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殺人鬼転生 鏖の令嬢  作者: 猫又


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国家魔術師軍団

「フェルナンデス叔父様、私が使えるのは治癒に特化した聖魔法、解呪も聖魔法の一種だから使えるだけですから」

 ソフィアがそう言うと、フェルナンデスは目を三角にして怒鳴った。

「お前は五種の属性持ちだろうが! 王族の前で嘘を吐けるか!」

「その条件が飲めないなら、解呪は失敗するでしょうね。私は王族なんかに目をつけられたくないんですのよ。魔法塔に閉じ込められて実験材料にされるなんてご免ですし」

「し、しかし、せっかくの五属性、世に知らしめぬのは」

「叔父様、これは私と叔父様との秘密。もしそれを他者に漏らした時には、私の眷属が叔父様を喰ってしまいますわよ。この間は無害な食いしん坊さんだけ紹介しましたけど、人間なんぞ即死の毒を持つ子達もいますのよ」

 カサカサと足下で気配がし、さわさわと何かが足に触れた。

 薄暗い馬車の中で目をこらすと、足下には小動物ほどの大きさを持つ毒蜘蛛が数匹いた。

「ひ!」

 フェルナンデスは慌てて両足を上げて渋々、

「わ、分かった」

 と言った。



 王家の呪いを解呪した手柄は自分の物、そしてソフィアが国家魔術師に召し抱えられれば自分の配下に置く。ソフィアがそれを否めば魔法を禁じて奴隷に格下げ、さらに義兄サマドの玩具用にソフィアを献上すれば今後公爵家でも国家魔術師軍団でもフェルナンデスの地位に損はなかった。

 ソフィアは大人しく、フェルナンデスの後に歩いた。

 王城はソフィアが見た事もないくらい大きく、豪華で煌びやかだった。

 上を見上げても天井は遙か彼方、豪華な絨毯は足首まで埋もれ、壁に飾られた絵画、長い回廊のあちこちに置かれた高価だろう壺や花瓶はソフィアには一生涯縁の無い場所だ。

 豪華で高価な物に興味はないが皆に良い土産話ができた、などとソフィアはのんきな事を考えていた。

 延々と歩かされ、王の前へ引き出された時にはソフィアはすでに疲れていたし、面倒くさくなっていた。


 玉座には王と王妃が鎮座し、その側に皇太子と弟が二人、控えていた。

 玉座は十段ほど上の台上にあり、国王一家は下々の者を見下ろす。

 階下には魔術師が十人と聖騎士達が二十人。

 その中をフェルナンデスが進んで行き王の前で跪いたので、ソフィアもそれに倣った。

「レインディング公爵、面を上げるがいいぞ」

 と頭上から声が響き下りてきた。

「国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます。貴方の忠実なる臣下が馳せ参じましてございます」

 フェルナンデスが仰々しく言い顔を上げたので、ソフィアも上目遣いで玉座を見上げた。

 国王、王妃、そして皇太子殿下とその弟が二人いた。

「今日は何やら面白い事をやってのけるそうだな」

 と国王が言い、王妃が扇で口元を隠したまま、

「それは楽しみですわ」

 と馬鹿にしたように言った。

 皇子達はニヤニヤしている。

 ソフィアは ん? と首を捻った。

「王家の呪いは文献にしたためられているだけの極秘情報じゃなかったのかしら。それを解呪するってイベントに見物人が多いですわね。全て公然の秘密って事? くだらないこと」

 と呟いた。

 その小声はフェルナンデスの耳に入ったが、他の見物人には聞こえなかった。

「余計な事は言うな」


「公爵、本日は王家の悲願を叶えると豪語したそうだが、本当ですか」

 皇太子のカルロスが言った。語尾に笑みが見えるので、心底馬鹿にしているのは分かる。

 周囲の魔術師軍団もやれやれとか、ニヤニヤとか、上から見下す態度が隠しきれていない。

 ただサマドだけは興味深そうにソフィアの方を見ている。

「まあ、叔父様、そんな大風呂敷広げて」

 とソフィアが笑った。

「国王陛下、ならびに王家の方々、そしてファギータ王国をお守りする国家魔術師の皆様、私は数百年に及ぶ王家の呪いを解呪出来ると豪語したわけではございません。しかし、ここにいる娘は稀にみる聖魔法を持つ魔術師、試してみる価値はあるかと!」

