8話
キリが悪い所で終わっていますが、気にしないで頂けると幸いです。
1月2日 修正しました。
うーん、敵が居ない。
このフィールドに入って結構経つけど、一匹も見つけられない。
やっぱり、あの火山の方に行かなきゃダメなのかな。
凄い強いモンスターが出てきそうなんだけど。
……いや、こんな始まりの街に近いとこに、そんな場所はないか。
うん、見かけ倒しだよ。きっとそうだ。
暑いのは気合いで耐えよう。気合いとか、私に最も似合わない言葉だけど。
少し歩いて火山の入り口近くに来ると、流石に人が多かった。
もしかしたら、モンスターが居なかったのもこれが原因かもしれない。
入り口に人は多いけど、入っていく人は居ないみたいだし失礼しよう。
「………」
「ん?」
何だろう。視線が集まってる気がする。
まぁ、この人混みの中を突っ切っているんだから当たり前か。
気にしないで、さっさと中に入ろう。
そう内心で結論付け、私は『火山内部下層』へ歩を進めた。
始まりの街、西門
多くの初心者が集まるこの場所に、一人の女性が立っていた。
鮮やかな青髪を揺らす整った顔立ちの彼女は遠くを見つめながら、時折キョロキョロと周りを見渡している。
「あ、ハルナさん。お待たせしました」
ハルナと呼ばれた彼女に話しかけるのは、平凡な、しかし無垢そうな顔の、いかにも優男といった風貌の男性だった。
「うん待ったよ」
「あはは……容赦無いですね」
彼女の発言に、苦笑を漏らすしかない、コテハン『初心者』。もといユーザー名ユウキ。
「ユウキ君、レベルは?」
「えーっと……15ですね」
「15かー。んー、ギリギリだね」
「そんなに難しいんですか? 『火山』って」
「まぁ、最下級とはいえダンジョンだからねぇ。アイナちゃん始めたばっかりらしいから、流石にきついと思う。種族も、見た目的に人間っぽいし」
まぁそれにしても。と続けるハルナの顔に、なんとなく嫌な予感がするユウキ。
「アイナちゃんが心配でついてくるなんて。もしかして惚れちゃった?」
「まさか。ちょっと知り合いに似ていたから、気になっただけですよ」
予想外な彼の淡白な反応に、つまらなそうに唇を尖らせるハルナ。
「なーんだ、つまんないなぁ」
「ネットゲームで恋なんて、あるわけないじゃないですか。ラノベじゃあるまいし」
「ちっ」
「今舌打ちしましたよね!? しましたよね!?」
「やかまし」
「酷っ!?」
一通りやりたかったことを終え、何事もなかったように真顔に戻るハルナ。
「まぁいいわ。さ、行こ行こ。ね、ユウキ君逝こ」
「なんかニュアンスが違う!?」
そんなやり取りをしながら、二人はアイナの救助に向かっていった。
「ふっ!」
目の前にいる、赤いゴブリン。『レッドゴブリン』に向け、袈裟に斬りつける。
血の代わりである、赤いポリゴンが散った。
頭上のHPバーがグッと減るが、倒すにはまだ程遠い。
「グギャァァァァァア!」
仕留めきれなかったレッドゴブリンの棍棒が迫ってくる。顔には怒りの表情が浮かんでいる。
剣を振り切ったせいで体勢を崩してしまった。
ガードが間に合わず、左肩にまともに食らってしまう。
肩に激痛が走り、視界の端のHPが二割ほど減少する。
「うっ!」
痛っ。結構痛いよこれ。これで苦しまない程度?
いや、これは魔法を試すいい機会だ。使えるものは全て頭に入ってる。
まず発動すべきは、
「ダークヒール」
闇属性の回復魔法『ダークヒール』を唱えると、生暖かな黒い光が体を包み込み、左肩の痛みが和らいでいく。
因みに、闇属性とはいっても、特に色以外変わりはない。
「ダークアロー」
今度は攻撃魔法『ダークアロー』を発動する。
闇魔法が造り出す闇は、物理的な質量を持つ。
超質量の闇が矢の形を作り、レッドゴブリンへと真っ直ぐに向かっていく。
その速度は決して速くはないが、迫る闇に怯えたレッドゴブリンは動けず、その胸に闇を迎えた。
同時に、全身をポリゴンに変えていく。どうやら闇魔法に耐性が無かったらしい。予想以上の威力だった。
経験値を150獲得しました。称号 初心者により、更に経験値を150獲得しました。
レベルがMaxになりました。進化先を選んで下さい。
現在怪竜人
聖竜人…光の道を歩む竜人。回復に長けており、パーティーの戦力になりうるだろう。
火竜人…火竜の子孫。火魔法に長け、弱いが火を吐くこともできる。
水竜人…水竜の子孫。水魔法に長け、弱いが水を吐くこともできる。
黒竜人…黒龍の子孫。闇魔法に長け、質量を持つ闇を吐くこともできる。闇に完全に染まった竜人でもある。
決して軽い気持ちで選んではいけない。
一気にレベルMaxになってしまった。
ここ、結構難しい所だったのかな。そう言えば、相性の悪い荒地地帯の岩モンスターでも半分は喰らっていた攻撃を、二発も耐えていた。
おそらくだけど、これでも一番弱い敵だと思う。
それをレベル1で圧倒できる竜人のステータスは、かなり異常なんだ。思い知った。開発者はバランスを考えなかったのか。
あっ……ステータスで思い出したけど、またステータス見損じたな。
それにしても、どれにしようかなぁ。