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おっさんに恋するリリナ1 オーガのおっちゃん

異世界に戻ったリリナの話です。

 リリナは、冒険者でごった返す冒険者ギルドに駆け込んだ。

 目的は精霊水晶を換金する為だ。


「よう、リリナ! 久しぶりだな! 今日もゴミの買取か? がははは!」


 迎えるはダミ声のオーガのおっちゃん。

 昔は冒険者をやってたらしいけど、今は冒険者ギルドのカウンターのおっちゃんだ。

 『昔は勇者だったんだが、膝に矢を受けてしまってな……』がおっちゃんの口癖だ。

 僕が冒険者を始めた頃から、親身になって面倒を見てくれてる。


「今日はゴミじゃないよ! 今回はお宝さ! これの鑑定を頼むよ」


 リリナはリュックから取り出した物を、そっとカウンターに置く。

 特大の精霊水晶だ。

 

「こ、これは精霊水晶じゃないか! しかもこんな大きな極上物、どうやって手に入れた?」

「もちろんダンジョンから掘り起こしたんだよ」

「そうか! それはおめでとう! これで、お前も大金持ちになれるな。母ちゃんや妹もやっとまともな生活を送れるようになるな」

「うん! みんなには苦労掛けたよ。おっちゃんも、今まで色々ありがとうな! 報酬の半分はギルド銀行に貯金で、半分は金貨でお願い」

「ほれ! 二億ゴルダ入りのギルド通帳と金貨二〇万枚」

「うお! こんなになるのか!」

「これだけのサイズの極上物だからな! 金貨五〇万枚で売れるから、お前の取り分は金貨四〇万枚だ。これじゃ不満か?」

「いやいや全然! これで十分じゅうぶん過ぎるよ。これだけあればお母さんの病気を治して、妹を学校に通わせられるよ」

「そうか、あとはリリナも結婚して幸せにならないとな。でも、そこまでおてんばだと貰ってくれる人が居るかどうかわからねーがな。がははは!」

「おあいにく様ですが、僕を貰ってくれる人のあては有るから!」

「おい、うそだろ! 冗談だろ?」

「ほんとだって! 宿屋の店主をしてるおっさんだよ」

「かたぎの商売人か。そうか、それなら安心だな。幸せになれよ」

「うん!」

「お金、落としたり盗賊に取られたりするなよ」

「これでも僕は盗賊だから、大丈夫だって」

「たしかに、ちげーねー。わははは!」

 

 金貨をリュックに詰めるリリナ。

 さすがに二〇万枚ともなるとかなりの量で、リュックの中身を全部出さないとすべて入りきらない。

 リリナはカウンターの上にリュックから中身を取り出し、置いた。

 

「おっちゃん、悪いんだけど携行袋一個売ってくれ」

「いいんだけど、何だこりゃ?」

「あー、それね、ダンジョンで待っている相棒がくれたんだ。これなんか、もの凄くて火も魔法も使わないのに、辺りを昼の様に照らしてくれるランタンなんだ。ちょっと見て!」

「うお! すげー! 昼間なのに目が眩むほどまぶしいじゃないか!」

「でしょ? 凄いでしょ」

「これ売れば大儲け出来るぞ! 今度手に入れたら高値で買い取るから、売ってくれないか?」

「うーん、いいけど。僕、ダンジョンの奥に住んでいる相棒と、一緒になろうと思ってるんだ。だから多分すぐには戻れないと思う」

「一緒になるって、さっき言ってた貰ってくれるとか言う男なのか?」

「うん!」

「どしぇー! 冗談かと思ってたら本当に結婚するのかよ! あの男の子みたいなおてんば娘が結婚かよ!」

「悪かったな、おてんばで!」

「で、相手はイケメンか?」

「うん!」

「で、歳は?」

「三〇過ぎかな」

「あー、そういう事か」

「なんだよ? なんか文句有るのかよ?」

「いや無いけど。男みたいなおめーを嫁に貰うぐらいだから、何かあると思ったら、おっさんか」

「何言うんだよ! あのおっさんはね、こんな僕の事を本気で美人と言ってくれるし、僕の事をすごく大事にしてくれるんだぞ。それに初めて会った時、運命感じたね! そばにいるだけで物凄いい匂いがして、このおっさんと一緒になりたいと本気で思ったもん!」

「そうか。まあ若い男だって、すぐに歳を取ってこのワシみたいなおっさんになるんだし、最初からおっさんの方がいいかもな。がははは!」

「うん。でね。僕はおっさんのとこに嫁ぐから、もうこっちには戻ってこれないと思うんだ」

「そうか。幸せになるんだぞ! 今まで不幸だった分を取り戻すぐらいのつもりでな! あと、もうこっちに戻ってこれないなら、母ちゃんと妹と親戚、爺ちゃん婆ちゃんにもちゃんと挨拶してから行くんだぞ」

「そうするよ。そんじゃおっちゃんありがとーな!」

 

 リリナがギルドを出ると、目の鋭い男たちが彼女を追ってそっとギルドを出る。

 四人の手練れの野盗といった感じの男達だ。

 

「奴はどこ行った?」

「西の方だ」

「久々の大金もってるカモだ。逃すなよ」

「おう!」

 

 するとその男達の行く手に大男が立ちはだかった。

 ギルドカウンターのおっちゃんだ。

 

「誰を逃がすなだと?」

「あのエルフの小娘さ。お前もこの儲け話に乗りたいのか?」

「ふざけるな! 俺の娘に手を出すんじゃねーよ!」

「てめー、俺らに逆らう気か! 俺たちが誰だか知らねーのか?」

「俺の娘に手を出す奴は、どんな奴でも叩き潰してやる!」

「はぁ? てめー! 馬鹿力のオーガか何か知らねーが、四対一で無事でいられると思ってるのか?」


 野盗達の短剣がギラリと光る。

 だが動じた様子はないおっちゃん。

 相当の実力者の様である。

 しかも加勢が!


「四対一じゃねーよ。四対五〇さ!」

「なっ!」

 

 見ると冒険者ギルドの中にいた冒険者達が、野盗たちを取り囲んでた。

 その中のリーダーっぽい青年が野盗の喉元に剣を突き付ける。

 顔を引きつらせる野盗。


「俺たちの妹に手を出す奴は生かしておけねー! おめーら! やっちまえ!」

「俺たちのアイドル、リリナちゃんに手を出すとは、ふてー野郎だ!」

 

 野盗達はかなりの手練れだったが、これだけの数の相手がいると勝負になる訳もない。

 負けを察し、一目散に逃げようとした野盗達。

 だが、これだけの人数相手に逃げられるわけも無い。

 袋叩きにあった後、身ぐるみはがされ、裸で衛兵に突き出された。

 

「リリナちゃん行っちゃいましたね」

「そうだな。あの子の父親が死んでから、ずっと父親代わりに世話を見てたんだけど、もうあの子をカウンターで見れないと思うとワシも寂しいよ」

「俺、協定破ってでも、リリナちゃんにプロポーズしとけば良かったと後悔してるんです。まだ間に合うかな?」

「やめとけ。それはもうみんなで話し合って決めた事じゃねーか。あの子には幸せになってもらいたいから、冒険者みたいなヤクザな商売してる野郎からはプロポーズさせないって協定を作ったのはワシらだろ?」

「そうでしたね。リリナちゃん幸せになれるといいですね」

「あの子の選んだ男さ。きっと幸せになれるさ」


 冒険者ギルドのみんなに愛されているリリナだった。

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