 ざわっとした。

 魔術師軍団の面々が「聖魔法!」と動揺し、騒ぎだした。

 聖魔法は滅多に現れない属性で、数百年前の魔王討伐の聖女が聖魔法使いだった為、討伐に成功し、それ以降、聖女の発現は公的には確認されていなかった。

「国王陛下、なにとぞ一度お試し下さいませ。少しでも希望があれば叶えたいと思う臣下のささやかな願いでございます」

 フェルナンデスが熱弁し、シーンとなった。

 聖魔法使いは国家魔術師軍団にとって欲しい人材だ。

 聖魔法は稀に現れる聖女、魔術師から修行の果てにたどりつく賢者、それらに発現する希有な魔法だからだ。

 治癒、解呪、は白魔道のスキルを持つ者が得られる魔法で、それらを駆使する白魔道士は割と存在する。教会の牧師達、ギルドに属する冒険者にも多数いる。

 しかし聖魔術師とおおっぴらに公言出来る者は国軍の魔術師にもいない。


「待たれよ」

 と声が入った。

 フェルナンデスは国家魔術師団の方を見て、ちっと舌打ちをした。

「何ですかな。副団長殿」

「その娘が聖魔術を使える事を証明せよ。そうでなければ王族へ魔法を使う事は許さぬ」

 ソフィアは副団長の方に視線を移した。

 かなり年配の男で背中が丸くなっている。

 深い皺にシミ、弛みカサカサの肌。白髪だらけの頭髪は薄くなっている。

 王家の魔術師団の立派な刺繍の制服にマントを着用しているが借りてきたようで不似合いだった。頭部に宝石のついた高価な魔術師仕様の杖も寄りかかり身体を預けるのに使っている。

「サイガー副団長殿、それはもちろん。この娘に聖なる魔法を使わせてご覧にいれましょう」

 とフェルナンデスが言った。 

 国家魔術師軍団は口々に思惑を述べた。

「レインディング公爵、とても信じられませんわ」

 一歩前に出てきつい口調でフェルナンデスを睨んだのは女魔術師だった。

 国家魔術師軍団に選別されるにはたいそうな魔力量と実力が必要で、長年の修練と研究に生活を費やせねばならない。よってこの集団は平均年齢が高めだが、この女魔術師は若くゴージャスなスタイルと美貌を持っていた。

 美しいが意地の悪そうな表情で、冷たい残虐な雰囲気が伝わる。

「レインディング公、適当な事を言い含めてそんな乞食を連れてきて、王族や我々の貴重な時間を無駄にして、どういうおつもり?」

「カトリーヌ様、嘘ではございませんよ」

「ふん! その汚らしい者が我々国家魔道士を凌駕するほどの魔力でも持っているとでもいうの? 先程から測っているが、少しの魔力も感じないのだけど? それで聖魔法を使えるとでも?」

 カトリーヌ女魔術師はふんと鼻で笑った。

「陛下の御前であるというのに汚らしいマントも取らない! まともに口もきけない! レインディング公、どこからこんな乞食を連れてきたの?」

 カトリーヌの顔は歪んでいる。そしてソフィアの側までつかつかと歩いてきて、自分の杖を突き出した。自らの手でマントに触れるのも忌々しいのか、杖の先から流れ出た魔力がソフィアのマントを吹き飛ばした。

「おや」

 マントは吹き飛ばされ地味な服装のソフィアが現れた。

 八才というあまりの幼子の出現に魔術師達はどよめき、カトリーヌははっと鼻で笑った。

「こんな子供が魔法を使うなんて信じられない。レインディング公、どこから拾ってきたの? 奴隷の子? 聖魔法が発現すれば、その魔力が教会に届くはず。でもそんな報告はなかったでしょ?」

 とカトリーヌは仲間を振り返った。

 魔術師達はそれぞれにうなずき、ソフィアとフェルナンデスを見比べたりした。

「その者……」

 と壇上の皇太子カルロスが言った。

「カルロス、知っておるのか?」

 カルロスは国王の問いに首を傾げながら、

「魔法学院の生徒では。先日、皇太子妃候補のレミリア・ハウエル公爵令嬢に暴言を吐いた娘かと」

 とカルロスが答えた。

「皇太子妃候補である公爵令嬢に暴言? レミリアは聖女候補でもあるはず。不敬罪で極刑に処してもいい罪であるぞ」

 と国王が渋い声で言い放った。

 ぎょっとしたのはフェルナンデスだった。

 聞いてないぞ! のような顔でソフィアを見た。

 ソフィアは目玉をぐるっと回してあさっての方向を見た。


「レインディング公爵、そなたとの関係は? その娘はそなたの係累なのか?」

「い、いいえ、関係はございません。この娘は拾ってきたただの乞食でございます。ただ、稀にみる聖魔法の遣い手、試してみるのも一興かと。もちろん、その後の結果にてこやつを処刑されても私には関係ございません」

 フェルナンデスの保身に言葉に、

「見事なまでのクズっぷり、逆に尊敬するっつうの」

 とソフィアが笑った。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます! 今話もムッカー(`_´)⚡︎⚡︎のリアクション絵文字が欲しいと思ってしまいました。 ホントにもー! フェルナンデスは相変わらず図々しことを考えてますし、王族含めて、出てくる…
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