目が開いている間はずっとダンジョンに潜り続けている感じだ。

 

「疲れなんて気にしていられない! とにかく回数をこなさないと!」


 パーティメンバーを雇い続けた事で、少しづつだけど確実に減っていくお金。


「はやくおっさんの所に行かないと、お金なくなっちゃうよ! このお金は僕のお金じゃなくておっさんのお金なのに!」


 リリナは節約を始めた。

 今までは五人か六人の冒険者を雇って速度優先で攻略してきた。

 お金を節約する為に雇うパーティーメンバーを四人、三人、二人へとへらして、今は一人だけを雇っている。

 戦力が減った分はリリナが穴埋めする。

 それが出来るぐらいリリナは成長していた。

 

 今日は白銀のフルプレートを着た女性剣士がパーティーメンバーだった。

 元騎士団所属だったらしくリリナに劣らず強い。

 なんで冒険者家業をやっているのか解らないぐらいの、デタラメ過ぎる強さだった。

 そんな彼女と食事休憩中に少し話した。

 

「ダンジョンの奥には宿屋が有るんですか!」

「そうなんだ。とっても美味しい料理を出してくれる宿なんだよ」

「食べてみたいです」

「でね。そこの宿屋の主人は、僕の旦那様なんです」

「そうなんですか! ぜひ会ってみたいです!」

「とってもいい人なんだけど、手を出しちゃダメよ」

「ええ。騎士として、どんなに素晴らしい殿方であっても、人様の旦那様には絶対に手を出しません!」


 楽しいパーティーだったが、やはり宿屋には辿り着けず。

 それでもリリナはダンジョンに潜り続けた。

 寝る間を惜しんで毎日潜り続けた。

 体が疲労で悲鳴をあげても潜り続けた。

 でもある日突然限界がやって来た。

 朝起きると起き上がれなくなった。

 猛烈な吐き気と眠気。

 リリナは一週間寝込んだ。


「おっさんに会いたいよ。こんな事をしてる暇は無いのに!」


 お医者さんは最初こそ過労と診断していたけど、別の原因だった。


『妊娠』


 おっさんの子だ。

 大好きなおっさんの子。

 僕とおっさんの子供だ。

 その子が僕のお腹の中に宿っていた。

 僕は嬉しくてたまらない。

 

「僕はおっさんの子供を身籠っていたんだ! 早くおっさんの元に行きたい」

 

 だが医者はリリナに残酷な宣告をする。

 

「もうダンジョンには潜ってはならん。どうしてもダンジョンに潜るというのならば、その子を流産する覚悟をしてから潜るんじゃな」

「おっさんと僕の子なんだから、ちゃんと産みたいよ!」

「産みたいなら生まれるまではダンジョンに潜らない事だ。ところで相手の種族はエルフでは無いようだな?」

「人間族です」

「人間か。人間とエルフの間の子供は安定期に入りにくくて、堕ちやすいから注意するんだぞ」

「堕ちるって流産?」

「そうだ」

「そんな……」

「無事に産みたいのならば、産まれるまでは美味しい物を食べて安静にすることだ」


 無理をすると流産してしまうので、リリナはダンジョンに潜るのを諦め母の居る病院へと向かった。


「お母さん、元気そうだね」

「リリナのお陰で元気になれたよ。あと一ヶ月で退院できるみたい」

「そうなんだ。よかった!」

「ところでなんでここに来たんだ?」

「あのね、僕ダンジョンに潜るの当分やめる事にしたんだ」

「よかった。あなたは女の子なんだからもう危ない事はしたらダメよ」

「うん。赤ちゃんが産まれるまでもうダンジョンには潜らないよ」

「あ、あかちゃん?? もしかして?」

「僕、旦那さんの子供を身籠っていたんだ。ちゃんと元気な子を産むからね!」

「そっか」


 お母さんが少し悲しそうな顔をしたのを、リリナは見逃さなかった。

 やはり、リリナが人間と結婚する事は望まれてないようだ。

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